商品紹介に必要な「三本柱」
お客様から高い評価を受ける「引き出しが多い営業」は、商品知識をただ漫然と披露するのではなく、商品紹介に必要な「三本柱」をしっかり押さえています。その三本柱は以下の通りです。
1
課題解決のステップ
具体的な課題解決のステップを伝えることで、お客様の理解が深まります。
2
他社での導入事例
これにより、実際にサービスを導入した際のイメージがしやすくなるでしょう。
3
類似商品との違い
お客様は社内で説明する際、他の商品やサービスとの違いを把握しておきたいと考えています。
これらについてわかりやすい説明をして、お客様からの質問に的確に答えられることが重要です。

弊社の「お客様1万人調査」では、「引き出しが多い営業」に対してポジティブな印象を抱く要素として以下の項目が上位に挙がっています。
- 質問に対する的確な回答
- 課題解決についてのわかりやすい説明
- 他社導入事例の「自社向けに翻訳された説明」
- 類似商品との違いに関する明確な説明
このような要素を外して「専門的な知識ばかり披露する」ような営業では、お客様の信頼を得ることは難しいです。

営業に対する社内でのレクチャーにも注意を払う必要があります。自社商品の特徴や機能をそのまま伝えるだけではお客様の心には響きません。どのようなステップで課題を解決するのか、実際に導入したケースではどのような効果があったのか、類似商品と比べて何が異なるのか、といった角度からプレゼンテーションとQ&Aの練習をすることが不可欠です。
また、お客様から「御社の特徴(強み)は何ですか?」と聞かれた際、単に「弊社の特徴は…」というテンプレート的な説明にとどまらないように注意が必要です。商品知識を詰め込んだだけの営業は、意外とこうした説明をしがちです。お客様とともに「文脈を共有する」ような説明や、対話をしながらの質問対応を目指していくことが理想です。
お客様の「課題」に焦点をあてよう
さらにワンランク上の対応を目指す場合、「課題に焦点をあてる」ことが重要です。
「解決策に焦点をあてる」のと「課題に焦点をあてる」のとでは視点が異なります。解決策の提案をするだけでは、お客様は結局のところ他社と費用対効果を比較し、「同じクオリティなら価格が安い方が良い」と判断しがちです。そのため、解決策の提案はどれだけ質の高い提案であっても「割高」と感じられてしまったら受注するのは難しくなります。
そこで、他社との価格競争や比較に巻き込まれないアプローチとして「課題に焦点をあてる」という方法があります。課題に対する深い考察を提示するのです。これができる営業は非常に少ないため、「課題に焦点をあてる」アプローチをすることで他社と同じ土俵に立たずに営業をすることができます。
課題の考察では、まず「なぜ課題が生じているのか」を理解することが求められます。課題が発生している構造や悪循環を因果関係や物事の順序を含めて全体的に説明する必要があります。
例えば、お客様が売上アップに悩んでいる場合、売上が伸び悩む原因や背景にどのような構造的な問題があるのか、これまで試みた施策がなぜ効果を発揮しなかったのかを分析するのです。こうした考察ができる営業は非常に少ないため、このスキルがあることで圧倒的な差別化が可能となります。
次に、「なぜ従来の解決策ではうまくいかなかったのか」について考察します。これら2つの視点から語ることで、お客様自身も気づいていない課題の本質が浮き彫りになります。
そして、ここで商品紹介を組み合わせます。「従来の方法では解決ができなかった部分を、当社ではこのように解決できます」と伝えるのです。
営業パーソン
課題はこういう構造です。従来の方法ではこのような理由で解決ができませんでした。そこで、当社のサービスはこれらの課題をこのように解決することができます。具体的には、このようなステップで解決していきます。実際に他社でもこのような成功事例があります。また、類似商品との差別化ポイントは次の通りです。
準備してきたことは状況に応じて話そう
課題を深く理解し把握することで、単に解決策を提示するよりも有利になりますが、その分難易度は高くなります。その力を磨くには、まずは自分の言葉で説明してみる練習をするのが良いでしょう。お客様の課題がどのような構造・悪循環になっているのか、なぜ従来の解決策ではうまくいかなかったのかを自分の言葉で整理するのです。
ただし、お客様にそれをいきなり「こうですよね」とぶつけても間違っている可能性があります。そのため、いきなり準備してきた考察をお客様にぶつけるのではなく、まずはお客様と対話をすることが重要です。
特に真面目な営業は事前に準備した内容は必ずお客様に伝えなければならないと思ってしまいがちです。「用意した資料は全て話さなければならない」「準備した質問は必ず聞かなければならない」と考えてしまいがちなのです。
しかし、準備してきたことを全て話す必要はありません。準備してきたものの中で使わなかった部分があるというのは、むしろ「充実した準備をしていた証拠」と言えます。10の準備をして2しか使わなかったとすれば、8は余らせたことになりますが、それは「5倍もの余裕を持って準備していた」ということです。
弊社代表の高橋も、事前に準備したものを全て話すわけではありません。お客様に伝える内容はその場の文脈や状況に合わせて変わるため、場の流れに応じた対応が重要です。