提案書作成では「勘所」を押さえよう
マネジャーが見過ごしがちながら実は重要なテーマに、「提案書作成における『無駄』をどう削るか」があります。弊社の「営業1万人調査」では、ローパフォーマー(目標未達の営業)は時間をかけて資料を作成し、お客様の要望に細かく合わせようとする傾向があるという結果が出ました。それとは対照的に、ハイパフォーマー(目標達成する営業)は資料作成に時間をかけない傾向があります。

ハイパフォーマーは「対応力」で差をつける一方で、ローパフォーマーは「傾聴と資料作成」で勝負します。ローパフォーマーは不真面目なわけではなく、真面目であるが力の入れどころを間違えていることが多いです。これはマネジャーが介入して軌道修正する必要があります。

ハイパフォーマーはお客様の細かい要望に一々答えるよりも、「お客様が本来やりたいことは何か?」を把握し、それを他社との差別化を図りながら、複数のシナリオに落とし込んで提案します。たくさんの資料を作成するよりも、勘所を押さえることが重要です。

提案書はお客様と意思疎通する「道具」
「お客様1万人調査」で「提案書をどの程度読むか」を聞いたところ、「見積もり金額程度しか見ない」と答えた方はわずか2.9%でした。ほとんどのお客様は提案書を半分以上、あるいはほぼ全て目を通すと答えています。この結果を見ると、提案書はやはり重要だと考えられるかもしれませんが、重要なのは「提案書をもとにお客様と効果的なコミュニケーションをすること」です。
弊社代表の高橋は新卒でコンサルティング会社に入社しました。コンサルティング業界はパワーポイントの資料に対して厳しい赤入れが入る業界で、非常に細かい部分までチェックがあります。誤字脱字や「てにをは」レベルの指摘はもちろん、ロジックの繋がりや表現の適切さにまで、マネジャーによる細かいチェックが行われるのです。
その中で、特に印象に残っている指導があると言います。あるマネジャーから、「自分が話す内容を、ワードで一言一句書き出しなさい」と言われたのです。
実際にやってみると、自分が話す内容とパワーポイントの資料が全然一致していないことに気づいたのです。よくあることかもしれませんが、パワーポイントのスライドは社内の既存資料をコピーして貼り付けたり、他のスライドを組み合わせたりして作ることが多いです。そうすると、資料の内容が実際の話の流れと合わないケースが出てくるのです。
資料は「大事な1枚」に注力しよう
とはいえ、スライドを全てゼロから作成しようとすると、時間がいくらあっても足りません。そこで、高橋が試行錯誤の末に辿り着いたアプローチがありました。それは、特に大事な1枚、いわば「エグゼクティブサマリー」として使う資料だけを、話す内容と完全に一致させて作り込むという方法です。それ以外のスライドは、ある程度の切り張りも許容したのです。
そのようにしてから、高橋は仕事の成果がこの「大事な1枚」のクオリティに大きく影響されることを実感したと言います。
それ以来、高橋は既存のスライドを使用することがあっても、お客様と会話するための「大事な1枚」をきちんと作り込み、それ以外は全て「参考資料」と位置づけるようになったのです。
こうすることで資料作成にかかる時間も変わりました。参考資料の部分はあまり時間をかけず必要最低限に留め、注力すべき「大事な1枚」に集中するようになったのです。その結果、お客様との意思疎通がスムーズになり、ビジネスのKPIも向上したのです。
提案書を作成する際、ただそれっぽい構成やストーリーを並べるよりも、お客様とのコミュニケーションを促す「大事な1枚」を用意し、他の資料は参考資料にすることが重要です。それにより、提案書作成における「無駄」を大きく削ることができるでしょう。