スピーディーな対応がお客様の判断を分ける
今回は「商談のレスポンスを上げる事前準備のポイント」についてお伝えします。
この点について、弊社の「お客様1万人調査」を基に考察したいと思います。この調査のなかに「あなたが『この営業は、事前準備をしてきている』と感じるのはどんなときですか。よく当てはまるものをお選びください」という設問があります。
その調査の結果、第1位となったのは「こちらの質問や要望に対してその場でスピーディーな対応がされたとき」でした。お客様の半分以上が選んだ答えです。この結果から、事前準備の有無はその場での迅速な対応が判断基準となることがわかります。この点は商談の成功において非常に注目すべき事実です。
第2位が「前回の商談で伝えたことを漏らさず盛り込んだ資料が作り込まれていたとき」、第3位が「商談の進行および時間配分でなんのストレスも感じなかったとき」でした。これらの結果から、事前準備の重要性がますます明確になります。
多くの人は、事前準備といえばお客様の事前情報を調べたり、段取りを整えたりすることだと思うかもしれません。しかし、今回の調査結果から注目すべきは、レスポンスの重要性です。この点は、我々がお客様に対して提供するサービスにおいて鍵となる要素であると言えるでしょう。
では、事前準備として何をして、お客様から何か聞かれたときにすぐ答えられるためにどんな準備をしたらよいのでしょうか。社内のOJTで営業マネジャーがメンバーに対してこの点をチェックする際に使える5つの質問をご紹介したいと思います。
OJTで営業マネジャーがチェックすべき5つの質問
1つ目の質問は「お客様の表面的な要望と心の課題はどうなっていますか?」です。
この質問の意図は、お客様の表面的な要望と心の課題を分けて考えることです。多くの営業がお客様からの質問に答えられないのは、お客様が本当は何を望んでいるのかを掴めていないためです。お客様の真の願いがわかっていないと、表面的な要望に応えるだけで、根本的な問題が解決されず、細かい質問や要望が多く来ることになります。
このような現象はよくありますよね。営業マネジャーとして、このお客様に関する表面的な要望と心の課題、それぞれどうなっているのかを聞くことで、事前の準備が進みます。
2つ目の質問は「その心の課題を解決するために、お客様が過去にやっていそうなことはなんですか?」です。真の課題は、昨日今日発生したものよりも、ずっと前から根強くお客様の中に存在するケースが多いです。お客様が過去に何をやっていたのかを予想し、それを踏まえた商談をすると、商談の質が大きく変わります。過去に様々な取り組みをして、それがうまくいかなかったから今回の商談があるわけです。過去にやったことがうまくいっていれば、もう課題は解決しているはずですから。
「お客様の幸福を最大化する」のが最大の優先順位
3つ目の質問は「お客様が成功するために必要なアクションをステップで表すとどうなりますか?」です。
まずは自社の商品を抜きにして、お客様が成功するためにこれから取り組んでいく必要のあるアクションを考えてみましょう。
多くの営業が商品を買ってもらうためのステップは考えます。しかし、ここで重要なのは、自社の商品を抜きにしたお客様の成功への道筋を明確にすることです。
商品をお客様に買っていただくためのステップというと、まず目の前の担当の方に合意していただくことから始まり、その後に決裁者の方に説明をし、最終的には役員会に提案する、といったプロセスが存在します。しかし、この流れは「お客様が成功するためのステップ」とは言えません。
お客様が成功するためのステップは自社の商品とどう関連するのか。例えば、業務効率化を目指すITツールを提供するとした場合、お客様が成功するためには、まず業務の実態を正確に把握することが求められます。
業務の実態を理解し、それに基づいて改善・改革すべき範囲を明確に定めるところから始まります。その範囲を定め、改善・改革の実行担当者を選定し、具体的なプランを立てる。そして、そのプランの進捗を監視するというプロセスも必要になります。
これがお客様が成功するためのステップで、残念ながら多くの営業はこのプロセスと、商品を買ってもらうプロセスを混同してしまっています。こうなると、買ってもらうことがゴールとなり、お客様の理解が希薄になることがあります。
営業の視点だけでは、お客様からの突然の質問に対応できないこともあります。しかし、お客様が成功するためのステップを考え抜いていれば、お客様から来る質問に対してもかなり対応できるようになります。
お客様の気持ちを先読みし、対策を立てる
4つ目の質問は「そのお客様が成功するためのステップに対して、なぜ他のサービスや商品ではなく、当社の商品がいいのですか?」です。
お客様にとって、他社と比較して当社の製品が最良である理由を明確に説明できるか、これが決定的なポイントになります。
5つ目の質問は「当社の商品がなぜ良いのかということを説明したときに、起こったら困る反応はなんですか?」です。
例えばお客様から「イメージが湧かない」「金額的に手が出ない」「私だけでは判断できない」などと言われてしまうことがあります。それに対して事前に対策を立てましょう、ということです。
今回挙げた5つの質問は、いきなりマネジャーがメンバーに問いかけるだけでは答えが見つからないこともあるでしょう。そのため、この5つの問いをマネジャーとメンバーが一緒に考える必要があります。
ただし、全ての案件に対してこの作業を行うと時間が足りなくなってしまうかもしれません。そこで、特に力を入れるべき案件をマネジャーとメンバーとの間で定め、その案件について一緒に考えるのが良いでしょう。
さらに、これらの情報はデジタル情報として残しておくことをおすすめします。他のメンバーが容易に閲覧できるため、全体の効率が上がります。
実際には、すべての商談でこれら5つの質問を考え抜かなくても受注できる場合もあるでしょう。そのため、最初に1つの案件に対してしっかりとマネジャーとメンバーで一緒に考えて、次にマネジャーがメンバーに対して質問をして考えてもらう、という順序を踏むことをおすすめします。