営業資料の作成における2つのジレンマ
お客様への提供価値を説明する営業資料を作成する際のジレンマは以下の2点となります。
①どの会社にも同じ内容を適用する
⇒時間はかからないが、テンプレート化して価値が伝わらなくなります
②会社ごとに1つ1つゼロから作成する
⇒カスタマイズにかかる工数が膨大になります
この問題を解決するカギは、「お客様と対話するための資料」への方向転換です。
「お客様と対話するための資料」の例としては以下のようなものが挙げられます。
お客様と対話するための資料
- 共感を形成する資料
- 論点を網羅する資料
- 構造を明らかにする資料
- 発想を刺激する資料
- 山への登り方を示す資料
これらの資料は、あくまでツールであり手段です。お客様との「対話」を促進することが重要になります。下記、具体的に説明しましょう。
お客様との対話を円滑にする5つの資料
共感を形成する資料では、「あるある」とお客様が感じる「よくあるお悩み」を番号付けして提示します。こうした形式であれば、提供価値とお客様のニーズがぴったり一致する場合が多くなります。
論点を網羅する資料では、お客様のお悩みに対する「何を考えるべきか」の論点を1枚に凝縮し、どんな議論にも対応しやすい状態を作り出します。
構造を明らかにする資料では、単なる論点の網羅では先へ進めないため、因果関係や対比などの「構造」を明確に示しています。
発想を刺激する資料では、斬新な切り口から情報を提供し、お客様に「ああ、その手があったのか!」という発見を促します。
山への登り方を示す資料では「世の中でよく言われるAルートだが、実はBルートの方が、きちんと山頂にたどり着ける」といったアプローチを提案します。
もちろん、スライドのデザインが良いことはプラスですが、洗練されたビジュアルでなくても、「対話」が深まる資料を作成することは十分可能です。
この5つのパターンを活用して、お客様との関係をより深化させる営業資料を創造することが大切となります。
スライドを使うのは目的ではなく、あくまで手段
ここまで述べたことについて、別の観点から補足したいと思います。
ある企業で研修をしていた際に出てきた共通の話題は、「資料を読んでしまうこと」の対処法でした。
「資料を読んでしまう」とは具体的には「パワーポイントなどを使ってお客様に提案する際、資料に書かれている内容をそのまま読み上げて説明してしまう」ことを指します。具体的には以下のような課題が生じます。
①情報のボリューム
⇒ページあたりの情報が多いと、早口になってしまう
②お客様の反応
⇒資料を読み上げる感じで説明し始めると、お客様の興味が失われ、温度感が下がってしまう
これらの問題は、営業は非常にプレッシャーを感じるもので、どう対処するべきか悩みの種になっています。
重要なのは、スライドを目的として使うのではなく、手段として使うことです。
スライドを最初から順番に説明しないことも、実際の商談では多いでしょう。スライドで書いたことをそのまま説明するのではなく、お客様とどんなコミュニケーションを取りたいかを考えるべきです。
しかし、これが非常に難しいのです。資料から離れることで自分をうまく表現できなくなるなどの恐れもあるでしょう。資料は手段であり、それを通じてお客様との対話を深め、効果的な提案をするためのスキルが求められているということを忘れないようにしましょう。
1枚の資料で「お客様と話したいこと」を網羅する
商談は、常に予想通りに進むものではありません。しかし、それが必ずしも悪いことでないと当社は考えます。お客様からのリアクションがあるということは、商談が生きている証だからです。
資料の枚数を極限まで減らすという方法も有効です。具体的には、「1枚縛り」という方法があります。「1枚縛り」は1枚の資料でお客様と商談をするもので、非常に難しいものです。
その1枚がピント外れだった場合、商談が無駄になってしまう危険性もあります。そのため、その1枚の資料を作る際には、お客様と話したいことを網羅するように心がけましょう。
商談は「お客様との対話の場」である
当社では資料は手段として使い、資料に書いていないことがお客様との商談の大部分を占めるように心がけています。
このような方法でお客様と深くコミュニケーションをすることで、より効果的な結果を得ることができるでしょう。
商談は単なるプレゼンテーションではなく、お客様との対話の場であるという意識が成功へのカギとなります。