お客様とディスカッションしていく1枚コンテンツをどう作るか

 新型コロナウイルスの影響で、お客様とのアポが取りづらいと言われるようになってからしばらく経ちました。
「インサイドセールス」や「マーケティングオートメーション」といった言葉も珍しくなくなり、実際に取り組まれている方も多いと思います。

 マーケティングや営業のデジタル化が急速に進むと、足繁く通って顔を覚えてもらうスタイルでは難しく、お客様が必要とする理由を作っていかねばなりません。
この文脈において「コンテンツ力」が大きく求められてきているのではないかと思います。

 スタートアップなどで急成長している会社であれば、営業が手を動かさずとも、見栄えもよくまとまった資料を作れる方が社内にいて解決することもあります。
それでも各プレイヤーや経営者にとって、お客様とディスカッションをするための1枚資料を作る力はあるに越したことはないのです。
というわけで、今回は1枚コンテンツをどのように作るかについてお話します。

資料作りに必要なのは「ロジカルシンキング力」

 まず2枚の資料をご覧ください。
これらは、新型コロナウイルスが世界を激変させていった最中、お客様のキーパーソンの方とディスカッションするための1枚資料を作って、ディスカッションして、ブラッシュアップして……とくり返していたときに作成したものです。

 
 

 こういう資料を作るときに必要なスキルは、ベタですが「ロジカルシンキング力」です。
ロジカルシンキングに関する本を読むと、だいたいピラミッド構造をつくる4つの原則とかルール、ポイントというのが出てきます。

①情報をグルーピングする
②何が言えるかというメッセージを抽出する(So what)
③なぜそう言えるかということを理由づけする(Why so)
④抜け、漏れ、被りをなくす(MECE)

 どこかでロジカルシンキング研修を受けたとか、本を読んだことがある方はかなり多いと思いますが、それを今回の1枚ディスカッションにおいて有効に使うとなるとやや飛躍を感じるのではないでしょうか。
私は資料を作るときに、とにかくこの4ポイントをフル活用しています。

資料作りのプロセス

 次にプロセスについて説明します。
下に先ほども挙げた「メンバーと対面できない状況で、営業マネジメントを行うために必要なこと」という資料をもう一度展開しますが、右上に「当初バージョン」とあります。

 
 

まずはとにかくグルーピングする

 これを作った当時、当社のお客様が一斉に「メンバーと非対面でどのように業務を行うか」という課題に悩まされていました。
そこで当社がお客様に必要としていただくために、そういうお客様のお悩み・課題をしっかり掴んでいるということを、まずお客様にご理解いただきたいと思いました。
まだまとまった資料はなかったので、日々お客様とディスカッションするなかで出てくる要素のグルーピングをくり返しながらまとめていきました。

 2020年4月あたりは「DX」という言葉が使われはじめたタイミングでしょうか。
デジタルツールとしてのSFA、テレビ会議システムは「zoom」「Google Meet」「Teams」どれがいいのか……といった企画書なんかがバンバン出回っていた時期です。
いろんな企業がそれを知りたいと思っていたのです。
だから「当初バージョン」では、非常に表面的なツールの話がいきなり左にあります。

 よく見るとこの資料はあまり整っていない部分があります。
例えば「デジタルツール」内の「テレビ会議システム」にある「運営スキル」がなぜこの4つなのか?とかですね。
細かく言うときりがないのですが、このときはとりあえず強引にグルーピングしてみたのです。

 右上の「コミュニケーション」のところも、「会議」「1on1」「日常」と強引にグルーピングしています。
この箇条書きは本当にMECEなのかと言われるとわからない、それでも一旦グルーピングしてみたのです。
その下の「考え方」にある4つは、お客様から多く出てきたキーワードでした。
これもまた、資料を持ってまずお客様と議論しに行こうと、とりあえず書いてみたのです。

ディスカッションの中で資料を書き換えていく

 ディスカッションしていくといろんな話が出てきます。
そこでこの資料を書き換えたものを基にして次のお客様とディスカッションする。
また少し書き換えて、それを使って別のお客様とディスカッションする……と30回ほどくり返しました。

 それを経てできたものが「『再現性高く成果をあげる営業マネジメント』に必要なもの」という資料です。
この段階まで来ると、ツールよりもコミュニケーションが重要ではないかと位置が変わっていたり、グループが4つに増えていたり、考え方の部分が整理されていたりします。

 
 

 ロジカルシンキングの4ポイントをフル活用しながら「とにかく1枚にまとめる」ということだけ決めておきましょう。
中途半端でもいいからまずお客様のとこに持っていって議論し、新たに出てきたポイントをこの資料に加筆するのをくり返していくのです。

最終的に「論点集」ができあがる

 これを続けるとコンテンツやナレッジが貯まって整理された「論点集」になっていきます。
お客様からすると自身の悩みや課題に対して、何について考えたらいいんだろう?何について知ったらいいだろう?という全体像が欲しいですよね。
したがって、ある程度のクオリティの論点集を作っていくためには、ディスカッションをくり返しながら1枚に収めていくというプロセスが非常に有効ではないかと思います。

もうひとつの1枚コンテンツ「ステップ図」

 お客様のお悩み・課題を解決に導くための「ステップ図」という1枚コンテンツを作る方法もあります。
当社は、営業のマネジメント強化の文脈でSFA(Sales Force Automation)の導入や活用に関するご相談をよくいただくので、それについて作成した資料をご紹介します。

 
 

 当社はシステムの専門家ではないですが、お客様がどこでつまづくとか、うまくいっている会社がどう使っているかというポイントをコツコツ集めています。
これもアウトプットは「必ずステップに収める」ということだけ決めて、資料をいじりながらディスカッションしていきます。

 そうすると、ある程度の完成度になったところでものすごく引きのあるコンテンツになるタイミングが訪れます。
例えばこの階段のステップ図は、今ではSFAを活用している会社には必ず提示している1枚です。

 
 

 これを使ってやっていくと、6~7年使えていなかったシステムがだいたい1年間ほどで業績に寄与するところまで駆け上がっていきます。
そうすると、当然その方法論を知りたいというお客様が現れます。

 これについても「1枚にまとめる」そして「ステップにする」ということを初めから決めておきます。
あとはとにかくディスカッションをくり返してバージョンアップしていくのです。
つまり、この資料ができあがるまでには、中途半端な資料が山ほどあるというわけですね。

 今回は、お客様とディスカッションするための1枚コンテンツである「論点集」と「ステップ図」を作る方法について、ロジカルシンキングを使うこととプロセスの進め方を解説しました。

 

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高橋浩一