営業マネジャーのスキルを上げたい

2026.01.14

マネジャーの「世界観」が「案件の報告」に影響する

勝敗因分析を機能させる「正確な情報」を集めるには?

勝敗因分析を機能させるために重要なこととは?

営業における失注分析を機能させるためには、「失注はマネジャーの責任であり、受注はメンバーの手柄である」という世界観を徹底することが重要です。その上で、失注と受注の両方について同じ構造で詳細な情報を収集し、特に失注については定期的にカテゴリーを見直して対策を講じることで、自然と正確な情報が集まるようになります。今回は勝敗因分析を機能させるために重要なポイントについてお伝えします。

「案件の報告」で重要なポイント

多くの営業組織では「失注報告」の際、正しい情報が上がってこないという課題があります。その原因は主に3つあります。

  • ①上司が「なぜ」と質問してしまうこと
  • ②失注の時「だけ」詳しい報告を求めること
  • ③失注が部下の責任となっていること

失注報告における正しい情報収集の方法として、以下のようなプロセスが効果的です。

まず、上司は報告に対して感謝を示した上で、理由ではなく「事実」を確認します。例えば、「報告ありがとう。お客様からの連絡は電話でしたか、それともメールでしたか?」という質問から始めます。これにより、メンバーは事実に基づいて答えやすくなります。

続いて、「お電話では、具体的にどのようなお話があったのでしょうか?」と、発言内容の事実を確認します。その後、「他にもお客様がおっしゃっていたことはありましたか?」と確認することで、重要な情報を得られることが多くあります。

次に、「出来事の流れ」を確認します。判断に影響を与えた要因(上司の一言、会議での発言、他社のプレゼンテーションなど)を把握します。そして、「もし時間を巻き戻して、この案件を確実に受注するとしたら、いつの時点の行動を変更しますか?」という質問をすることで、真の原因が明らかになることがあります。

また、失注報告よりも受注報告の振り返りにより多くの時間を費やすことが効果的です。これは「再現性」を高めるためです。失注を詳しく追及すると、メンバーのモチベーションが下がる一方、受注の成功要因を言語化することで、メンバーの成長につながります。

最後に、失注の原因が正しく把握できれば、「メンバーがどう行動を変えれば受注できたか」が明確になります。これは同時に、「上司がどう介入すれば失注を防げたか」も示唆します。上司の介入により防げた失注は、部下の責任ではありません。

多くの上司は「部下の成長のため」という善意から「なぜ?」と質問してしまいますが、これは逆効果となる可能性があります。上司は「なぜ?」という問いを自身に向け、メンバーには事実確認から始めることが望ましいアプローチとなります。

土台となるのはマネジャーの「世界観」

マネジャーや経営者の方からよくお聞きする悩みとして、「正しい情報が集まらない」という課題があります。

すぐに具体的に試していただけるポイントをいくつかお伝えしていきたいと思いますが、まず前提として、「世界観」が非常に重要になります。

その世界観とは、「失注はメンバーの責任ではない」そして「受注はメンバーの手柄である」ということです。この世界観をどれだけ徹底できるかが重要です。

例えば、皆さんの会社で営業が失注をしてしまったとき、マネジャーから厳しく言われる場面があるとすると、それは失注がメンバーの責任になっているということです。そうなると、当然ながらメンバーは失注に関わる情報をはっきりとは伝えない方が得をするということになります。というのも、それをはっきりさせてしまうと、余計に自分が厳しく言われる可能性が上がるからです。

このような状況では、正確な情報を上げてくれと言われても、それは土台無理というものです。「メンバーの失注はメンバーの責任ではなく、マネジャーの責任である」という世界観の純度をどれだけ上げられるかが重要です。

メンバーの責任ではなくマネージャーの責任とは、以下のようなことです。

  • まず営業の方針や戦略をしっかりと示す
  • どういうお客様にどういう価値を提供すべきか、どういうアプローチをすべきかを示す
  • メンバーがやりやすくするための支援や施策を授け、受注に向けてサポートする
  • 難しさが生じたときには、そこも助ける
  • メンバーが忙しくて手が回らないとき、または忙しさの要因によって何かできないことが発生したときには、きちんとそれをマネジャーが把握、確認をしてリマインドをするなり対処する

ここまでやった上で失注したら、メンバーは悪くありません。マネジャーのそれまでに至る何かがまずかったということです。そのため、見方を変えると、メンバーに対して失注を厳しく追及するということは、その時点で重大なマネジメント上の手落ちがあるということをマネジャーが認識していないということです。

マネジャーの仕事は「メンバーを勝たせること」

マネジャーがマネジメント上のどこがまずかったのかということをちゃんと考えずにメンバーに厳しく言うのであれば、もうかなり厳しい状況だということになります。そこが解決されない状態のままメンバーが活動をすると、また同じようなことが起こる可能性があるわけです。そうするとどんどん悪循環となり、結果が出ず、そしてまた厳しいことを言われる、というふうになってしまいます。

基本的にメンバーを勝たせるのはマネジャーの大事な仕事の1つですので、そこはマネジャーがフォローすべきであるということになります。この前提が崩れると、当然ながらメンバーとしては正しい情報を上げるインセンティブは失われてしまいます。

多くの会社であるのが、失注に関してはきちんと報告させるけれども、受注に関しての報告は失注よりも軽い報告であるか、もしくは詳細の報告は求められないというケースです。

例えば失注した場合は、いくつかあるカテゴリから選び、なぜ失注してしまったのか、再発防止策はどうするかをきちんと書かせる一方で、受注についてはその欄が存在しないという会社がかなり多いです。

このようになると、せっかく受注に至るまで活動していたにも関わらず、失注してから「何をやっているんだ」という話になりやすいです。これもやはり失注の情報を正しく上げない方向に向かってしまいます。これは皮肉なことですが、マネジャーが失注の情報をきちんと集めようとすればするほど、メンバーは失注の情報をきちんと上げないように頑張るというイタチごっこが繰り返されます。そうなると、あてにならない情報がひたすら溜まっていくということになります。

まずは「情報の入力構造」を揃えよう

では、どうしたらよいかということですが、まず情報の入力構造においては、失注の方も受注の方も同じ構造にしておくことをおすすめします。具体的には4つの種類の情報カテゴリーを設けます。

  • ①受注も失注も、選択式で理由や要因について選んでもらうもの
  • ②具体的な場面や状況の詳細を自由記入形式で書いてもらうもの

これが受注側、失注側それぞれにあると2×2で4種類の情報項目ということになります。

これを入れていくと、まず受注が情報として失注と同じレベルで詳しく入ることになります。受注がメンバーの手柄であるとなったときに、具体的にどこをどういうふうに褒めてあげたらよいのかという材料が、やはり受注報告の詳しさにかかってくるわけです。

一番肝心なポイントは、受注に至ったカギとなる要因が記載されていることです。

例えば、「お客様が提案に満足されたので」というようなことが受注理由に書かれていたとします。この情報を見て再現性を上げろと言われても、できません。

一方で、「何月何日のこのミーティングで、こちらのテストプレゼンに対してお客様が良いと言ってくださった」というところまで書いてあれば、まずその日の資料を見ることができます。営業と「これのどこが響いたの?」という会話に必ずなるはずです。

更に、「この営業のこれこれという発言に対して取締役の◯◯様がこういうコメントをくださった」というレベルまで書いてあったら、それは非常に有益な情報です。そしてそれは同時にマネジャーがメンバーを褒めるときの非常に具体的な根拠となりますし、再現性を上げることにも繋がっていきます。

情報のカテゴリーは定期的に見直そう

弊社でも受注報告はみんな詳しく書いています。接戦の受注のうち、まだ100%までは行かないものの8割ぐらいは「何月何日の何時ぐらいにどういう場面で決まったのか」ということが書いてあります。

弊社代表の高橋は3ヶ月に1回はそれを見直すようにして、ちゃんとやっていることが正しいかどうか、勝ちパターンが徹底されているかどうかということを確かめつつ、どこをバージョンアップするべきかということを考えていく貴重な材料にしています。

失注報告も同じレベルで情報を入れるということが原則になっているのですが、「お客様と連絡が取れなくなった」というパターンが一定割合存在します。そのため、失注の場合は10件あったうち、詳しく情報が入る割合というのは半分以下くらいになります。しかし、そのうちの例えば仮に2割に情報があるだけでも、そこにかなり詳細な情報が入っていれば、それは経営的にはすごく助かる情報です。

失注の場合はどちらかというと、カテゴリーの分類が非常に大きな意味を持ちます。これはおそらく多くの会社で行われていることと同じですが、その失注の種類を分類していって、同じような失注が再発しないようにするということになります。

失注に関して大事なポイントは、カテゴリーを定期的に見直していくということです。これは多くの会社がしていません。例えば「お客様に全く響かなかった」というデータがあったとします。その要因をなくしていこうとなったら、まずターゲティングの問題や、初期段階で価格がどのくらいかを伝えて機会損失をなくすなど、いろいろな対策を取っていくと、そういう失注は段々減っていくはずです。

その代わり別の要因の課題が出てきますので、ある程度失注のカテゴリーは機動的に、その時々で解消したい失注に焦点が当たるように、ちょっとしたアレンジをする必要が出てきます。そのため、1年経っても全く同じカテゴリーで運用するというよりは、「今はこの要因を潰し込んでいこう」というように対策を立ててカテゴリーを修正し、その結果しっかりとその要因が解消されているかどうかを確認していくと、自然と必要な客観的な情報を入れざるを得なくなっていきます。

この土台となるのは「失注はメンバーの責任でなくマネジャーの責任である」そして「受注はメンバーの手柄である」という世界観をどれだけ純粋に体現できるかどうかです。この前提がないと、やはりメンバーは責められたくないですから、失注の情報はあまり出したくないと慎重になるのです。

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