チームの共通言語を作る7つのステップ
目標達成が当たり前になっているチームと、未達成が当たり前になってしまっているチームの間には明確な違いがあります。その違いのひとつが「共通言語の有無」です。
以下は営業チームでKPIやキーアクションを共通言語化する7つのステップです。
1
優先順位の認識を揃える
まず、チーム全体で「AよりBが大事」といった優先順位の認識を揃えることが重要です。例えば、「リピート率」を重視して共通言語化したいのであれば、「リピートのために何を犠牲にしても良いか」まで明確にする必要があります。優先順位が曖昧なままではメンバーの仕事量が不必要に増えてしまいますので、メリハリをつけることが重要です。
2
言葉の定義を揃える
「リピート率」と一口に言っても、その分母や分子が何を指しているのかが意外と理解されていない場合があります。同じお客様からの発注があればリピートと見なすのか、それともクロスセルやアップセルの状況を見たいのか、基準を明確にします。「当社ではリピート率とはこれを指す」という定義を統一しておくことが大切です。
3
記録と集計のオペレーションを固める
SFA(Sales Force Automation:営業支援システム)を導入している企業では、「データが入力されず困っている」という声をよく耳にします。KPIの「優先順位」や「言葉の定義」が明確でなければ、データ入力も進みません。逆に、これらの前提が揃ったのであれば、データの「運用」を確立することが重要です。記録と集計の徹底度合いが成果を分けるポイントになります。
4
皆が頻繁に見るように促す
共通言語が定着しない理由は、チーム全体のマインドシェアが低いためです。マインドシェアを高めるためには、「これを見なさい」と強制する「北風型」のコミュニケーションではなく、重要なKPIに関連した好事例があった際にすかさず称賛する「太陽型」のコミュニケーションが効果的です。
5
議論の場を設ける
KPIやキーアクションに注目が集まることで、改善意識が芽生えます。そのタイミングでチーム全員が議論できる場を設定することが重要です。普段から抱いている考えを言語化して話し合うことで、組織の認識がより強固になります。加えて、意見や提案を集約することで、メンバーの参画意識も高まります。
6
議論の場を継続する
「一度は議論の場を設けたが、その後続かずに終わってしまった」というケースはよく見られます。そこで、最初の議論が終わった後、すぐに「次回」の日付を決めておくことが効果的です。多忙な日常に流されないためには、事前に日程を確保しておくことが重要です。
7
「流行」を観察する
共通言語化が進んでくるとKPIやキーアクションが自然と話題に上がり、現場主導で改善活動が進むようになります。これは、組織内で「小さな流行」が起こっている状態と言えます。このようにメンバーが主体的に取り組むようになるまで、見守る姿勢も大切です。
人の行動には「理由」がある
よく、マネジャーの方から聞かれる不満があります。それは、「何度も同じことを言っているのに、変化が見られない」というものです。マネジャーとしては、いちいち指示しなくてもメンバーが自律的に動いてくれる状態が理想かもしれません。
しかし、いちいち指示をしなくてもメンバーが動ける状態を実現するには、ある種の「当たり前」が組織内にしっかりと根付いている必要があります。こうしたものは、よく「組織の文化」として語られ、強いチームには良い文化があると言われます。
では、その「良い文化」はどうすれば作ることができるのでしょうか。
人の行動には、「何かを実行して良い結果が得られたら、その行動を繰り返したくなる」という性質があります。つまり、何かを「やる理由」があるからこそ人は動くし、逆に「やらない理由」があるからこそ行動しないのです。この原理をマネジャーがしっかりと認識することが重要です。
同じことを何度も言っても行動に移されない場合、それには「やらない理由」があるということです。そして、もし行動がなされているのであれば、それには「やる理由」があるのです。
マネジャーとメンバーの間には、持っている権限や見える情報の量に差があります。そのため、権限が多く、見えている情報が多いマネジャーの方が選択肢が広いです。数ある選択肢の中から「これをやってほしい」と絞り込んで伝えることには特別な意味があるのですが、そこがメンバーに伝わらずもどかしさを感じることもあるでしょう。
重要なのは「メリットを伝えること」
そこで重要なのは、「先にメリットを伝える」ということです。
例えば、成果を出すために「ヒアリングを徹底しよう」という方針をメンバーに浸透させたいとします。弊社がご支援している企業でもよくあるパターンですが、BANTC情報(予算、決裁権、ニーズ、タイミング、競合状況)をヒアリングしてから提案を行うよう指示しても、実際にはこの情報が抜けた状態で営業が商談から戻ってくることがあるのです。
ここで求めているのは「BANTC情報のヒアリング」であり、そのメリットは「営業成果の向上」です。その際、多くのマネジャーは「行動そのもの」を促そうとします。例えば、ヒアリングが不十分な営業がいると「もっとしっかりヒアリングをしなさい」と言うのです。
「先にメリットを伝える」というのは、「メンバーが受注するにはどうしたらいいか」から考えるということです。つまり、「どうしたらメンバーが成果を上げられるか」に焦点を当てるのです。
もし仮にマネジャーの言うことを実行してもそれが成果に繋がりそうにないのであれば、メンバーはその行動を重要には感じられません。その行動が成果を出す上で欠かせないものであるならば、メンバーはその行動を重要だと感じるはずです。
このように考えると、マネジャーが「成果」に焦点を当てることは非常に重要です。
それに加えて重要なのは、メンバーに求めるキーアクションの周辺にある「のりしろ」の部分です。
「のりしろ」というのは、例えばBANTC情報のヒアリングはどのような会話の流れで行えば効果的か、またヒアリングした情報をどのように提案に結びつけると効果的か、といった周辺情報です。この「のりしろ」を意識することで、行動がより成果に結びつきやすくなります。
キーアクションを実行することの重要性はメンバーもなんとなく理解しているはずです。しかし、それでも実行されないということは、成果との結びつきを見出せていないということです。成果に直結することであれば、メンバーはその意味を強く実感します。
それを無視してただ単に「やってくれ」と指示をするだけだと、その行動が「のりしろ」の部分を欠いた形で進められ、表面的に指示されたことをこなすだけになりがちです。
成果に焦点を当てた組織運営をしよう
ある企業で新卒社員の育成支援を行っていました。その際、「成果を出して活躍するメンバーと、なかなか成果が上がらないメンバーの違いを見てほしい」と依頼されました。そこで、半日ずつメンバーにぴったりと付き添い、その行動を観察したのです。
すると、両者の間に明確な違いが見られました。会社から「今期の戦略商品はこれだから、お客様にしっかり紹介してほしい」と指示が下された場合、ハイパフォーマーの方はお客様との会話の中で「この戦略商品が適している」と感じたタイミングで自然に商品を紹介します。その商品が適さないと判断したお客様には無理に紹介せず、他の提案に専念するのです。
一方で、成果を上げられないローパフォーマーはまったく異なる対応をしていました。「絶対に紹介しなければ」という思いから、1時間の商談のうち50分程はその商品の紹介のタイミングを見計らってソワソワしているのです。そして、残りの10分になったところで意を決したように、「実は当社、最近この商品に力を入れてまして…」と切り出します。これまでの商談の流れを断ち切ってでも、その戦略商品を紹介しようとするのです。
ここで、先ほど述べた「のりしろ」について改めて考えてみましょう。「これだけやりなさい」「はい、やります」という形で「のりしろ」が全くない指示が出されると、手段が目的化しやすくなり、成果が出にくくなるのです。
戦略商品だからといって誰にでも紹介するということでは成果は出ません。戦略商品がフィットしそうなお客様を見極め、適切なタイミングで紹介するからこそ、うまく商談が進むのです。
メンバーにやってほしいことを促す際、手段が目的化してしまうことは非常に危険です。だからこそ、マネジャーは成果に焦点を当てることが重要です。成果に焦点を当てた際、なにもアクションが必要でなければ、なにもする必要はありません。成果に繋がるアクションが必要とされるアクションです。
その上で、キーアクションとその周辺にある「のりしろ」を意識するようにしましょう。そうすることで、「成果に繋がる行動」が自然と促進されるでしょう。