「事前準備」で商談同行の質を上げよう
「また、これができていなかったじゃないか」
商談同行後、マネジャーがメンバーにこんな指導をしているときは要注意です。そのような場合、メンバーの成長にも商談の成果にもつながらない商談同行をしている可能性が高いです。「営業担当のレベルアップ」と「商談成果」を両立する商談同行は「事前準備」で決まります。

弊社が実施した「営業1万人調査」で5003人の営業のスキルを分析すると、ハイパフォーマーは「事前準備ができていることによる成功体験」が目立って多かったです。これを、単に「事前準備をしているかどうか」で考えて終わってはいけません。「どんな事前準備をするか?」という「事前準備の質」を考える必要があります。そこで、マネジャーの指導レベルが問われます。

多くの営業は、実は「事前準備の勘所」がつかめていません。お客様の会社情報を事前にチェックしたり、サービス紹介の説明が淀みなくできるかどうかを練習したりします。これは「最低限の準備」であり、これだけやっても商談の成果は上がりません。お客様が目を光らせて見ているポイントは別に存在します。

弊社が実施した「お客様1万人調査」でわかったことは、事前準備の最大の肝は「その場のレスポンス」です。「お客様からの質問にその場で答えられるか」「難しい要望がきたらどう対応するか」ここで事前準備の質が問われます。簡単に「持ち帰ってご連絡します」とやってしまうと危険です。お客様からは「準備が足りない」とみなされます。

営業の事前準備の質を上げるには、マネジャーがメンバーに「考えてもらう」指導を日頃からしているかどうかが重要です。型通りのマニュアル対応だけでは乗り切れません。これを「自分の頭で考えなさい」とだけ言って放置していると、いつまで経ってもお客様から満足頂けるレスポンスのレベルには至らないので指導が必要です。

そこでおすすめなのが「もしもシリーズの5分ロールプレイ」です。商談前にレビューをするとき、「もし商談でお客様からこんなことを言われたらどうしますか?」と状況を設定し、その場でロールプレイを行います。本番の商談であたふたしないよう、事前に「もしもシリーズの5分ロールプレイ」をしておけば、メンバーも心の準備ができます。自分の頭で考える訓練として効果的です。

商談前に「もしもシリーズの5分ロールプレイ」をやっておけば、いざ本番を迎えたとき「この事前準備が適切だったかどうか」がハッキリわかります。事前準備によって壁を乗り越えられればメンバーの成長につながりますし、もし想定外の質問がきたら、それは読みきれなかったマネジャーの責任です。お互いに成長できます。
「とりあえず商談同行するか」とやっていて、商談後に「また、これができていなかったじゃないか」と指摘することになるのは、メンバーの責任ではなくマネジャーの指導力不足です。同じ壁にぶつかり続ける状態を作ってはいけません。商談の度に成功体験を増やしていくべきです。商談同行は「成長を確認する場」になります。
カギは「マネジャー自身のスキルと姿勢」
マネジャーの助けや支援を必要とせずに、メンバーが自立的に自分で営業を完結させられるということであればそもそも同行は必要ないわけですから、同行に来てもらうという時点でどこかしらマネジャーの介入余地があるわけです。
そのようなとき、よくありがちなのは「マネジャー側の準備不足」です。マネジャーからするとある程度の経験値がありますから、直前までそのメンバーの商談がどのようなものかということもよくわからずに同行し、とりあえずその場で思いついたことを言う、というような商談同行が多いです。
ただ、本当にそのメンバーの商談同行を成功させようと思ったら、マネジャー自身が一商談担当者として「この商談を成功させるにはどうしたら良いか」という一連の思考回路を踏んでおくことが非常に大事です。
それをやらないと、メンバーがどこら辺で行き詰まりそうかということに対する解像度がすごく低くなってしまいます。結果として、「思いついたことを、ただ言う」ということになってしまいます。
「一営業担当者として、どうやって成功させるか」という目線で考えていこうとすると、当然ながら前回の商談からの繋がりや、その商談の後のゴールとステップについても事前にできるだけ細かく考えておく必要があります。
ただ一方で、よく出てくる問題が2つあります。
①忙しさの問題
1つ目は、忙しさの問題です。平たく言うと「忙しいマネジャーがそんなことをしている暇はない」ということです。「忙しい中で準備をするコツを知りたい」という声もあるかもしれません。
そこで重要なのが、「悲観シナリオを描く」ということですね。「悲観シナリオ」というのは、「うまくいかないとしたら、どんなリスクがあるのかを考える」ということです。そもそも、マネジャーが行かなくてもうまく進むような商談であれば、同行は不要です。マネジャーの同行を必要としている時点で何らかの難しさやリスクが発生しているわけですから、一番最たる「難しい状況」や「起こってほしくないこと」を考えておくことが重要です。
その「悲観シナリオ」を考える際、どのような場面が思いつくでしょうか。実際は、お客様ごとにものすごく個別的なことが起こることももちろんありますが、一方で「よく起こる典型的なパターン」というものもあります。
そのため、自社の営業が困難に直面したときに参考にするプレイブック(社内用の参考資料)を作るのは、多くの営業マネジャーがいるような組織であれば大きなインパクトのある施策になり得ます。
商談同行をそれぞれのマネジャー任せにして、苦しい場面の対策をそれぞれマネジャーに「考えてください」とするのではなく、会社としても適切なサポートをするということです。
②スキルの問題
2つ目は、スキルの問題です。やはり、「考えようとしても、なかなか思いつかない」というスキルの問題があります。
もし仮にメンバーから相談され、「引き出しが足りていない」と思われる場合、その商談同行のときに「自分が一担当者だったら、どうするか」という視点でなるべく多くのケースを見ておくことが重要です。
マネジャーは多くの情報にアクセスできます。多くの情報を手に入れることができる状態にあるわけです。そのため、社内の様々な事例や情報を探すと、そこには先人のケースや色んな事例が存在します。それを定期的にストックしていくことによって、自分の中の引き出しは増えていきます。それがアップデートされないと、どうしてもいざというときに「自分にできることが少ない」ということになってしまいがちです。
マネジャーが自分自身のスキル不足に悩んでいる会社は多いです。それはなぜかというと、今のマネジャーが現役のプレーヤーとして第一線で活躍していたときと現在では状況が大きく異なるからです。
逆に若くしてマネジャーになった場合、「あまり経験がないままにチームを率いることになってしまった」ということもあります。
そのようなマネジャーに対しては、会社としてマネジャーの力を鍛えることが重要です。営業がうまくいっていない組織の話を伺うと、会社があまりにもマネジャーの人たちに介入をするのを「腫れ物に触る」ように避けているケースが多いです。しかし、会社からの介入がなければ、やはりマネジャーの営業力をアップデートするのは難しいです。
まずはマネジャーが学び、背中をみせよう
最近は様々な勉強会やトレーニングの機会というのは数多くあるため、そのような機会を通じてマネジャー自身が継続的にスキルをアップデートすることが重要です。マネジャーがメンバーにあれこれ「学べ」というよりも、マネジャー自身が必死に学ぶということが、メンバーにとっても一番の教材になります。
躊躇なくマネジャーの方々に踏み込んでいき、学び続け、変わり続ける。それがメンバーに対する一番のメッセージです。「役職が上だから」といってあぐらをかいていると、やはり行動してもメンバーにはあまりポジティブな影響は及びません。
そのため、まずはマネジャー自身が継続的にアップデートしていきましょう。





