双方向の商談にするためのポイント

 今回のトピックは、双方向の商談にするためのポイントです。

 「双方向」とは、お客様から課題をヒアリングすることを指しているわけではありません。
もちろんヒアリングは大事なのですが、ここでは提案に対するお客様からの異論、反論、疑問などを歓迎してさらに提案の質を高めていく、という意味合いで「双方向」と表現しています。

 双方向な場を作るポイントは以下の3つです。

 
 

双方向な場を作る3つのポイント

①どのタイミングで、相手にどうボールを渡すか
②どこまで深掘りし、相手に寄り添うか
③どのタイミングで、どうリードするか

①どのタイミングで、相手にどうボールを渡すか

 ポイントの1つ目は、お客様にどのタイミングでどうボールを渡すかです。

 提案で接戦の場面になると、多くの営業の方が「気にかかることはありませんか」とか「ネックはありませんか」というネガティブなことから先に聞いてしまいます。
相手にボールを渡すときに、いきなり異論や反論といったネガティブなポイントから受け付けると、どうしても説得モードの展開になりやすいんですね。

 そこで私は「今ここに時間を使う理由」や「選択肢として残っている理由」などを先に聞くことを推奨しています。
まずはポジティブなポイントから聞いていくようにしましょう。

②どこまで深掘りし、相手に寄り添うか

 商談においてはポジティブなポイントだけを聞いて場が進むわけではありませんので、もちろん気になる点なども聞いていきます。
気になる点をどこまで深掘りして相手に寄り添うかというのが2つ目のポイントです。

 営業の方とロールプレイをしていると、深堀りをせずにいち早く説得モードにかかる場合が非常に多いのです。
お客様から反論やオブジェクションが出てくると、即座にカウンターで返すという方が90~95%にもなります。

 お客様の反論にすぐさま自分も反論するというのが、あまり得策ではないことはさまざまな場でお話しています。
反論の前に、何がポイントなのかを理解するということが重要なのです。

③どのタイミングで、どうリードするか

 しかし、理解することに集中しすぎるのも考えものです。
商談には時間の制約もあり「そろそろまとめに入らないといけないな」というポイントがありますよね。
それがどのタイミングでどうリードするかという3つ目のポイントです。

 次の図をご覧ください。

 
 

 ここでは「場の進行パターン」をA~Eで5つ示しました。
縦軸が相手の発言量(上に行くほど相手の発言が多い)、横軸が時間軸(左から右へ進む)を表しています。

場の進行パターン

A:相手に発言のボールを十分に渡して最後はたたむ
B:相手に発言のボールをほとんど渡さない
C:取ってつけたように途中で相手の話を聞く
D:相手に発言のボールを渡したままグダグダになる
E:最後に相手から出た発言で対応しきれずに終わってしまう

 一見するとAが理想的に見えますが、1回深掘りするだけだと落としどころが難しいことが多いのです。
そこで提唱したいのが、次の図の「2つのステージに分けてW字型に場を仕切る」やり方です。

 
 

双方向な商談を作る「W字型」の進行

 「W字型」というのは、縦軸に相手の発言量、横軸に時間の流れをとったときに「W」の形になる進行ということです。

①早めの段階で相手にボールを渡す

 なるべく早めに相手に話してもらいましょう。

②十分に相手の発言に耳を傾ける

 まずは相手の話をしっかり聞いていきます。
しかしこのまま商談最後までいってしまうと収束が難しくなってしまうので、次の③に進みます。

③中間段階で、簡単にまとめる

 多くの方は「今日の商談を総括しますと……」というように最後にまとめようとしてしまいます。
しかしこのスタイルでは、十分なインタラクティブな場を確保しづらいのです。

 自分の商談を前に進めることに不利な情報は、誰しも深堀りたくないものです。
中間でまとめるという手段をとらないと、どうしても相手のネガティブな言葉や反論をじっくり聞くことに対して、踏ん切りがつきにくいんですね。
中間でまとめることをあらかじめ決めておくと、そこまでは相手の発言に耳を傾けることに集中できます。

 中間段階で簡単にまとめるというのは、書籍『無敗営業』(高橋浩一著、日経BP、2019年)で述べた「要件整理」のことです。
キーワード化をし、網羅性、具体化、優先順位の3つをまとめてある程度ビジュアルで見せることができると、非常に理想的です。

④ポイントを絞って、相手の発言を引き出しつつ議論する

 後半部分に行くとポイントが出てきます。
要は相手の疑問・反応に応えるときに、何に回答しなくてはいけないかということが具体的になっていきます。

 相手の発言に対して、どのポイントを話題にするか、そこに自分がどう回答するかで、Wと書いておきつつ、前半と後半では谷の深さがやや違うことを図の中でご注目いただければと思います。

 後半はある程度自分から材料を示すところもあるうえに、どこかでまとめに入らなくてはいけないので、前半よりも谷が浅くなるということです。

⑤最後にしっかりとたたむ

 最後は、商談全体のまとめをしてしっかりたたみましょう。

 このようなWの字を描くような設計に沿ったディスカッションの進め方を、時間配分で示したものが次の図です。

 
 

 前半と後半をだいたい50%ずつで分けて、イントロダクションやNEXTステップの確認をなるべく短くして考えたときに、真ん中の深堀り(意見交換)や中間まとめ、個別議論などのパートになるべく多くの時間を割く構成になっています。

 発言の多い方にはポイントを明確にした聞き方をする、逆に言葉数の少ない方には「個人的な意見で構いませんので」と話しやすい促しをするなど、相手のタイプに応じて投げるボールの種類は選ぶ必要があります。

 しかし「W」の形を描くこと自体は大きく変わらないと思いますので、そのことを意識して進行できると、双方向の商談が実現できるのではないでしょうか。

 

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高橋浩一