お客様から求められるのは「動ける営業」
営業組織でよく「ソリューション営業をやれ!」と号令がかかりますが、実はそもそも「事業課題についてうまく考えられない」ということよりも手前の段階で悩みを抱えているのがお客様の実態です。組織内での認識のズレや忙しさ、部署間の軋轢といった「検討課題」へ対処しないと、事業課題の解決には及びません。

また、「過度な売り込みにならないよう行動を控える」営業もいますが、お客様からすると「売り込まれる不快感」より「情報の海に溺れる辛さ」が大いに上回ります。もちろんお客様を不快にさせる押し売り営業はよくありませんが、お客様が情報収集できない現状はなんとかする必要があります。

困っているお客様から求められるのは「動ける営業」です。「動ける営業」といっても、特に上位にくるのは「レスポンス」「的確な情報」「コミュニケーション効率」です。よくあるデモや情報整理、作戦会議よりも「行動」が求められます。「ただ待っている営業」や「煽ってくる営業」はワースト2の回答です。

よく言われる「ソリューション営業」の定義は「お客様の課題やニーズを深く理解し、単なる商品・サービスの紹介にとどまらず、解決策(ソリューション)を組み立てて提案する営業」ですが、実はこれだけではお客様の課題を解決する営業にはなれません。お客様の課題を解決する営業になるには、お客様の購買活動の実態を踏まえてお役に立つ必要があります。
真の課題解決営業は「お客様の課題解決に向けて、確かな前進と希望を共に創り出す営業」です。机上の空論の課題解決アイデアは求められていません。「情報を集めることができない」「検討の動作がとれない」「組織の問題で行き詰まる」といった難所をお客様と共に越えられるかどうかが問われています。
お客様の「検討課題」に意識を向けよう
「お客様は本当に課題解決のアイデアを求めているのか」というと、そうではありません。
もちろん、会社経営においては意思決定をする際に様々な難しさがあります。なかなか思い描いているような方向性に行けないこともあります。
そうすると、当然課題解決ということは大事です。しかし、内部の人ですら解決できないような課題をいきなり外部の人が簡単に解決できるのかというと、それはなかなか難しいです。そもそも、外部の人がパッと話を聞いてパッと解決できるのであれば、お客様もそれほど悩みません。
だからこそ当社は先ほど述べたようにソリューション営業の定義を「お客様の課題解決に向けて、確かな前進と希望を共に創り出す営業」と考えているのです。
この「確かな前進」というのがポイントで、実は大半のお客様は課題解決に向けて「ほとんど前進できていない」と感じていることが多いのです。
「もう何もできない」「どうすることもできない」という無力感を感じている。それが、多くのお客様が直面している現実です。
なぜそれが上手くいかないのかというと、大半は課題解決をする前段階の「検討課題」が多いからです。組織の中で認識のずれがあったり、そもそも「課題解決をしよう」となっても予算やスケジュールが合わなかったりすることがあるのです。課題そのものももちろん大きいですが、それ以上に解決しようとしている課題以外の「検討課題」があまりにも巨大すぎるという現実があるのです。
そこに「私どもの商品で御社の課題を解決します」という提案をされて、果たしてお客様の顔が明るくなるでしょうか。
営業であれば、本当にお客様から喜ばれる、役に立つ存在でありたいものです。しかし、なんとなく口先で「こうすれば解決しますよ」と言われても、営業が見えていない「巨大な検討課題」に直面しているお客様からすれば「それほど役に立たないのではないか」と思えるのです。
ポイントは「具体的にお客様のお役に立つこと」
では、今回のテーマである「行動型」というのは具体的に何を意味しているのでしょうか。
まず、お客様がいざ「解決策を実行しよう」「業者を選ぼう」となった時につまずきやすいのは、予算やスケジュールといった現実的なところが多いです。
そのため、そもそも予算やスケジュールといった現実的なところで詰まっているお客様と課題解決のプロセスを伴走できるかどうかが非常に重要になるのです。
そもそも、お客様はどのようにして課題を認識するのでしょうか。
一番多い答えは「現場からボトムアップで上がってくる」というものです。
しかし、その「現場からボトムアップで上がってくる」というケースも4分の1ぐらいで、残りの4分の3は全く違うケースです。「トップダウンで言われる」というのもありますし、あるいは「環境の変化からやらなくてはならない」というのもあります。
そのようにして、「課題の発生のルート」というのは様々です。その中でもお客様が難しさを感じるのが「そもそも正しい情報というのはどこにあるのか」という問題です。
課題の解決にあたって「情報収集の段階」にきたお客様が情報の海に溺れてしまうのです。
そこに、お客様が課題を解決するにあたっての難しさがあります。しかしそれは、営業からすると「お客様のお役に立てるポイント」なのです。
各社が情報発信を一生懸命やればやるほど、お客様は情報の海に溺れてしまいます。そのため、そのお客様が本当にほしい情報を、ほしい形で提供するということは非常に必要とされています。
しかし、それには一定の難易度が伴います。では、どのようにしてお客様の情報収集をサポートすればいいのでしょうか。
お客様を「リアルに」サポートしよう
まず、お客様は「情報の真偽に確信を持てない」ということが多いです。
そのため、情報の真偽を見極められるような営業はお客様から非常に求められます。
当社が実施した2,676人のお客様を対象とした定量調査の中で、「あなたにとって、『関係ができている営業担当者』とはどういう存在ですか」ということについて聞きました。その選択肢の中に「『利益だけを優先せずに顧客のために行動してくれる』と思える」という項目を入れておきました。一般的には関係ができる営業というと「気軽にコミュニケーションが取れる存在」といったものを思い浮かべるかもしれませんが、それよりも、「『利益だけを優先せずに顧客のために行動してくれる』と思える」という項目がより上位に来たのです。

つまり、必ずしも「気軽にたやすく話せる営業=関係ができている営業」なのではないということです。ちゃんとお客様がメリットを見出せる存在だと思えるかどうかが大事だということです。
さらに注目すべき点があります。「『利益だけを優先せずに顧客のために行動してくれる』と思える」というのは、いわゆる「顧客志向」と言われる営業の世界では「絶対的正義」とまで考えられているような概念です。それよりもさらに上位に「『専門知識を持っており、正確なアドバイスをくれる』と思える」という項目が来たのです。
つまり、「情報の海の中でどのように判断したらいいのか」「なにをどのように考えたらいいのか」「予算やスケジュールが限られていて検討が進まない」といった状況の中で、的確に情報を指し示してくれる営業というのはお客様にとってものすごくありがたい存在なのです。
カギは「前進している感覚」
しかし、ちゃんと正しい情報を見極めてアドバイスができたとしても、お客様はレスポンスや段階的にコミュニケーションを深めてくれることも求めています。
それを踏まえると、お客様が求める営業というのは「お客様のことを段階的に理解しながら、組織の各関係者を押さえ、予算やスケジュールというような難しい制約条件を乗り越えることをリアルに助けてくれる営業」だと言えます。
「ソリューション営業」と言っても、自社の商品でお客様の課題解決に向けた提案をするだけでは足りません。お客様にとってその次元の課題というのは全体の悩みのごくわずかな部分であり、大半の課題はそれ以外のところにあるからです。
お客様にはビジネス上で直面している「事業課題」に対して、「充分に検討ができない」という「検討課題」があり、その「検討課題」が非常に大きな割合を占めています。そこに対して「こうしたらいいですよ」と言うのではなく、迅速なレスポンスや効率的なやり取りをすることで具体的にお客様のお役に立つ。これが、お客様から求められるソリューション営業だということです。
「専門知識に基づいて的確なアドバイスができる」というのは、考える能力も求められるためハードルは高いです。
しかしそれ以上に、「レスポンスの早さ」「段階的にお客様の理解を深め、社内を動かす」「予算やスケジュールの問題に対処する」といった行動面で求められるハードルは高いです。こういったところを具体的に前進させられることを含めて「ソリューション営業の新常識は行動型」と言えるのです。
一般的にソリューション営業というのは「お客様の課題やニーズを深く理解し、単なる商品・サービスの紹介にとどまらず、解決策(ソリューション)を組み立てて提案する営業」ものと思われがちです。
しかし、それによって本当にお客様をご支援できるかというと、なかなか難しいです。だからこそ、「事業課題」だけでなく「検討課題」もサポートすることが求められるのです。
「検討課題」においてまずお客様に「前進している感覚」を感じていただけるかどうかがカギとなります。このような「行動型」がソリューション営業として求められる姿であると言えるのです。