テストクロージングは「タイミング」が命
「お客様の温度感がわからない」「買ってくれるか不安で値引きしてしまう」こういった悩みに共通する原因は、購買意欲を確認する手順がつかめていないことです。見積を見せてから「どうですか?」と尋ねるのではなく、見積提示前に確認する必要があります。テストクロージングは「タイミング」が命です。

つまづきがちな営業によく起こるのは「価格を見てみないと何とも言えないですね」というお客様のコメントに「では価格ですが…」と、すぐお金の話に移ってしまうパターンです。これですと、お客様の購買意欲が十分に高まっていないので、「安くする」以外に買ってもらう手段がなくなってしまいます。
お客様は「とにかく安いかどうか」より「費用対効果の納得感」で決めます。ただし、「効果」を何によって測るかについては、商品説明を聞いてもまだ明確になっていないお客様が多いです。したがって「効果」については、営業がある程度リードしないと、お客様もどう判断したらよいかわかりません。

「見積を見るとき、判断基準が決まりきっていない状態で検討した」経験のあるお客様は75%を超えています。そのような状態のお客様に「では金額ですが…」と見積提示をしたらどうなるでしょうか?それは「価格」に目が行くに決まっています。この段階では、まだ見積提示に行かず、判断基準を明確にする議論をすべきです。

価格以外の基準が上位にくるかどうかは営業の腕次第です。「商品」「料金設定」のせいにすると受注率が上がりません。以前、営業に苦しむある会社の失注原因を見たら「4割がスペック不足、3割が価格」になっていました。同じ顧客層に難なく売っている営業も社内にいるのに、その事実に目が向けられていませんでした。

「価格以外の判断基準」を育てない限り、価格が原因の失注報告は減りません。
では、多くの営業がそこに気づかないのはなぜでしょうか?
お客様は断る際、「建前」と「本音」があります。調査集計すると「費用対効果に納得がいかなかった」は、建前を本音が上回っています。すなわち、営業には明かされないことが多いのです。

「価格以外の判断基準」を議論するチャンスは見積提示前のタイミングです。見積を見せてしまうとお客様も思わず目が行きます。「安いほうがいい」と思うし、そう口に出します。しかしそれは「=価格だけで決める」ではありません。ここに気づいている営業は、見積提示前にテストクロージングし、高い価格でも売れているのです。
重要なのは「今この場に時間を使っている理由」
テストクロージングとは「お客様に最終的な決断をいただく最後のクロージングの手前の段階で、お客様の購買に関する意思確認をすること」です。
この意思確認をする際、基本的に「お金を見てみないと何とも言えない」というお客様に対してそのままクロージングをしていこうとすると、結局価格が理由で断られたり、値引きの要請が来たりすることがよくあります。弊社のおすすめは、見積もりやお金の話をする前の段階でお客様に実際に購入する意思があるのかどうかを確かめることです。
なぜ見積もり提示の前なのかというと、弊社が実施した「お客様1万人調査」の結果、「見積もりを見る前に決めたことがある」という回答が「新規」のお客様だけでも4割以上、「既存」のお客様を合わせると8割ぐらい得られています。つまり、見積もりを見ていただく前に購入意思を確認するというのは、非現実的な目標ではないということです。
お金以外のところで買っていただくとすれば、その納得ポイントを作ることになりますが、問題は見積もり前のところでまだ決断されていないときに、どうやって購買意欲を醸成するか、買いたいと思っていただくかということです。
ここで商品の特徴などを長々と説明しても、お客様からすれば「何か売り込まれている」という印象になってしまい、前向きに購入を検討しにくくなります。そこでおすすめなのは、「お客様が今この場に時間を使っている理由」に焦点を当てることです。
お客様がこの場に時間を使っているということは、何かしらやりたいことや目指していることがあって、それに対してまだうまく解決できていないことがあり、その解決に向けた良い手段が見つかっていないということです。つまり、お客様のニーズが満たされていないわけです。もしお客様のニーズが既に満たされているなら、わざわざ商談に時間を割くことはないでしょう。
注力すべきは「課題の正体を明らかにすること」
多くの営業は、課題を聞いてその課題を解決するものを提示するという方向にエネルギーを割きがちですが、実際は課題を聞いて解決策を提示する前に、もっと課題の正体を明らかにする方にエネルギーを割いた方が、お客様にとって受け入れやすいというのがポイントになります。
課題を聞いたらその課題に対して「こういうふうに解決できます」とか「お役に立てます」という方向に力を入れがちですが、その時点ではお客様はその課題に対していろいろ試したり探したりしていても、しっくりくるものがまだ見つかっていないのです。そのような状態でさらに解決策をあれこれと説明されると、判断がつきにくくなってしまいます。
注力すべきところは、課題の正体を明らかにすることです。「本当にお客様が課題だと思っていることは何か」「それは正しい課題設定なのか」というところから始めて、それを疑ってかかることが大切です。よく「なぜなぜ5回」という言葉が言われますが、「なぜ」を繰り返して深掘りしていくと真の原因が見えてくるのです。実際に5回「なぜ」を繰り返す必要はないですが、本当にお客様が課題だと思っていることが解決すべき課題なのかを健全に疑うことは、購買意欲の醸成に役立ちます。
人は課題を再認識したときに、発見による感動を覚えるものです。「そうか、本当はこれが課題だったんだ!」と気づいたときに、前向きな感情が湧き起こってくるのです。これは、他人から解決策の説明を受けて「それは革新的だ」と感動するよりも大きな感動です。課題に焦点を当てて、課題を再認識してもらう方が成功する再現性が高いです。
アインシュタインの残した有名な言葉に「私は地球を救うために1時間の時間を与えられたとしたら、59分を問題の定義に使い、1分を解決策の策定に使うだろう」というものがありますが、「本当にそれが解決すべき課題なのか?」を疑うことが重要です。
テストクロージングにおいて、解決策の正しさや合理性をアピールしても、お客様は簡単に「はい、買います」とは言いません。そうした場合は、本当のお客様の課題は何なのかを一緒に考え直すことが、購買意欲の醸成に繋がります。
「本当の課題」を理解することから始めよう
お客様がまだ買う気になれない、確信が持てないという場合、それは自分なりに試行錯誤してもうまくいかなかったり、探してみても良いものが見つからなかったりした経験があるからです。そこに新しい会社が現れて「魔法のように解決します」と言っても、素直に信じることは難しいでしょう。
一番は、お客様の既存の認識の中にある課題をどうやって再認識していただくか、新たな発見を起こすかということです。具体的には、その課題について「本当のボトルネックは何なのか?」という角度からの質問をぶつけてみることがおすすめです。
例えば、売上が伸び悩んでいるという課題があるとします。新規の売上が伸び悩んでいるなら、リードを増やす方法などを提案することもできますが、「売上を増やそうとしたときの本当のボトルネックは何ですか?」と質問してみると、新たな視点が見えてくるかもしれません。
「決裁者とのアポイントはあるが、決裁者に響くポイントが作れていなかった」という場合、決裁者とのアポイントを増やす投資をしても効率が悪いでしょう。また、「決裁者が何を求めていて、何に困っているかがつかめていない」という情報不足の問題かもしれません。
このように掘り下げていくと、「何が本当の課題なのか」という議論になります。忙しい日常の中でこういったことをじっくりと考える機会は少ないものです。皆さんも時間を取って自分が抱えている課題に対して「本当の課題は何だろうか?」と考えてみる時間を持ってみてください。弊社代表の高橋は週に一度、時間のある日にじっくりと考える時間を取っていますが、これは非常に発見が多い時間で、その後に物事が前向きに進み始めることが多いと言います。
このような時間や体験を作り出せる営業は、お客様から非常に頼りにされる存在になるでしょう。ただし、これを実践するには、商品の良さや特徴をアピールするだけでなく、本当にお客様の課題に対して理解を深めることが重要です。
よく「うちの会社はお客様を理解することができない」というご相談をいただきますが、そもそもお客様を理解することを重要なものとして位置づけ、そこにエネルギーを割いているかどうかが問われています。
テストクロージングに話を戻しますと、追加のアピールや値下げが絶対的に悪いわけではありませんが、まずは「お客様の課題自体がはっきりしていない状態で前に進めているのではないか?」ということを疑ってみるのは、1つの有効なアプローチです。





