3つの観点から「OJT力」を上げよう
「営業を強くするために何をしていらっしゃいますか?」という質問に対して、多くの企業が「当社はOJTです」と返答されます。しかし「どうしたら効果的なOJTができるとお考えですか?」と尋ねると、明確な答えが返ってこないのが現状です。そこで、営業マネジャーの「OJT力」を「選手力」「コーチ力」「監督力」という3つの観点から分析し、向上させることが重要です。

OJT力の3つの要素は以下の通りです。
- 選手力:一人のプレイヤーとして成果を上げられる力(商談力)
- コーチ力:「ティーチング」「コーチング」「フィードバック」を適切に行える力(直接指導力)
- 監督力:仕組みを作り、チームの成長を機能させられる力(言語化力)

選手力
営業5,003人を対象にしたスキルレベル調査では、「目標ハイ達成プレイヤーの平均スコア」と「マネジャーの平均スコア」が近似値を示しています。しかし、この数値を「マネジャーだから当然優秀なプレイヤーと同等のレベルにある」と解釈するのは適切ではありません。

実際、商談の厳しい局面において「どうしたらよいかわからないマネジャー」が4.2%、「自分だけでは手詰まりになってしまうマネジャー」が17.6%います。全体平均スコアは3.11(5段階評価)であり、スコア3も平均未満となることから、「商談スキルが全体平均に満たないマネジャー」は45.1%にも上っています。

それにもかかわらず、営業現場のご指導は「個人的な経験と勘」に基づいて行われています。例えば、「決裁者とのアポイントを自ら取れないマネジャーが、決裁者に会えない営業の相談に対して、自分の経験と勘でアドバイスする」という状況が実際に起きています。

コーチ力
ここでの「コーチ力」とは、「ティーチング」「コーチング」「フィードバック」を包含した概念です。目の前の営業に直接指導し、スキルを向上させる能力が求められます。例えば、「決裁者に会えません」という相談に対して、「では、決裁者の同席アポを設定する場面を練習しましょう」というような具体的な指導ができる必要があります。

マネジャーのタイプは以下の2つに分類できます。
1
選手力は高いがコーチ力が低いマネジャー
「では、私が同行して何とかしよう」という対応になり、同席アポイントばかりでマネジャーの時間がすぐに埋まってしまいます。
2
選手力もコーチ力も高いマネジャー
「では、少し練習しよう」という対応ができ、同席せずとも成果を上げられるため、マネジャーの時間に余裕ができます。
監督力
監督は「選手と同じようにフィールドに立つ」ことなくチームを勝たせる必要があります。そのためには言語化力が重要となります。その出発点は、「接戦の決定場面を問う質問」を浸透させ、「何が成果を分けるポイントなのか」を特定することが重要です。これが曖昧だと勝ちパターンが見えず、全ての施策が効果的に機能しなくなってしまいます。

苦戦している営業組織は、ほぼ例外なく「後手に回っている」のが特徴です。一方、成果を上げている営業組織は「上流段階で勝負を決めにいく」傾向があります。上流段階で勝負を決めるには商談フェーズを定義し、「勝負すべきポイントはここ(多くの方が考えているより手前)にあります」と、具体的な場面を絞り込むディレクションが必要となります。

「選手力」「コーチ力」「監督力」の順に鍛えよう
「育成はどのように行っていますか」と聞くと、9割以上の会社が「OJTです」と返答されます。
メインはOJTですが、一方でOJTを担うのは当然ながら営業マネジャーという管理職です。そのため、管理職の方々の育成力をどのように向上させていくかが大きな課題となります。
まず、選手力というのは、お客様を目の前にしたときに、いちプレーヤーとして結果を出すことができる力のことです。プレイング・マネジャーの方は、比較的この力が高いかもしれません。
2番目のコーチ力は、1人のメンバーが目の前にいたときに、指導をして結果を出させることができる力のことです。商談に同行しなくても指導で成果を上げさせられると、時間のレバレッジが効きます。商談に同行して自分が決めに行くタイプの営業マネジャーはどうしても自分の稼働時間が天井になってしまいますが、指導によって成果を上げられれば、マネジャーの時間を有効に使えます。
そして監督力は、一度に多くの人たちを相手にしたとしても、その多くの人たちに対して指揮命令系統によって成果を上げさせられる力のことです。
この3つの力は種類が異なりますが、マネジャーの方々がこの3つの力を身につけていく順序は、大体「選手力」「コーチ力」「監督力」の順番です。
一番簡単な成果の上げ方は、例えばメンバーの商談に同行して、マネジャーが代わりにプレゼンしたり、お客様との難しい場面を自分が代わりに乗り越えたりすることです。これは、マネジャーとしての経験が極端に少なくても、メンバーの商談に同行してほぼメンバーの代わりを務めることによって成果を上げさせるため、ある意味シンプルと言えます。
ただし、その次のステップに進めないマネジャーは多いです。「自分が行かなければ駄目だ」という考えに縛られてしまうのです。自分が行かなければ駄目だというのは、「大事な商談には呼んでください」という同行依頼になります。大事な商談に呼んでもらえれば自分が何とかしてあげる、というスタンスです。
これが、マネジャーの課題を作ってしまいやすいです。メンバーが何かできないからそれを代わりにマネジャーがやってあげる、という構図になっているのです。例えば、相手が社長で、社長相手の商談は重要度が高いのでメンバーから「マネジャーさん、来てください」と声がかかるのです。これは、社長相手の商談における何らかの難しさを、メンバーがやる代わりにマネジャーがやってあげているわけです。
この状態が続いていても、メンバーの力は向上しません。そこで、メンバーの力をどのように上げるかということですが、まず第一段階として、メンバーの観察眼を鍛えるということがあります。
メンバーの観察眼を鍛えるというのは、例えば商談でマネジャーが素晴らしいパフォーマンスをしたとしても、ほとんどのメンバーは何が良かったのかがよくわからないという状況を改善することです。
「商談同行」で重要なのは「ノートの取り方」
そのため最初は、マネジャーがメンバーに同行したときの振り返りで、メンバーのノートを見てあげるといいでしょう。大体、自分がお客様相手に商談したときと同じように、マネジャーが同席した商談についてもノートを書いているメンバーが多いです。つまり、お客様の発言であったり、発生したタスクであったりと、自分が商談するのと同じような感覚でノートを取ってしまっているのです。
観察眼を上げるには、「印」をつけることが重要です。例えば、後で「なぜこういうふうにしたのか」ということをマネジャーに質問するために、疑問に思ったところ、自分で真似したいと思ったところ、商談の流れを変える重要なポイントだったところ、その3種類に印をつけるのです。
これを、お客様からノートが見えても大丈夫なように印をつけます。例えば、はてなマークをつけると、お客様からすると不思議に思われるかもしれません。目の前で商談している上司と部下がいて、部下の人がノートにはてなマークをつけているのを見ると、なんとなく不穏な感じがするでしょう。そのため、AとかBとかCとか、そのような感じの無難な記号にしておけばいいでしょう。その記号を持って、商談後の振り返りをやってあげるのです。
ほとんどの商談同行ではこれができていません。そうするとメンバーの方も、どこを見たらいいかというポイントがわかっていなかったり、マネジャーも「ちょっと待って、さっきのあれ気づいていないの?」というようなことがあったりします。そこについてどうやって学習してもらうかというと、メンバーのノートの付け方がポイントになるのです。
そういった印をつけられるようになって振り返りをするようになると、メンバーがマネジャーのことを段々理解し始めてきます。そうしたら今度は、マネジャーがあまり話さない形での同行をします。そして、今度はマネジャーが同じような感じでノートをつけるのです。
具体的には、商談の流れを変える重要なポイントや、メンバーがなぜこうしたのかと疑問に思ったところを記録します。これは後で問い詰めたり指摘したりするためではなく、純粋な疑問として聞いてあげるためです。また、ここはすごく良かったと思うところなども記録します。
このように、マネジャーが話さないタイプの商談で同行した後に、それを元にメンバーと話をしていくと、選手力からコーチ力へのレベルアップはある程度やりやすくなります。
「再現性」を意識して「監督力」を上げよう
選手力からコーチ力へと段々移行したら、次は監督力というところですが、監督力は逆にあまり商談にべったりと同行しすぎると上がらなくなってしまいます。そのため、どちらかというと商談に張り付かない時間を作ることが重要です。まずは入口として、1人で考える時間を取ることがおすすめです。
そこで注目していただく点は、再現性です。1つは、繰り返されてしまう失敗、つまり「なぜいつもみんなここでつまずくのだろうか」という点に注目することです。これが観点その1です。
観点その2は、「AさんはできるのにBさんはできない」というタイプのものです。ある人はできるけれどもある人はできないのであれば、そのできる人のやり方を広げていきたいはずです。
まずは入口として、観点1と観点2について、商談を離れて手元のノートで書いてみるというのが、監督力を高める上での最初のステップとしておすすめです。その2つを考えた上で、みんなに対して作戦の指示を出し、その作戦の指示を出した後に、それが実際どうだったかということを後で振り返っていくということができれば、ある程度チームに対して育成という観点で成果を上げるための基礎が整っていきます。
監督力の今のポイントというのはどちらかというと事後的なものです。事後的というのは、起こってしまったものに対してばらつきをなくしていったり、みんなの乗り越えられない壁を乗り越えさせたりするようなものです。その次は、もっと先手を取るにはどうしたらいいかということを考えて、そのアクションに対する作戦の指示出しと、それに対する振り返りをするということになります。
今回は選手力、コーチ力、監督力という3つの観点をお伝えしました。ぜひOJTの参考にしてみてください。





