「価格重視のお客様かどうか」を見極めよう
今回、2,676人のお客様に対する定量調査を実施し、興味深い結果が出ました。「ベンダーの選定基準」において「あなたにとって価格が安いということは重要ですか」ということを5段階で質問しました。「価格が最重要」と答えた方と「価格は最重要ではない」答えた方を比較し、真ん中の3つのセグメントを除いて集計した結果です。
「価格の高さを原因に断られてしまう」というケースがありますが、その際、お客様は「価格を重視しない」タイプと「価格を重視する」タイプで着眼点が異なっています。
「お客様と機能のマッチ度」「実績」「アフターサービス」「営業の対応力」を訴求して反応があれば、値引き無しで勝負にいける可能性が高いです。

「価格が高くても売れる営業」とはどういうことかというと、「価格の高さを理由に断られない」「他社よりも高い価格帯でも価格以外の勝負ポイントを持っている」ということです。
「価格が他社より安いかどうか」という判断基準について、「非常にそう思う」と答えた「価格最重視派」の方は、検討初期が30.5%、検討中期が22.1%、検討後期が37.4%となっています。一方で「全くそう思わない」、すなわち「価格は最重要ではない」という価格重視度が最も低い方は検討初期が1.2%、検討中期が6.0%、検討後期が6.0%ということで、実に3.5倍から30倍程度の差がついています。
これは非常に大きな差と言えます。「価格が高くても売れる営業」ということを分解して考えると、まず「価格が最重要なのか、そうでないのか」ということをきちんと見極められることが重要です。「価格が最重要でない」という人たちと「価格が最重要である」という人たちの両者にきちんと適切な訴求ができることがポイントです。
「価格重視かどうか」で判断基準が大きく変わる
「価格が最重要か、そうでないか」で判断基準がガラッと変わるポイントがいくつかあります。
まず1つは実績への感度です。検討初期において「実績が豊富で安心ができるか」ということについて、2倍程の差がついています。つまり、価格が重要でないお客様の方が検討初期の実績に敏感に反応するのです。これは購買者の心理に照らしてみると頷けます。ちゃんと実績があって、そこに強く心が引かれるお客様であれば、多少高くても「安心」を買いたいということでしょう。
次のポイントは検討中期から検討後期にかけて「サポートやアフターサービスが充実しているか」です。これも検討中期〜検討後期で2倍程度の差がついています。価格が大事ではないお客様の方がサポートやアフターサービスに心が惹かれるということになります。すなわち、サポートやアフターサービスが充実しているなら、その安心を多少プレミアムな価格をつけてでも買いたいということです。
「営業担当者の対応が良いかどうか」については、検討後期で4倍近くの差がついています。最終局面において「営業担当者の対応が良いかどうか」は、価格が重要でないお客様の方が4倍近く重視しているということになります。これも、「対応が良い営業から買うなら多少高くてもいい」というところです。
この辺りを見ていくと「実績」「アフターサービス」「対応の良さ」というところは価格重視派かそうでないかの差が分かれる要素であり、「価格重視でないお客様」が非常に重視しているポイントということになります。
一番差がついているのは、「製品やサービスの品質・性能が自社に合っているかどうか」です。ここは明確な傾向の違いが表れています。「価格重視でないお客様」は、マッチしていれば多少高くても買うということです。
見極めポイントとしては「マッチ度」「実績」「アフターサービス」「営業の対応」というところを訴求してみて、そこに対して良い感度を示してこられるということは、このお客様は「価格重視でないお客様」の可能性が高いです。
「価格重視でないお客様」へのアプローチのカギ
「価格重視でないお客様」であれば、本当にそのポイントをしっかり訴求するということですが、最後の決め手のポイントとしては、やはり自社とのマッチ度がすごく効いてきます。自社とのマッチ度というのが「価格重視でないお客様」のスコアでは一番高く、各項目の中で最も重要視されているものです。
これは興味深いことに、費用対効果のスコアよりも1.5倍高いのです。費用対効果は様々な切り口から見てもほとんどの場合圧倒的に強いのですが、「価格重視でないお客様」においては費用対効果よりも「自社とのマッチ度」が1.5倍スコアが高く、かつ全ての判断項目で最もスコアが高いということです。
さらに費用対効果と同等と思われているのがアフターサービスです。アフターサービスの充実さをしっかりと押し、安心感を買っていただくということです。ここは訴求ポイントとして非常に明確に見えているところということになります。
また、「他ベンダーよりも機能が優れているか」という差別化ポイントと「営業対応」のスコアが同じであるため、「商品で負けていても営業で補う」ということはある程度できそうなことが見て取れます。
「価格重視派のお客様」へのアプローチのカギ
一方で、「価格重視派のお客様」の場合、「他社より安いかどうか」が3割程度あります。そのため、他社の方が安かったら不利にならざるを得ません。
ただ、それでも受注をしたいという場合、次に出てくるのが費用対効果です。費用対効果を押していくということになるわけですが、費用対効果と価格の安さを比べたときに検討後期では3倍程の差がついていますので、費用対効果については相当頑張らなければいけません。
裏を返すと、費用対効果以外のスコアは似たり寄ったりなのです。そのため、絶対的な金額が多少他社より高かったとしても、ほぼ一点集中でとにかく費用対効果の相対的な比較感に持っていくことが重要です。
「性能が優れているかどうか」は検討後期においては3.1%しかスコアがなく、「他社よりもサービスが優れている」という訴求をしてもあまり意味がないということです。「価格重視派のお客様」には「うちのサービスは、競合他社様に比べてこういうところが優れているんです」というのは刺さらないということです。これは非常に重要なポイントです。いくら違いをアピールしても響かないということです。
ポイントは「いかにお得な買い物なのか」ということを訴求するということです。「他社よりも高い価格帯にはなるんだけれども、こういうふうに使っていただくとお得な買い物になりますよ」ということです。
他社の方が価格が安い時、「いや、その分当社は機能が上回っているんです」という訴求は全然響かない。「こういうふうにしていただくと、この買い物がお得な買い物になりますよ」という訴求の方が効果的であるということです。
このように、お客様は「価格が最重要か、そうでないか」で見ているポイントが全然違います。まずはこの見極めをするようにしましょう。