営業メンバーのスキルを上げたい

2025.10.17

お客様の本音は「過去の事実」にある

お客様から異論・反論が出たら「説得」をするより「過去の事実」を聞こう

お客様から異論・反論が出たらどうするべきか?

営業をしていると、お客様から異論や反論が出てくることがあります。その際に重要なのは「説得」をするのではなく、お客様からそのような異論・反論が出てくるきっかけとなった「過去の事実」を聞くことです。今回はお客様から異論・反論が出た際に営業がすべきことについてお伝えします。

お客様から異論・反論が出たら「深掘り」をしよう

営業をしていると、お客様から異論や反論が出てくることがあります。お客様からの異論や反論には、以下のようなものがあります。

  • 「以前に似たようなサービスを導入して失敗した経験がある」
  • 「使いこなすのが難しそう」
  • 「当社は特殊なので、うまくいかない」
  • 「社内に後ろ向きな人がいる」

こういった異論・反論が出てきたとき、営業が意地になって説得しても問題は解決しません。必要なのは説得ではなく、「過去の事実」に対するヒアリングです。

例えば、お客様が「以前、似たようなサービスを導入して上手くいかなかった」とおっしゃったとします。そうしたら、まずは「そのときにどんなことが起こったのか」を詳しくヒアリングしましょう。このヒアリングが浅いままでは、異論・反論に対抗するロジックを提示してもお客様の反応は薄いままです。

「過去の事実」を詳細に聞き出すことで、例えば以下のような事実が明らかになることがあります。

  • 過去に似たようなサービスを導入した。
  • そのとき、目的がよくわからないままそのサービスを導入した。
  • それに対して、各所から反対意見が出た。
  • その結果、ハレーションに耐えきれずそのサービスは自然消滅した。

こうした「過去の事実」を掘り下げていくと、多くの場合「思い込み」が存在していることがわかります。例えば、「目的がよくわからないまま新しいサービスを導入してしまった」から「当社では新しい取り組みは社内で理解されないだろう」といったものです。まずはそのような「思い込み」を発見します。

ただし、「思い込み」の存在を突き止めたとしても、そこですぐに説得に移るのはまだ早いです。「当社では新しい取り組みは社内で理解されないだろう」という思い込みに対して、いきなり「そんなことはありません。こうすれば理解されます」と説得するよりも、「なぜ、理解されないとお考えなのですか?」と深掘りをする方が効果的です。

思い込みの背後には、個人の解釈や価値観が存在しています。それを丁寧に掘り下げて聞くことが重要です。すると、「本当は新しい取り組みを理解してほしいのに、理解されず、残念だった」といった心の声が表に出てきます。断り文句が頑なな場合、逆に「実はやりたい」という心があることが多いです。

しかし、断り文句の裏側にある「真逆の心の声」が出てきても、そこで説得をするのはまだ早いです。そこでぶつけるべきなのは、「お客様がまだ知らない意外な事実」です。「意外なことに実は…」という枕詞で、客観的な事例を提示すると、深層心理まで吐露したお客様は、「事実」を新鮮に受け止めてくれます。

思い込みの存在が明らかになり、裏側の解釈や価値観が見えてきて、深層心理を吐露したお客様は、認識の枠組みの外側にある事実(上手くいかないと思い込んでいたけれども、「こうすれば上手くいく」という事例)に対して、前向きな好奇心で見てくれるようになります。そこで、その事実が響いたら、お客様から質問が来ます。

その「前向きな興味によって発せられた質問」が来たときがチャンスです。会話のキャッチボールを往復しながら、自社サービスの魅力や強みを自信をもって訴求しましょう。そうすると、お客様の熱量も徐々に上がってきます。お客様の熱量が上がれば、「今まではこういう理由でダメだったけど、今度は明らかに違う」と感じていただけるでしょう。

このような提案活動における一般的な障壁に対して、営業マネジャーが「こうすれば突破できる」という道筋を示すことでメンバーも活動しやすくなります。精神論や表面的なテクニックで終わらず、きちんと「構造」を理解したアプローチが組織に浸透することで勝率が上がります。

重要なのは「説得」ではなく「ヒアリング」

お客様の背景にある事情や過去の経験に耳を傾けることで、お客様は「この営業は自分の話を理解しようとしてくれている」と感じ、信頼関係が深まる可能性があります。

よく、「どの程度まで深堀りすれば良いのか?」という質問を受けます。その答えは、「お客様の過去の体験がどのようにして現在の解釈や価値観に繋がったのかを理解し、それによって自分自身に新たな発見が生まれるまで」です。

例えば、デジタル系の業務効率化サービスを提案するとします。その際、お客様から「便利なことは理解できますが、うちのメンバーには使いこなせないと思います」と言われたとします。その場合、多くの営業は次のように対応しがちです。

説得によるアプローチ

営業パーソン

お客様、ご安心ください。当社のサービスは非常に使いやすく設計されており、操作も難しくありません。実際、多くのお客様から使いやすいとの評価をいただいております…

しかし、どんなに一生懸命説得を試みても、お客様から「いや、でもうちは特殊ですから」と言われてしまえば、それ以上の説得は難しくなります。

お客様が営業の提案に対して「うちのメンバーはこういうのは難しくて使いこなせないと思いますよ」とおっしゃった場合、「今のポイントは大事なところかと思いますので、もう少しお伺いできますか?」といったように深掘りをしましょう。その際、「今のポイントは大事だと思いますので」といった枕詞を使うと、お客様も話しやすくなります。

その質問に対して、お客様が次のようにおっしゃったとします。

お客様

いや、実はうちの人間は便利なものがあっても、わざわざ自分の行動を変えてまでやろうとはしないんです。便利だということは分かってはいるけれど、そもそも業務をもっと良くしようという意識がないんですよ。

このような発言には、お客様の価値観や解釈が反映されています。ここで、お客様の言葉を深く理解しようとすることが重要です。

当然ながらお客様は現場の状況や背景について営業よりも深く理解しています。そのため、お客様が「うちの人間は業務をもっと良くしようという意識がないんですよ」とおっしゃった場合、それに対して「いや、それは違います」と否定することはできません。お客様の方が詳しい状況を知っている以上、正面から説得しようとしても意味がないのです。

そこで、次のように深掘りをしましょう。

営業パーソン

「業務を変えていこうと思わない」とおっしゃいましたが、なぜそのように思われるのでしょうか?

すると、お客様から過去の体験に基づいた話が出てくるのです。

お客様

実は、過去に似たようなサービスを導入しても上手くいかなかったのです。

このようにして過去の出来事が話題に上る瞬間が重要なポイントです。お客様が「過去にも似たようなサービスを導入したが、上手くいかなかった」と話し始めた場合、その背景をさらに詳しく聞いてみましょう。

営業パーソン

そうなんですね。そのときの状況をもう少し詳しく教えていただけますか?

このような深掘りによって得られる情報は、表面的なやり取りでは決して出てこないものです。こうした重要な情報を聞かずに説得を試みても、受注率は上がりません。むしろ、お客様が過去に直面した課題を詳しく聞き出すことが、受注に繋がる糸口を見つけるカギとなります。

お客様の「矛盾」に焦点を当てよう

しかし、営業としてはこのようにお客様の過去の失敗事例を深掘りしていくことに葛藤を感じるかもしれません。「上手くいかなかった話を聞いてしまうと、逆にお客様が購入をやめる方向に進んでしまうのではないか…」という不安が生まれるのです。そして、商談がネガティブな方向に進まないように自分が用意してきた結論に早々と持ち込もうとしてしまうのです。

しかし、お客様にサービスを検討する気持ちがまったくないのであれば、そもそもその商談に時間を割くことはありません。お客様が少しでも話を聞こうと思っているのであれば、それは何かしら現状を改善するためのヒントを求めているということなのです。

ここで注目すべきなのは、お客様の中にある矛盾です。まず、「何か良いヒントがほしい」と思っている気持ちがあります。一方で「過去に上手くいかなかった」という「トラウマ体験」が心に残っています。この2つの間で揺れ動くお客様の心理に対して、どれだけ深く踏み込んで話を聞けるかが営業の成否を分けるポイントとなります。

過去の失敗談を語るお客様に対して深く踏み込むことを怖がる営業は多いです。しかし、実際には普通に聞いてしまえばお客様は答えてくれます。例えば、次のように聞いてみるのです。

営業パーソン

過去にサービスの導入を試みられたものの上手くいかなかったとおっしゃいましたが、今こうして私のお話を聞いていただいているということは、現状を変えたいというお気持ちもゼロではないのだと思います。そこはどのようなお気持ちなのか、少しお聞かせいただけませんか?

この場面で重要なのは、「お客様の中にある矛盾」に焦点を当てることです。そうすると、お客様はそれについて自分の言葉で語り始めます。そこまでいくと、話は大きく進展します。お客様が購買に対して前向きな気持ちを持っている場合、「助け舟がほしい」という前向きなリアクションを示すことが多くなるのです。

一方で、ここまで話をしてもお客様から前向きな反応がない場合、価値訴求が十分にできていない可能性があります。その場合は一度立ち戻って価値訴求をし直す必要があります。

そこで焦って導入の意思決定をお客様に迫ってしまうと、「検討します」と言われ商談が終わってしまうことがあります。そのような状況を避けるには、異論や反論があった際に正面から説得や論破を試みるのではなく、一旦その衝動を抑えることが重要です。

お客様の過去に関する「トラウマ体験」にまで踏み込んで話を聞ければ、かなり深掘りができたと言えます。お客様が何を考え、何を感じているのか、その正直な気持ちを丁寧に汲み取ることが重要です。

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