テンプレートの営業トークが生まれる5つの原因
接客や営業を受けていれば誰しも「テンプレートの営業トーク」を体験したことがあるはずです。
多くの営業マネジャーが「表面的なテンプレートの営業トークはダメ!」「お客様と会話のキャッチボールをして!」という指導をしますが、重要なのは「テンプレートの営業トークが生まれる構造」を理解することです。なぜなら、本人は好き好んでテンプレートの営業トークをしようとしているわけではないからです。
テンプレートの営業トークが生まれる原因は主に5つあります。
1
初期教育で「一方的に話すトーク」を教えられたまま
これは教育体系の問題です。多くの会社は入社直後以外は営業の社内研修がありません。新卒も中途も入社時点ではマニュアル的なトークを教えられ、「あとは自分なりに考えてアレンジして」と言われます。「考えてアレンジ」ができない人はテンプレートの営業トークをし続けることになります。
2
「これを言えば刺さるから言いなさい」という指示がある
指示が明確なのは「行動が具体的に示されている」という意味では良いですが、その際に「なぜそのトークが響くのか」を紐解いて教えられているケースは少ないです。「これを言いなさい」と言うより「なぜこれが響くのか」に重きを置いた伝達が必要です。
3
間が怖いからとりあえず話してしまう
これは意外に多いです。お客様との会話に沈黙が生まれるのを極端に嫌うあまり、自分の頭の中にあることを「不安だから」という理由でだらだらと話してしまいます。この癖は「質問をメインにしたお客様とのやり取り」を練習し、身体でリズムを覚えないとなかなか治りません。
4
普段から一生懸命に一方的に話す練習をしている
多くの会社で実施されているロールプレイはプレゼンテーションや商品説明がほとんどです。なぜかというと、相手のお客様役は聞いているだけでよいため練習しやすいからです。ただ、この練習をしていると、商談で練習の成果を発揮すればするほどテンプレートの営業トークになる可能性があります。
5
実は本人は一方的なトークだと思っていない
この場合が最も難しいと言えるでしょう。本人は相手に合わせて柔軟に話しているつもりでも、お客様からすると「お決まりのテンプレートの営業トーク」に映ることがあります。それを治すには「顧客目線のセンスを磨く」「ロールプレイを録画して本人に見せる」「他の人のお手本動画を見せる」といったことが必要です。
指示が良い結果をもたらしているかを確認しよう
経営者やマネジャーと話をしていると「これだけは必ず言って帰ってこい」といった指示が出されていることがあります。商品の魅力や価値を伝える「キラートーク」を「メンバーに確実に伝えてほしい」思っているのです。
メンバーに対してどの程度具体的な指示を出すべきかという点は非常に難しい問題です。例えば、「これを必ず伝えなさい」というのは具体的で分かりやすい指示です。しかし、問題となるのは「こうした指示が本当に良い結果をもたらしているのかを上司が確認していないことが多い」ということです。
多くの営業現場では細かい指示が出され、それが原因でかえってメンバーのパフォーマンスが低下していることがあります。そして、パフォーマンスが低下しているため、さらに細かい指示が追加されるという悪循環に陥っているのです。
この状況を防ぐためには「その行動が本当に良い結果をもたらしているか」を確認する必要があります。それをしない限り、メンバーは応用力を身に付けることができません。
応用力がない状態とは、「与えられた指示はこなせるものの、それ以上のことを自分で考えることができない」ということです。
自分の頭で考えていないように見える人が、本当に考える力がないわけではありません。しかし、「自分の頭で考える」ということがどういうことなのかが理解できていない、というケースはよくあります。「自分の頭で考える」ということがどういうことなのかを理解することができていれば、テンプレートの営業トークも徐々に変化していきます。
「自分の頭で考える」ということを教える際に弊社代表の高橋がメンバーに必ずやっていることの1つは、手書きのノートの写真を送ってもらうことです。それにより、どれくらい自分で考えているのかを確認することができるのです。
高橋は手書きのノートの写真を送ってもらうということを20年近く続けています。「考える力があるかどうかは手書きのノートに非常によく現れる」と高橋は言います。
ロールプレイでお客様の立場を理解しよう
テンプレートの営業トークをしている営業は、そのことに自分では気付いていないことが多いです。
自分で気付いていない人に対して「それでは駄目だ」と言うだけでは話が進みません。指摘されてもピンとこないのです。そこで効果的なのが「体感してもらうこと」です。
最も簡単な方法はロールプレイでお客様役をやってもらうことです。それにより、テンプレートの営業トークがどれほど購買意欲を削ぐかをリアルに体験できるのです。
ロールプレイの際にはメンバーにお客様役をやってもらい、上司が営業役をやります。そして、営業役の上司は資料をただ読み上げるのです。
実際にやってみると、途中でお客様役のメンバーが「もう勘弁してくれ」と感じる瞬間が訪れます。途中でお客様役のメンバーが「すいません、これいつまで続くのですか?」とつぶやくのです。
その時、営業役の上司は「そうなんだ、それがまさにお客様が感じていることなんだ」と説明しましょう。話している側はなかなか気付きにくいことですが、実際に体感することで理解が深まるのです。