「決裁者との商談」で重要な4つのポイント
お客様の決裁者との会話に困難を感じている若手営業の悩みをよく耳にします。主な課題として以下が挙げられます。
- 経営者の考えを理解することが難しい
- その場の威圧感に押されてしまう
- 自分の話に興味を持ってもらえない
- 商談の場をうまくコントロールできない
これらの課題に対して、以下の4つのポイントを押さえることで、より円滑な商談が可能になります。

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情報を拾う力
経営者がどのような情報収集を行っているかを理解し、同じ視点で情報を集めることが重要です。書籍、セミナー、SNSなど、現在は情報収集が容易になっています。「経営者向け」という観点から、自身に入ってくる情報の質と量を向上させましょう。
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翻訳する力
経営者の思考をより深く理解するために、自社内で経営者に近い立場の方々(経営と現場の橋渡し役)との対話が有効です。日常的な経営者とのやり取りを理解し、現場同士の会話ではなく、現場と経営の架け橋となる感覚を養いましょう。
3
コンテンツのラインナップ
経営者との商談では、相手に「発見」や「気づき」を提供できなければ、時間を確保することは困難です。経営者の抱える課題や悩みに対して有益な情報を蓄積し、「情報を拾う力」「翻訳する力」を活かしていきましょう。
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伝え方
経営者の多くは簡潔な話し方を好み、じっくりと人の話を聞くことを苦手とする傾向があります。資料を順序通りに説明するのではなく、持っている情報を適切に配分しながら、双方向のコミュニケーションを取り、相手の興味を引く話し方を心がけましょう。
役職が上がると「変数」が増える
担当者レベルとは普通に話ができるものの、決裁者と話をするときにどうしても緊張してしまう、あるいはプレッシャーがかかってしまう、または特に緊張するわけではないが上手く響かない、といった悩みを抱える若手の営業は多いです。
当然のことながら、一営業として働いている方が相手の会社の役員や社長と話をする際に上手く話せない、会話が噛み合わないといったことは起こりがちです。
その際、まずは決裁者の方々が通常どのようなことを考えているのかを理解する必要があります。ここが捉えきれていないと、話をしても上手く噛み合わない状況が発生します。
決裁者の悩みについては組織の形態によって様々ではありますが、一般的に組織の階層が社長に近づくほど、見ている範囲も広くなり、責任も重くなります。
「変数が増える」の本当の意味
これは当然のことではありますが、「見ている範囲が広くなり、責任が重くなる」ということは、具体的にはどのようなことなのでしょうか。分かりやすい例として「情報が増える」「関係者が増える」といった要素がありますが、最も見逃せない要素は「変数が増える」ということです。
例えば、「業務が非効率で忙しすぎる」という課題があった場合、現場の一担当者レベルであれば、自分の仕事の生産性を改善し仕事のスピードを上げる、あるいは業務の進め方を工夫する、といった解決策が考えられます。
階層が上がって現場の上司クラスになると、「どの仕事を、誰に任せるか」を変えることによって、全体の生産性や効率を上げることができます。あるいは、「そもそも、何かを中止する」という判断をすることもあるかもしれません。いずれにせよ、現場の担当者のときにはできなかった、ある程度の意思決定ができるようになります。
さらに階層が上がり、チームを束ねるリーダーやマネジャーの立場になると、組織としてのパフォーマンスを上げるための「変数」が増えてきます。例えば人間関係や、「組織感情」といったものもそうですし、ある程度使える予算も出てきます。例えば、部署でちょっとした勉強会を開くために外部の方を招くとか、一定金額の範囲内であれば、チームのリーダーやマネジャー、部課長クラスが決裁権を持つといったことです。
重要なのは「投資対効果を生むのに必要な動き」
ただし、チームのリーダー、マネジャー、部課長クラスが持っている予算では、大がかりなことはできない規模であることが多いでしょう。そうすると、予算を使ってできることは非常に限られてきます。
さらに上の決裁者として、ある程度の裁量を持った役員クラスになってくると、組織体制そのものを組み替えるといったことも視野に入ってきます。例えば、外部への支出に関しても数百万円クラス以上の判断ができ、人材の採用なども含まれてきます。
このように「変数」が多くなってくると、何が正解かが分からなくなってきます。人やお金を動かそうとすると、そこにリスクや不安が出てきます。弊社代表の高橋はそれを「不可逆性」という言葉で呼んでいますが、一度決めてしまったら元に戻れないということです。
「責任を取る」の本当の意味
例えば、外部の会社に費用を支払ってツールを導入したり、コンサルティング会社やシステム会社に依頼をする場合、一度契約してしまえば費用を支払うことになります。そうすると、「やはりやめます」ということは簡単には言いづらくなります。また、人材を採用したり、組織を変更したりする場合も、間違えてしまった場合は元に戻しにくくなります。
この「間違ってしまったら元に戻しにくい」という感覚は、現場の担当者との乖離が大きいものです。現場の担当者レベルでは、間違った場合、自分の仕事の進め方ややり方を改善したり見直したり、あるいは何かでカバーするといったことで、比較的容易に挽回が可能です。しかし、組織単位で間違えると挽回が難しくなります。この挽回の難しさという概念は、ある一定以上の責任範囲を経験した人でないと理解しにくい感覚でもあります。
特に若手の方にとって、「責任を取る」という言葉を聞いた時、それが具体的に何を意味するのかは理解しづらいものです。
相手に具体的な動きを理解してもらう大切さ
一定以上のクラスになると、間違った時に及ぶ影響の範囲が大きくなります。そうなると、1つ1つの行動や予算の使い方について、「間違った場合のリスクをなるべく減らしておきたい」という考えが出てきます。そのため「投資対効果」という言葉が出てくるわけです。投資対効果は重要で、例えば300万円の投資する場合、「少なくとも1000万円以上の粗利が上がるようにしたい」あるいは「2人分のリソースが空くようにしたい」といった、投資に対する期待が出てきます。
しかし、責任や裁量を持ったことがない場合、単なる計算の問題として「このような計算でこのようなリターンが出ます」と言いがちです。例えば、「何人×何時間の無駄な時間を削減できます」という机上の計算は簡単にできますが、実際はその際に生じる具体的な動きを相手に理解してもらうことが重要になります。
「誰がどのように動くのか」に焦点を当てよう
投資対効果を表現する際、よく「いくらの売上アップにつながります」「いくらのコスト削減につながります」「何時間分の時間削減につながります」といった表現が多いのですが、そこで抜けがちな観点が「誰がどのように動くのか」ということです。
決裁者クラスになると、人を動かすことが通常業務の中に含まれているため、「この人にこういう指示を出して、こういう依頼をして、このようなミーティングを定例で組んで、このようなタイミングで報告してもらう」といったフローが思い浮かびます。これは、ある一定の組織を動かした経験のある人には理解できる世界ですが、現場の若手担当者からすると、それは上から言われることの一部には入っているかもしれませんが、全体の話は理解しづらいものです。
そのため、決裁者と話をする際に抜けがちですが加えた方がよい観点として、「誰がどのように動くのか」という情報があります。誰がどのように動くことによって売上アップにつながるのか、誰がどのように動くことによってコスト削減につながるのか、このリアリティが分からないと、投資対効果というものを信じづらくなってきます。
ただし、ここが難しいポイントで、「誰がどのように動くのか」ということは、実際に人を動かした経験がないとリアリティが湧きにくいのです。そういう意味で、経営者の方々の情報に触れる機会を持つことや、経営者のコミュニティに入ることがおすすめですが、そういったことについて全く情報がないと、いくら情報収集やコミュニティへの参加をしても意味がありません。
ポイントは経営者の悩みをどの程度深く理解できるか
そこで振り返ってみると、経営者の方の悩みをどの程度深く理解できるかということが重要になってきます。よくある悩みとして「人が思うように動いてくれない」というものがありますが、この悩みについて詳しく聞いておき、それに対してどのようにお役に立てるのか、誰がどのように動くことによって粗利が上がるのか、誰がどのように動くことによって削減効果を生み出せるのか、この部分をしっかりと語れることが重要です。
決裁者がどのようなことを考えているのかを理解することが、決裁者に響く商談に必要なことです。決裁者に近づくと責任や権限の範囲が広がり、「変数」が増えます。「変数」が増えると人や組織を動かすことにもなります。そのため、決裁者に対して投資対効果の話を響かせるには、「いくら売上が上がります」「いくらコストが下がります」という机上の計算で語るだけでは不十分で、「誰がどのように動くのか」ということに言及することが非常に重要なのです。





