営業組織に共通言語を浸透させるには
今回は「営業組織に共通言語を浸透させる手順」についてお伝えします。以下は営業組織に共通言語を浸透させる7つの手順です。
①皆ができるアクションを選ぶ
共通言語は現場で実行されなければ単なる理想論で終わってしまいます。そのため、次の条件を満たすアクションを選ぶことが大切です。
- 高いスキルがなくても実行できる
- 成果に関連している
- 実行する機会が一定の頻度で存在する
- やったかどうかの基準が明確である
これらの条件を満たすものを「キーアクション」に設定することで、全員が共通の基準で動けるようになります。

②キーワードを具体的に表現する
例えば、「お客様との信頼関係を築く」という表現では抽象的すぎて具体的な行動に結びつきません。重要なのは以下について言語化することです。
- どんな場面か
- どんなタイミングか
- 誰に対してか
- 何をするのか
- どのように行うと成果が出るのか
- それはなぜか
上記の中でも特に「どんな場面か」「どんなタイミングか」が明確であることがポイントです。
③「なぜ?」を言語化する
“Why”は5W1Hの一部ですが、組織に共通言語を浸透させるためには繰り返し伝える必要があります。そのため、“Why”については様々な角度から言語化しておきましょう。
- なぜこのキーアクションを実行する必要があるのか?
- 実行することでどんなメリットがあるのか?
- 実行しないとどんなデメリットが生じるのか?
④フェーズの定義に反映させる
共通言語化されたキーアクションは「わざわざ意識して実行する」のではなく、「当たり前の基本動作としていつも実行している」状態にすることが重要です。商談フェーズの定義に入れておくことでそのような状態を作ることができます。フェーズを前に進めれば自然とキーアクションを実行したことになっているようにフェーズを定義しましょう。

⑤ダッシュボードで見える化する
例えば「フェーズ04」がキーアクションであれば前後のフェーズ03〜フェーズ05の停滞をモニタリングします。「共通言語が機能しないバグ」を見つけて早めに対処しましょう。
- フェーズ03→フェーズ04の停滞
キーアクションのやり方がわからずにつまづいている可能性がある - フェーズ04→フェーズ05の停滞
キーアクションを誤解したまま実行している可能性がある

⑥人材育成の「型」に落とし込む
頭ではわかっていても共通言語になっているキーアクションを実行できないメンバーがいる場合、「キーアクションを実行している場面の見本動画」と「チェックポイント」を作っておきましょう。それによってパフォーマンスを確認するためのロールプレイがやりやすくなります。

⑦マネジャーのメッセージで促進する
多くの営業組織では「受注したら褒められる」「売上目標を達成したら褒められる」のが常です。一方、容易にそこへたどり着けないメンバーもいます。「共通言語にしているキーアクションを実行したら、すぐさまマネジャーが褒める」ことで、重要な行動が促進されます。
「成果を上げるチーム」には共通言語が存在している
弊社は「営業1万人調査」で成果を上げているチームとそうでないチームの違いを調査しました。
その中で最も大きな影響を与えていたのが「チーム内に『共通言語』が存在するかどうか」という点でした。「成果を上げる強いチームには共通言語がしっかりと存在している」ということは、多くの方が感じていることかもしれません。
共通言語を浸透させるには、まずその言葉自体が明確に定義されている必要があります。言語化されていなければ、議論も前に進みません。
特に「言語化が苦手だ」というケースでよく耳にするのが、「感覚でやっている」という状況です。感覚でやっていたり、属人化しているケースも少なくありません。
ただ、感覚的に仕事をしていることや属人化していることが悪いと決めつけてしまうと、仕事が前に進みづらくなってしまいます。なぜなら、それは人間として自然な行動であるからです。
「感覚に頼るな」「属人化を避けろ」と言っても、それが完全になくなることはありません。そうした行動は、人間の本能に近い部分があるからです。過激な言い方をすれば、「感覚に頼るな」「属人化を避けろ」と言うのは「人間らしさを捨てろ」と言うに等しいでしょう。
重要なのは「感覚でやること」や「属人化すること」を否定することではなく、「言語化によって得られるプラスのインパクトを増やしていくこと」です。感覚で仕事をしたり、属人化したりすることを完全に排除するのではなく、言語化のプロセスを通じて組織全体にポジティブな影響を与えることが重要です。
「言語化ノート」を作ろう
「言語化すること」について、個人レベルと組織レベルでそれぞれできることがあります。
まず、個人レベルでは「言語化ノート」を作りましょう。
言語化のスキルを伸ばすためには、実際に言語化するための「言語化ノート」を用意する必要があります。
弊社代表の高橋はB5サイズのリング式方眼ノートを好んで使用しています。大体2〜3ヶ月で1冊を使い切るペースです。このノートは商談用ではなく、言語化のためだけに使っています。
加えて、高橋は「言語化ノート」とは別に内省や振り返りのためのノートも持っています。こちらはモレスキンのノートで、9ヶ月で1冊ぐらいのペースで使っています。これは非常にプライベートな内容を書くためのノートです。
使い分けとしては、B5サイズのノートはアイデア帳として使い、落書きのように思いついたことを自由に書いています。モレスキンのノートには自分の内面的なことや、人に見せないような内容を書き込んでいます。
組織で言語化のプロセスを共有しよう
組織レベルにおいては、弊社では「会社全体について考えるノート」をデジタルで作っています。使用しているツールは主にNotionです。
Notionには思いついたことをどんどん書き足していきます。高橋は手書きのメモやアイデアを写真に撮って貼り付けることもよくあります。具体的なペースで言うと、ワードに換算すると月に5〜10ページ分くらいの内容です。あまり頻繁にアップデートするとメンバーがついてこられなくなってしまうため、更新のペースは最適なボリュームを保つことがポイントです。
このNotionはチーム全員で共有するもので、様々なアイデアやメモを追加していきます。これらのメモがある程度まとまってきた段階で全体会議で共有し、皆でその内容を咀嚼して運用していくというサイクルを回しています。
こうしたアイデアや考えを言語化したNotionは社内で重要な位置づけを占めており、会社の将来を左右する大事なものとなっています。
言語化のプロセスをしっかりと作ることによって組織が自然と良い方向に進み、言語化の恩恵を受けられるようになります。ただ「感覚でやるのは良くない」「属人化は避けるべきだ」と言っているだけでは、何も前進しません。物事が前進するためには言語化をすることが重要です。
弊社では組織に関する言語化を行うNotionが更新されるとSlackの専用チャンネルで通知が飛ぶようになっています。そうすると、「誰かが何かを考え始めたな」と皆が気づきます。Notionの更新が頻繁になると、メンバーは自然と「何か動きがあるな」と思うわけです。
高橋はiPadを使っています。手書きでiPadにメモを書き、それを画像としてNotionに貼り付けるということをよくやっています。
手書きは発想が豊かになります。タイプ入力は情報を速く記録するには便利ですし、文章ベースでの共有には非常に適しています。しかし、人間の体や脳の構造から考えると、アイデアや考えを共有する場合は手書きのほうが断然伝達効率が良いと言えるでしょう。
また、いきなり完全に出来上がったものを見せられると、人は少し「冷める」ことがあります。例えば、「うちの会社のビジョンはこれだ!」と、いきなり綺麗にまとめられたものが提示されると、「いや、自分はそのビジョンを作るプロセスに関わっていないし…」と感じてしまうことがあります。同じように、「今季の目標はこれでいくぞ!」といきなり発表されても、「いや、自分はその目標を作るプロセスに参加してないしな…」と思うこともあるでしょう。
そのため、高橋はいつも少し手前の段階からチームに様々なアイデアを共有するようにしています。途中段階のアイデアを共有することで、メンバーはそのアイデアが発展していくプロセスに参加している感覚を持てるようになります。