お客様に質問する時には「4つの象限」で考える
今回は「お客様に踏み込んで質問するときの注意点」についてお伝えします。
「お客様には深くヒアリングした方がよい」とよく言われます。しかし、実際には質問を躊躇してしまう営業も多いです。そこで、質問の対象を4つの象限に分けて、「どんな領域は踏み込んで聞いてもOKか」「どんな領域は気をつけたほうがよいのか」を整理してみましょう。
まずは質問の対象領域を2つの軸で分けます。
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誰のためか
・お客様のため→お客様のゴールや目的達成のために知りたい
・営業のため→営業が受注確度を上げるために知りたい
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お客様が情報を持っているか
・情報を持っている→お客様が既にご存知のこと
・情報を持っていない→お客様自身もご存知でないこと
そして、以下の4つの領域について考えます。
- ①お客様のため×お客様が情報を持っている
- ②お客様のため×お客様が情報を持っていない
- ③営業のため×お客様が情報を持っている
- ④営業のため×お客様が情報を持っていない
※もちろん、一時的には「営業のため」であっても、最終的にお客様の利益に結びつけるのは大前提です。
「どの象限に関する質問か」で質問の仕方を変える
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お客様のため×お客様が情報を持っている
こちらは、例えばお客様がやりたいことや実現したいこと、お客様のお悩み・課題といったことに関する領域です。この領域は、「言葉だけ聞いてわかったつもりにならず、とことんまで深く理解する」ことが重要です。
まずは、躊躇せずに深掘りしましょう。ただし、お客様のやりたいことやお悩み・課題を聞く際に、漠然としたオープンクエスチョンを投げかけないことが重要です。
営業を受ける側に立つと、課題やニーズのヒアリングは沢山受けています。そのため、聞き方は「特にここ1ヶ月ぐらい議論にのぼっているのはどういう課題ですか?」というように、観点を絞るようにしましょう。
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お客様のため×お客様が情報を持っていない
例えば、担当者に「社長は何を考えていると思いますか?」と聞いても、「えっ、社長の考えていること?むしろ自分が知りたいよ…」となることがあります。そのため、「ご存知の範囲で構いませんので」といった枕詞を添えて、お客様を不快にさせないよう注意しましょう。
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営業のため×お客様が情報を持っている
例えば「競合の社名」や「予算額」などは営業としては知りたい情報ですが、聞いてもはぐらかされてしまうことが多いです。そこで「例えばA社さんとかですか?」「500万円と1000万円とではどちらに近いですか?」のように、具体的な選択肢を出して聞くと、答えが返ってきやすいです。
4
営業のため×お客様が情報を持っていない
例えば「この案件はいつ決まるのですか?」と聞いても、お客様の中ではまだ定まっていないことがあります。お客様がご存知でなさそうなら「この案件がいつ決まるかをご存知の方はどなたですか?」のように聞くのも1つの手ですが、目の前の相手に深追いはしないようにしましょう。
深く質問しても問題ないのは(A)のカテゴリです。それ以外のカテゴリでは、質問の仕方を工夫して聞くようにしましょう。
以上を整理すると、以下の通りです。
- ①お客様のため×お客様が情報を持っている→深掘りして聞く
- ②お客様のため×お客様が情報を持っていない→枕詞で探る
- ③営業のため×お客様が情報を持っている→選択肢で聞く
- ④営業のため×お客様が情報を持っていない→聞くが深追いしない
お客様は「質問をされること」を望んでいる
若手の営業からよく聞くのが「質問をすることに躊躇してしまう」という悩みです。この悩みの背景には、質問することに対する独特の罪悪感が存在する場合が多いです。例えば、「質問をして迷惑をかけるのではないか」といった思いが頭をよぎることがあるのです。
しかし、それは営業から見た話であり、お客様側からすると全く違う感覚を持つ場合が多いのです。
これは実際に買う側(お客様側)になると体感することですが、「自社のことをあまり理解せずに提案をされるよりも、むしろちゃんと聞いてくれた方がいい」と思うのです。
実際にお金を払って商品やサービスを購入した経験が少ない若手の営業にとっては、この感覚を持つことはなかなか難しいものです。
質問することへの躊躇を克服する
弊社代表の高橋も20代の頃、このような躊躇がありました。それを克服できたのは、新卒で入社したコンサルティング会社で多くの企業にヒアリングをした経験だと言います。
当時はインターネットがまだ普及していない時代で、簡単に情報を集める手段がありませんでした。そのため企業に自ら電話をかけて、情報を得るしかありませんでした。最初は「いきなり電話で質問するなんて図々しいのでは」と感じていたようですが、マネジャーからは「普通に電話をかければいい」と指導されたのです。
最初は驚いたようです。「いきなり相手の会社に電話をかけて『話を聞かせてください』なんて言うのは、さすがにちょっと図々しすぎないか……」と思ったのです。
ただ、実際に試してみると、快く対応してくれる会社が多かったと言います。多くの場合、それなりの規模の企業であればそのような対外的な問い合わせや質問を受けているのは広報部門です。広報部門は外から来た問い合わせや質問に対して答えるのが仕事です。広報部門の方が全然嫌そうな感じもなく、普通に答えてくれたのは当時の高橋にとってとても印象的だったようです。
その時高橋は、「人は何かを人から聞かれて話をするということは不愉快なものではないのだ」「聞き方を工夫すれば、意外と多くのことを聞けるものなのだ」と思ったと言います。
質問の仕方によって「情報量」と「情報の質」を上げる
それが、高橋が相手に質問することへの躊躇を克服した原体験です。
高橋は「質問しても大丈夫だ」ということがわかってからは、「どんなふうに聞いたらうまく聞き出せるか」ということをあれこれ工夫してるうちに多様な質問の言い回しを身につけるようになったと言います。
一度そのようなサイクルができあがり、「お客様から聞く」という体験が積み重なっていくと、質問の仕方に関する知識は雪だるま式に増えていきます。
例えば「可能な範囲で教えていただけますか」や「あくまでも個人的なご意見で構いませんので」というふうに一言添えて聞くと、聞き出せる情報量は増え、さらにはその情報の質も上がります。
質問をすることは、相手に対する敬意とも言えます。重要なのは「どのように聞くか」です。相手が答えやすいように工夫することで、より多くの情報と信頼を得ることが可能です。そして、それはビジネスにおいて非常に価値のあるスキルであると言えるでしょう。