私の人生における大きな分岐点(後編)

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選択肢が人生の価値を広げる

私が「人生の選択肢を増やす」事業をやりたいと思ったそもそもの原点。それは、今から20年以上前にさかのぼります。今回は後編をお送りします。

前編はコチラ!→私の、人生の大きな分岐点(前編)

よみがえってきた先生の言葉

1月も終わりに差し掛かったある日、先生に教わっていた2年間のまとめノートを作ろうとしているところを先生に見つかってしまいました。

「イマイチ、それは何じゃ?」

「先生、私は数学がどうしても苦手なので、これまでのまとめノートを作ろうと思ってます」

「お前はそんなことせんでいい!わしの指定した問題集を解けばそれで十分だ!」

「先生、でも、大事なことを覚えていられるかどうか不安で・・・」

「・・・わしが書く。ノートはわしが作ってやる。だから、お前は問題を解くことに集中せえ」

先生はその日からノートを作り始めました。パソコンを使いこなせる先生もそんなにいない時代です。先生は手書きでまとめノートを作ってくれていました。受験直前、おそらく学習塾の業界でいちばん忙しくプレッシャーが高まっている時期、たった一人の生徒のために。

先生は、同じYシャツで授業に現れるようになりました。家にも帰っていないのでしょう。私は、とんでもないことをお願いしてしまったのではないかとだんだん不安になってきました。 一方で、ノートはまだ手元に届きません。受験の日が迫ってきました。

「できたぞ!!持ってけ!!」

「先生、ありがとうございます!!!・・・・・・でも、先生、試験は今から3時間後です!」

私がノートを受け取ったのは、受験当日の朝でした。

当時、私が受験した高校は家から2時間。電車に乗る時間は1時間半ありました。 私は、必死で電車の中で先生から教わった2年間を振り返りました。

ノートはすべて手書きで、きれいな字で書いてありました。 全部で30ページぐらい、ギッシリと、これまでの授業がまとめられていました。 30ページのノートは、とにかく重かった。 正直なところ、行きの電車の中ではノートを全て読みきることができませんでした。 でも、このノートを受け取ってしまったら、もう、不合格になるなんて展開は許されない。

かくして、私は、第一志望の高校に受かりました。

「お前がここで踏ん張って一発逆転、合格したらどうなるか。 お前は、”人生、がんばったらなんとかなるんだ”ということを覚えるだろう。」

先生の言葉がよみがえってきました。

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人生の選択肢を広げる体験

それまでの私は、何かあるとすぐに逃げるタイプでした。

小学生の頃は野球をやっていましたが、身長が小さくて打っても飛ばないし、足も遅くて、守備もエラーばかり。同じ学年に9人のメンバーがいて、私だけ外されて下の学年の子がレギュラーになり、いたたまれなくなって仮病で休んでやりすごしたりしていました。

また、小学校では音楽の歌のテストというのがあり、3ヶ月に1度、クラスの皆の前で歌わなくてはいけない形式になっていました。でもテスト当日に休むと、その翌週に音楽室に行って先生と1対1でやるということになっていたので、皆の前で歌うのが嫌だった私はテストの日には必ず休んでいました。

”人生、がんばらなくてもなんとかなるんだ”ということを、小学校のときにうっすらと感じていた私は、この高校受験を境に、踏みとどまってがんばることの大切さが少しわかった気がします。

これが、人生の大きな分岐点でした。

”人生、がんばったらなんとかなるんだ”ということを気づかせてくれた先生のおかげで、私は人生の選択肢を広げる体験に出会えました。

一方で今になって思うのは、その先生に出会えて、本当に私はラッキーだったということです。何しろ私がその塾に行くきっかけになったのは、ドラクエでクリアできないダンジョンがあって、友達に教えてもらうために遊びに行ったところで友達のお母さんが偶然声をかけてくれたことなのです。もし、稲妻の剣がなかなか見つからずに困ったロンダルキアへの洞窟に、落とし穴がもう1つ少なかったら・・・。そのままあっさりとクリアできていたら、違った未来があったかもしれないですね(笑)

そんな風に、人生をガラッと変えてしまうようなできごとというのは、偶然の出会いだったり、自分が意図しないきっかけだったりすることが多々あると思います。

社会に出るまでは、周りの大人が色々なきっかけを与えてくれます。その中で、いわゆるすごい先生に出会う確率は一定あるでしょう。しかし、一度社会に出ると、「先生」に出会う数は減っていきます。もちろん、先生に出会わずとも、上司や仕事仲間、お客さまという存在がいるので、そこで「人生を変えるような、人との出会い」が生まれることは多々ありますが。

しかし、人生の展開次第によっては、そういった出会いが生まれるのは、偶然に支えられたほんのわずかな可能性ということもあるかもしれません。

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私が事業をやる理由は、「ここにいけば、人生の選択肢が広がるようなきっかけがありますよ」と言えるような、そんな場を創りたいという想いがあるからです。

社会に出たばかりの頃は夢と希望にあふれていても、歳を重ねていくと、だんだんと「私の人生、こんなものかもしれない」と、落とし所や限界を感じるようになっていく人が増えていきます。 そんな中、現実がある程度見えつつも、高すぎる理想とのギャップに悩むというのは、わりとよくあることなのではないでしょうか

独立・起業や転職だけがそのときの選択肢ではないと思います。ほんのささいなきっかけで、 「私の人生、捨てたもんじゃないかも」 「私の人生、もっと大きな可能性があるかも」 と思ってもらえるような、そんな場をサービスとして提供できたら・・・

そんなことを考えつつ、日々、のたうち回っております。