オンボーディングのカギは「設計」にある
新しく営業が入社した場合、まずは育成をし、その後にオンボーディングをする必要があります。
オンボーディングにおいて最も重要なのは「設計」です。具体的には以下の3点を俯瞰できる「1枚図」を作成すると効果的です。
- 戦力化までのマイルストーン
- 割り当てるお客様リスト
- 必要なマインド・知識・スキル

ただし、この1枚図を作成する際には注意すべき「落とし穴」があります。
まず、最も避けるべきは「戦力化を早めようと焦ること」です。5,073人の営業を対象に調査をしたところ、目標未達の常連チームには「戦力化までの期間を短く見積もりすぎている」という傾向が見られました。
戦力化までの期間は「徐々に短くしていく」べきものであり、いきなり「早期戦力化を望む」と設計に無理が生じやすくなります。

その上で、注意すべき落とし穴があります。以下は「1枚図」を作成する際に注意すべき「5つの落とし穴」です。
落とし穴①:入社時教育に詰め込みすぎ
戦力化を焦ってしまうと、入社直後に多くのことを教えすぎてしまう傾向があります。しかし、人の理解力やキャパシティには限界があるため、大量の情報を一度に教えられても理解しきれません。また、実務経験を積む前に教わってもピンとこない内容もあります。

落とし穴②:入口が難しすぎる
入社したばかりの新入社員にいきなり新規開拓を任せるのはよくありがちです。しかし、「箸にも棒にもかからない案件ばかりで、上手くいくイメージが全く持てない状態」を放置してしまうことがあります。成長のスピードを上げるには「接戦案件」の経験が不可欠です。

落とし穴③:スモールステップがない
「最初は先輩の商談に同行してサポートをしてね」と言われ、1週間後には「これからは一人で新規開拓をやってね」と突き放されてしまうと、ハードルが高すぎてつまずいてしまいます。このような大きな壁を乗り越えられるのは、限られたトップパフォーマーだけです。

落とし穴④:目安も途方もない道のり
新人営業は不安を抱えながら1年目を過ごします。常に「自分の成長ペースはこれで良いのか」という思いがあります。「この時期にはこのレベルに達していることが望ましい」という明確な指標がないと、不安が大きくなりすぎてしまうことがあります。

落とし穴⑤:教育プログラムが揃っていない
事業トップが優秀すぎる場合、「そんなに懇切丁寧に教える必要があるのか?」となりがちです。しかし、新人が直面する典型的な課題が見えているのであれば、それに対処する教育プログラムを作るべきです。新人が同じ壁で繰り返しつまずき続ける状況は避けましょう。

ここまで述べてきた「落とし穴」を避け、オンボーディングを成功へ導くために重要な3つのポイントは以下の通りです。
コツ①:「関所」を明確にする
「1つ目の関所をクリアするまではそこに集中する」という状態を作ることが重要です。具体的には以下のような段階的な目標設定が効果的です。
- 第1の関所:初受注の達成
- 第2の関所:単月での目標達成
- 第3の関所:3か月連続での目標達成

コツ②:目安はあくまで「目安」
マイルストーンは成長ペースを把握する上で参考になりますが、それを絶対視すると危険です。人によって成長のペースは異なります。もちろん、大器晩成型の営業もいます。そのため、「このペースを参考にしてほしいけど、焦りすぎないようにね」と伝えてあげるようにしましょう。

コツ③:進捗段階とプログラムを合わせる
成長段階に合わせて、「これが出来るようになったら、次はこれを学ぶ」というように教育プログラムを段階的に設計しましょう。人は一度に詰め込んでも覚えきれませんが、段階的に身につけることはできます。「入社直後しか教育しない」ということだと、この状態は作れません。

まずは「ロードマップ」を作ろう
オンボーディングの仕方は企業によって様々ですが、端的に言えば、新しく入社したメンバーや異動してきたメンバーの育成・戦力化ということになります。この新しいメンバーを戦力化するカギとして弊社がよくお伝えしているのが「設計の重要性」です。
「設計」とは「一人前になるまでのロードマップ」です。「どのように成長していけば順調な成長と言えるのか」「そこに到達するための支援にはどのようなものがあるのか」といった要素が具体的なプロセスやスケジュールとなったものです。これらがしっかりと可視化されることによって、育成の成果が大きく変わってくるのです。
その中で何が難しいかというと、新入社員(新卒・中途を問わず)や異動して新しく営業部門に配属された方々への育成です。
営業の初心者に何を教えるべきか、あるいは営業経験はあるものの自社での経験がない方に何をトレーニングすべきかを考えること自体は、そこまで難しくありません。というのも、大体どの企業にも、いわゆる初期教育ツールのようなものが存在しているからです。その充実度には違いがありますが、多くの会社では基本的な教育の仕組みは整備されています。
では、育成の成果を分けるポイントはどこにあるかと言えば、営業を始めてある程度時間が経過した段階における支援のあり方にあります。
入社時などの初期段階では非常に充実した教育を実施するにも関わらず、ある程度時間が経過すると教育を一切しないという会社は少なくありません。むしろ、そのような会社の方が多いかもしれません。
つまり、初期教育を終えた後は「自己責任」という姿勢の会社が多いのです。これは「育成はOJTをメインで行っています」という言葉で表現されることが多いのですが、よく考えてみるとそれは「教育をしていない」ということです。
重要なのは「初期教育を終えた後」
営業を始めたばかりの時期に成果が上がらないから支援や教育が必要なのであれば、ある程度時間が経過した後でも成果が上がらないのであれば同様に支援や教育をした方が良い結果に繋がるはずです。しかし、初期教育を終えた後の支援や教育は手薄になってしまう傾向があるのです。
この状況には、大きく2つの要因があります。1つ目は、成長度合いにばらつきがあることです。
営業ではある程度順調に成長していく人もいれば、なかなか成果が出ない方もいます。順調に成果を出している人がいる場合、「やればできるはず」という考えが生まれ、成果が出ていない人への支援や教育が正当化されにくくなります。つまり、「周りから支援する必要はない」という判断になってしまうのです。
そして2つ目は、担当者がいないことです。これは、初期教育の担当者は明確に決められているものの、ある程度経験を積んだ人の支援や教育を担当する人が組織内にいないということです。
たとえ経験を積んだとしても、成果を出せない場合に何も手を打たないのであれば結果が出ないのは当然です。しかし、先ほど述べた2つの要因によってこの問題がなかなか解消されないのです。
オンボーディングのカギは「見える化」にある
「経験を積んだ後」の支援や教育が適切に機能するかどうかによって、オンボーディングの成否が決まります。このように考えると、オンボーディングとは入社直後や初期段階だけを指すのではなく、本来は戦力化するまでの期間全体を対象とすべきものです。しかし、多くの企業ではその期間の定義が難しいという理由で、なかなか具体的な取り組みに着手できていない状況にあります。
では、最初に何から始めるべきかということですが、おすすめなのは「履歴を取っておく」ということです。履歴とは、例えば新入社員であれ中途社員であれ、営業を始めた人が最初の3ヶ月間、半年間、1年間でどのような状況だったかについての記録です。SFAなどを適切に活用していればそういった記録は全て残るはずですが、営業のプロセスが適切に可視化されていなければデータとして全く残りません。そうなると、育成の生産性も上がりません。
一方で、そのような記録がしっかり取れてくると、進捗の目安を設定することができます。この目安は非常に重要で、例えば「3ヶ月が経過した時点でどのような状態であれば順調に成長していると言えるのか」という基準があるかないかで、育成のやりやすさが大きく変わるのです。
この「見える化」をどのように行うかについては、意見が分かれることが多いです。例えば、ある人材について「もう一人前である」という評価と「まだまだである」という評価が混在する場合、組織内での合意形成が難しくなります。
このような状況においては、スキルマップのようなツールがあると非常に有効です。スキルマップは横軸と縦軸で構成されます。一方の軸は成長段階を表し、営業の経験が全くない初期レベルから始まり、徐々に熟練度が増して、最終的にエースやハイパフォーマーのレベルにまで到達する過程を示します。もう一方の軸は必要とされるマインドセットや知識、スキルの全体像を表します。
このようなツールがたとえ簡易なものであっても存在することで、目標や進捗を議論する際の共通言語が生まれます。例えば、営業スキルをレベル0からレベル7までの段階で表現した場合、「入社1年で現在レベル3」というような具体的な評価が可能になります。スキルマップがない場合、評価は個人の主観的な判断になってしまい、「もう一人前と言えるのではないか」「いや、まだまだだ」といった主観同士の意見の対立に終始してしまう傾向があります。
組織として「継続的な教育体制」を作ろう
ここまで述べたような状態を実現するには一定のリソースが必要になります。具体的には、言語化をする担当者が必要となるのです。そのリソースを確保できるかどうかが重要なポイントであり、リソースを確保できれば様々な取り組みが進展していきます。
そのためオンボーディングやセールスイネーブルメントは、そのリソースを確保できるかどうかによって成否が決まると言われがちです。しかし、その基となる材料は現在、様々な形で入手することができます。例えばスキルマップなどは誰かが作成した著作物として存在しているわけですから、それを参考にしながら作り上げていくというのも1つの方法です。
新しいメンバーを戦力化する際、どの組織も最初期の教育は実施するものの、ある程度時間が経過すると途端に育成を疎かにしてしまう傾向があります。しかし、成長のペースにはばらつきがあるため、そのような時期にこそ適切な支援が必要です。
その成長のペースが順調と言えるのかどうかを判断する際、明確な目安があれば育成がしやすくなります。例えば、スキルマップのようにある程度客観的な指標が存在すれば、より望ましい育成が可能になります。
これらの仕組みは一度作って終わりではなく、定期的にアップデートしていくことが望ましいです。例えば5年前に作成したものが現在でも通用するかというと、必ずしもそうではありません。世の中の変化のスピードは加速しており、同じレベルに到達するまでの時間も変化しているはずです。従って、スキルマップのようなツールは一定期間ごとに更新するのが望ましいです。そのアップデートをする担当者がいれば、大きな問題は発生しにくいです。
冒頭で述べた通り、オンボーディングにおいては「設計」が重要です。「設計」の質を上げることで、強い営業組織を作ることができるのです。





