「質問」次第で商談の質が変わる
「御社の課題は何ですか?」という単調な課題ヒアリングは商談の温度を下げるだけです。あえて逆説的に「万全の対応を既にされていて、困っていないのでは?」と聞くと「いや〜悩みだらけです」と謙遜の回答がきます。そこで「もう少し詳しく伺えますか?」と深掘りします。そうすると、悩みを話すお客様の温度感も上がります。
「御社の課題は何ですか?」という質問は、確かに営業からすれば「聞かないといけない質問」ですが、一方、お客様からすれば「何回も(他の営業に対して)答えてきた、ありきたりで何の変哲もない質問」に映ってしまいます。ありきたりの質問は、お客様の「条件反射的な対応」を引き出してしまい、熱量が上がりません。
お客様は、営業から「むしろ困っていないですよね?」と聞かれる体験はあまりありません。ほとんどの営業は「売り込みのためのニーズの隙間」のようなものを探して、ちょっとでも満たされていないニーズがあれば売り込もうとするからです。お客様はそれを敏感に察知します。
「どうしたら提案機会を頂けるか?」で頭が一杯の営業は、どうしてもニーズにガッついてしまいます。 反対に、「お客様が今この商談に時間を使ってくれている理由は何か?」を考え抜く営業は、お客様から必要とされ、結果として受注もできます。 どんな「問い」を頭の中に置いておくか。ここで違いが出ます。
95%以上の営業は、以下の3種類の質問しかしません。
- ニーズや課題を聞く質問
- 見積(提案)を作るための質問
- 受注確度を上げるための質問
一方で、「お客様の思考を刺激する質問」を試みる営業はほとんどいません。
「問い」で勝負する営業にとっては、それが大きなチャンスになります。
「お困りごとは何ですか?」と聞かれたお客様は、思考のスイッチを入れないまま、いつものように「慣れた回答」をします。
一方、「むしろ困っていないですよね?」と聞かれたお客様は「あれ?そうだっけ?いや、困っていることはあるんだけど……」と、具体的に考え、言語化し始めます。
実は、「悩みや課題をきちんと言語化した経験のあるお客様」は意外と少ないです。なぜなら、忙しいからです。しかし、この言語化はお客様にとっては本来、必要なプロセスです。そこで、この「言語化」を支援できる営業はお客様から重宝されます。案件化のための最重要スキルです。

「3つの観点」で課題を言語化しよう
課題の言語化それ自体が価値になるときとはどのような場合でしょうか。一番分かりやすいのは、お客様の社内に関係者が何人かいらっしゃる状況です。「Aさんはこれが課題だと思っている」「Bさんはこれが課題だと思っている」「Cさんはこれが課題だと思っている」というように、課題の認識が人によってバラバラだと、当然ながらその後のアクションはやりづらくなります。
まずはその認識を揃えることに大きな意味がありますし、課題の原因が分かっていない状態よりは分かっている方が良いです。課題の原因について組織で合意が取れている状態まで来ると、すっきりと解決に向かいやすくなります。そのため、課題についての認識や言葉が揃っていない状態のデメリットを解消することが、非常に大きなポイントの1つです。
とはいえ、それをしたら本当に価値のある課題の言語化になるかというと、まだ足りません。そこで大事なのが、次の3つのポイントです。
課題を言語化するときの3つの観点
- ①課題の粒度
- ②原因の構造の納得感
- ③人によって異なっている認識の違いを見える化する
①課題の粒度
1つ目は、「課題の粒度」です。粒度とは「どのくらいまで細かく見るか」というレベル感の話です。例えば、「売り上げが伸びない原因は何なのか」と考え始めたら、どんどん細かい方に分析できるわけです。
売り上げを「お客様の数×単価」で分解する、お客様の数を「新規」と「既存」で分解する、「新規」を「企業の規模」で分解する、「企業の規模」をさらに「業界」で分解する、といった感じで、どんどん分解していったときに、「ここがネックだ」とか「これを解決しなければいけない」ということが見えてきます。このとき、抽象的で大まかなレベルで課題を捉えるのと、具体的で細かいところまで課題を捉えるのは全然違います。
一方で、あまり細かく行きすぎると、「本当にそれが課題なの?」という議論が生まれることもあり得ます。「他にも課題があるのではないか?」ということです。ですから、細かくと言っても限度があるはずで、どの辺までで収めるかを考えることが重要です。
②原因の構造の納得感
2つ目は、「原因の構造の納得感」です。「なぜその問題が解消されないのか」「なぜ課題が起こっているのか』ということですが、それを突き詰めていくと「リソースがない」とか「何かの能力がない」という話になりがちです。「リソースがない」とは、例えば「お金がない」「時間がない」「人手が足りない」といったことです。「何かの能力がない」というのは、「何かをする力が弱い」ということです。
しかし、それを「リソースがない」とか「スキルがない」ということで終わらせてしまうと、「リソースが足りないなら、調達してくればいいじゃないか」とか「スキルが足りないなら、スキルアップすればいいじゃないか」ということになりますが、このときに1枚「かませた」方がいいフィルターがあります。それは、「過去においても解決の努力はしたはずなのに」という言葉です。
過去においても解決の努力をしたはずなのに、なぜそれがなおも解決されていないのか。「過去において全く解決の努力をしたことがない」というのであれば、それはまず外部の会社にお金を払って何かをやる前に「自分たちで課題解決のための努力をやってみよう」という話になりがちです。
しかし、「過去にあれこれ手を尽くそうとしたけれど、上手くいかない」というのは、どこかに投資をするに値するポイントがあり、その点においてお客様と合意が取りやすいです。「これはもう外部に頼んだ方がいいね」「何かサービスをしっかり利用した方がいいのではないか」という話になりやすいのです。
ただし、「原因」ということになると、「因果関係がそれで合っているのか」という話があります。例えば、「広告の効果がないのは、他社の広告に埋もれてしまっているから」という見方もできるかもしれませんし、「お客様の購買行動が変わってきているから、こういう広告は受けなくなってきている」ということかもしれません。
いろんな要因があり得るのですが、「本当にそれが原因なのか」ということを考え、「因果関係の紐づけ」をしようとすると、これは非常に難しいです。そのためここは、「絶対にこうですよ」という正解を誰も言いにくいところです。そのように言おうとしても「本当にそれが正解なのか?」「本当にそれが原因なのか?」と言われると、「いや、有力な原因の1つです」というような感じになり、「絶対にこれ1つです」と言い切るのは非常に難しいです。
ただし、それなりの根拠を持って「やはりこれが有力な原因です」というロジックを整えるところまではできます。そこまでであれば、逆に営業側としても「できるところまでは、やってみよう」という気になります。「こういう根拠で、これが原因ではないでしょうか」ということです。
③人によって異なっている認識の違いを見える化する
3つ目は、「人によって違う認識のばらつきを見える化する」ということです。例えば、「うちの会社にはこういう課題がある」というときの「うちの会社」自体、たくさんの関係者が絡んでいます。厳密に言うと「うちの会社」と言った瞬間に、会社というものに関わる様々なステークホルダー、従業員、パートナー、株主などが浮かび上がってきます。
特に法人営業の場合、その法人にまつわる色々な関係者がおり、それに対して誰かが「Aだ」と思っていても、別の人が「Bだ」と思っている可能性があります。結局、「誰がどのように認識しているのか」ということは、できる限り細かく見えていた方がアクションは取りやすいです。
人によって認識が違うことは当たり前です。しかし、企業の規模にもよりますが、それがバラバラなままだと何か手を打とうと思ってもどこかで停滞してしまうということはよくあります。そのため、逆に営業の側からすると、色々な関係者にヒアリングをしたときに「あれ、この人とこの人は言っていることが違うぞ?」「考えていることが違うのではないか?」ということが見えると、「解像度」が上がります。
課題を言語化するときの3つの観点
- ①課題の粒度
- ②原因の構造の納得感
- ③人によって異なっている認識の違いを見える化する
ここまでが本当にしっかりと言語化されたら、お客様としては課題解決のためのアクションを非常に取りやすくなります。そうすると、「それが見えているのに、何も手を打たない」というのは「大きな損失」として映るようになります。裏を返すと、営業が提案をするときに「課題の言語化」をしていくと、それだけでお客様に対して非常に価値を生み出すことができるということです。
ただし、そのような課題についてお客様が初めから全て整理して話せるわけではありませんし、そもそもそのような内部の深い事情まで話したいとは思っていないこともあります。そのため、入口の突破口として重要なのが冒頭に挙げた「逆質問」です。「むしろ困っていないのではないでしょうか?外から見ると、十分対策をされているように見えますが」と質問することで、お客様は「いやいや、そんなことないんですよ」と内部の事情を話してくれやすくなります。





