提案でカギを握るのは要件整理
営業提案における現場担当者の重視ポイントは以下の通りです。
- ①悩みや課題が的確に整理されているか
- ②悩みや課題に提案がマッチしているか
- ③費用対効果がわかりやすいか
一方、決裁者が提案書を見る際のポイントは、上位3項目は担当者と同様ですが、「費用対効果」が最重要項目となります。また、「価格の安さ」への注目度が担当者と比較して高くなります。これは決裁者という立場上、コスト面への配慮が必要なためです。
このような状況を踏まえ、提案を成功させるためには以下の2点が重要です。
- ①相手が担当者でも決裁者でも課題や悩みを整理し、提案とのマッチ度を示すこと
- ②費用面での却下を避けるため、早期に担当者の協力を得て、費用対効果の判断基準を把握しておくこと
弊社が実施した「お客様1万人調査」では、お客様が費用対効果の判断基準について重視される上位4項目は以下の通りでした。
- 売上アップやコストダウン
- 会社の成長イメージが描けること
- ビジョンやパーパスの実現
- メンバーの心理的負担やストレスの軽減
そこで、要件整理で費用対効果を1ヶ所にまとめて記載することが重要です。要件整理のポイントは以下の3点です。
- 網羅感
- 具体化
- 優先順位
これらをお客様と擦り合わせることで、提案への納得感が高まります。
要件整理の効果は以下の通りです。
- ①価格面での効果:顧客の約80%が想定予算以上での購入経験があり、その判断基準が価格決定に影響を与えている
- ②商談期間への効果:約8割の顧客が正式見積前に発注の意思決定をしており、適切な要件整理により、早期の意思決定を促すことが可能
要件整理スキルは、「課題や悩みが明確でない顧客」を想定したロールプレイ練習により、着実に向上させることができます。これは投資対効果の高いトレーニング方法として推奨されます。
網羅感・具体化・優先順位を整理しよう
受注率を上げたい、単価を上げたい、そしてリードタイム(受注までにかかる時間)を短縮したいというご相談は多いです。
その中で特にインパクトが大きいのが要件整理です。なぜこれが有効かという点に立ち返ってみますと、お客様にとってお金を使って何かを購入するというのは、かなり勇気のいる決断だからです。もちろん、潤沢な資金があり、購買行為にも慣れているお客様も一部いらっしゃいますが、大半のお客様は慎重になります。この投資が失敗したらどうしようという不安を感じながら、思い切って意思決定をすることになります。
そのような中で、お客様自身が何が自分たちの課題なのか、何を実現したいのかをはっきりと思い描いているわけではなく、何となくやりたいことがある、困っていることがあるという状態が多いのです。それをしっかりと整理するところに、非常に大きな付加価値が発生します。
要件整理をする際には、網羅感・具体化・優先順位という3つの観点で整理することをおすすめしています。まず相手の心理に立ったときに、なぜこの3つなのかを理解しておくことは非常に重要です。
網羅感
まず網羅感についてですが、お金を使うときは誰しも慎重になります。一度使うと決めてしまうと戻れませんから、後悔のない意思決定をしたい、あるいは組織としてお金を使うときには、全員の合意を気持ちよく得たいという思いがあります。そこでお客様が一番恐れるのは見落としです。検討するべきことが漏れてしまうことを懸念されるのです。
営業の方がよくお客様に投げかける質問でよくあるものの、あまり効果を発揮していない質問があります。それは、ある程度お客様のニーズや課題を洗い出した後に「他に重要視されている点はありませんか」というような問いかけです。これは間違った質問ではなく正しい質問なのですが、効果的かと言われると疑問が残ります。
なぜなら、その時点で思いつくようなことであれば、既に話し合いの中で出てきているはずだからです。例えば、ある程度営業と話をしてニーズや課題が出てきた後に「他に何か大事なことはありませんか」と改めて聞かれても、すぐに思いつくようなことであれば、既に前の会話で話しているはずです。
そこで、仮説を立てて「こういうことも考えた方がいいのではないでしょうか」とお伝えするわけですが、その伝え方が重要です。うまくできないと「的外れなことを考えている」と思われてしまう可能性があります。
おすすめする方法は、「よく似たようなご相談をいただく他の会社様では、こういったことをおっしゃることが多いのですが、今日の場ではまだお伺いしていません。それについてはいかがでしょうか」という質問です。これなら非常にマイルドで、仮に的外れだったとしても「うちの場合は少し違います」とお客様は気軽に修正することができます。網羅感がしっかり担保できると、お客様の見落としへの不安が軽減され、心強く感じていただけます。
具体化
2つ目の観点である具体化についてですが、お客様は欲しいものを詳しくイメージできていない場合が多くあります。例えば「業務効率を改善したい」というときに、「これで皆さんの作業時間が3割減らせます」と言われたとします。3割減らせるということは、「30人の組織の人件費に換算するとこれくらいの効果がある」という計算はできるかもしれません。しかし、具体的に何の作業が、どのように削減できるのかという点が重要です。これが具体化という観点です。これがはっきりしないと、購入の決断がつきにくくなります。
そのため営業の方から「もう少し詳しくお伺いできますか」といった形で聞きながら、お客様と一緒に具体化していくことが重要です。
優先順位
3つ目の観点が優先順位です。これは2つのうちどちらを優先するかという話ですが、営業の方がよく聞く質問で効果が低いものに「一番大事なことは何ですか」があります。お客様は大体一番大事なことは分かっているのですが、肝心なのはその次に来る要素間のトレードオフをうまく整理できないことです。
予算が潤沢にあれば、サービスが充実している会社の最上位プランを選ぶことができるかもしれません。しかし、大半のケースでは予算に制限があります。そうすると、予算の都合である程度内容を絞らなければなりません。ただし、人は何かを諦めることには抵抗があります。
弊社代表の高橋は営業側に立ったとき、よく「当社も魔法使いではありませんので」という前置きを使います。これは、全てを理想的な形で安価に提供することには物理的な限界があることを予めお伝えするためです。その上で選択していただくのです。
このとき、「一番大事なことは何ですか」という質問はよくされますが、2番目、3番目となってくると、優先順位を付けるのが難しくなってきます。そこでおすすめの聞き方は「AとBではどちらがよろしいですか」というように2択で聞くことです。このとき「両方ともお願いします」という返答が来ることもありますが、それに対する布石として先ほどの「魔法使いではありません」という話をしているわけです。
また、「もし自分がお客様の立場だったら、こちらを選びます」という答えを用意しておくことも重要です。決めかねているお客様に「プロのアドバイスをお願いします」と言われた時のためです。
この網羅感・具体化・優先順位という3つの観点が、なぜ受注率・単価・リードタイムの改善につながるのか、これはお伝えした通りです。特に営業の中でも、この点がうまく扱える人とそうでない人がいますが、これは言語を使うスキルですので、後からトレーニングすることができます。そのため、難しく感じられた場合は練習や、会社としてはトレーニングという形で引き上げることができるスキルであるということを最後に補足させていただきます。





