営業をするうえで欠かせない「共感」という要素
今回は「コンサルティング営業を組織ぐるみで強化する方法」についてお伝えします。
組織を拡大することとコンサルティング営業との相性は、当社の考えではあまり良くないと感じています。コンサルティング営業をシンプルに定義するならば「お客様の課題解決に対して提言をすること」と言えるでしょう。その際には提言内容だけに気を配るのではなく、お客様の感情面も考慮して行動する必要があります。以前弊社代表の高橋がX(旧Twitter)に投稿したこともあるのですが、感情を無視して正論を振りかざすと、お客様に対して適切ではない言い回しをしてしまうことがあります。
そういった視点から、営業コンサルティング会社様との共同プロジェクトなどでお客様を否定するような発言の兆候が見られた際には、すぐにそれを指摘するようにしています。例えば、「わかってない」や「駄目だ」などの発言があった場合、そのような指摘の仕方はしないように直接注意をしています。
「自分たちが正しく、お客様が間違っている」とする考え方や、自分たちとお客様の間に壁を作るような言葉遣いは、どれだけ良いソリューションや知識があってもうまく機能しません。
お客様は何も考えていないわけではなく、いろいろな手を打って、それでもうまくいかないという状況にあります。それに対して「あなたたちは駄目です」「間違っています」「教えて差し上げます」というような言い回しではお客様の共感は得られず、うまくいきません。営業活動をする上で、共感という要素は欠かせません。
カギは「お客様と一緒に感情の波を生み出す」こと
最近では営業活動に関する書籍も充実しており、営業は表面的には積極的な傾聴や相槌を打つ技術を身につけていることが多いです。具体的には、お客様が何かを言うと「なるほど」「そうなんですね」といった反応をします。
当社も時折購買側に立つことがあるので、表面的な相槌が繰り返される場面に遭遇します。しかし、それだけでは正直、心の高揚感を感じないことが多いです。
何によって高揚感を作るかは人それぞれですが、ポイントは、単に「わかりますよ」という相槌を打つだけでは足りないということです。お客様と一緒に感情の波を生み出す必要があります。
お客様の心に響く関係性を築くのは難しいと感じることがあるかもしれません。たとえば、お客様との関係を深化させたいとしても、「なるほど」「なるほど」と何度も同じような言葉で返答しても、真に強い結びつきが生まれるかは疑問です。
頭と心は掛け算のようなもので、単なる足し算ではないというのが当社の考えです。お客様が感情のシャッターを降ろしてしまったら、どんなに良いことを言っても響きません。
もし掛け算の一方が欠けてしまうと、もう一方がいくら素晴らしくても、結果は0になってしまいます。心と頭がしっかりと連動している時、初めて効果が発揮されます。
「課題解決」に焦点が集まりすぎることの弊害
当社が感じる課題の1つは、多くの企業様が課題解決型の営業をやろうとする際、この「課題解決度」に焦点が集まりすぎている点です。
「お客様の抱える問題に対して、私たちはこう解決します」というアプローチは一見問題ないように思えます。しかし、お客様はすでに多くの情報に触れています。同じような解決方法を既に多く知っています。
同業他社との比較表などを作成することも一般的です。比較自体が悪いわけではありませんが、法人向けのコンサルティング営業においては希少性、つまり新しさや珍しさを提供することが重要だというのが当社の考えです。他社との差別化を図るためには、業界の動向を理解し、異なるアプローチを取る努力が必要です。
この部分は非常に難易度が高く、営業個人の単位で希少性を生み出すのは難しいかもしれません。より強力な営業組織であれば可能かもしれませんが、通常の会社で実現できることは限られています。この希少性を生み出す部分は、会社全体で取り組むべき課題です。
お客様の「バイアス」や「思い込み」に注目すべき理由
希少性を生み出す手段として、当社が現時点で有効だと感じるのは、お客様の思い込みに対して訴求するアプローチです。思い込みやバイアスは普段は無意識のうちに存在しているもので、新しい情報を提示されると、初めて気づくことがあります。この部分に焦点を当てた営業が、今後の成果につながるのではないかと考えています。
例えば、お客様は多くの方が価格よりも「費用対効果」を重視しています。費用対効果は他の要素に比べて、圧倒的に高い評価を受けています。お客様は、単に「他社より安い」ということを重視しているわけではありません。従って、多少高価でも、価値があればお客様は購入する意志があるということです。
世の中が進んでも、人間の思い込みというのは変わらないものがあると感じます。これは人類の歴史からも明らかです。そこで、会社全体として、しっかりとこれを解き明かす努力が必要だと思います。課題解決に向けて、サービス作りや改善に集中することが重要です。特に、希少性という部分をどう作っていくかは、会社の努力で進めるべきでしょう。