~“安易な値引き”と“無駄な失注”をなくす3つの質問シリーズ~ 値引きだけで戦う状況に陥らないための3つの質問 ③背景を深掘りする質問

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営業部門を統括されている幹部や営業マネジャーにとって、「本来であれば防げたはずの失注報告」や、「安易な値引き申請」はできるだけ減らしたいはずです。

また、弊社がこれまでお付き合いしてきた3万人ほどの営業の方は、研修やコンサルティングの現場で営業上の課題や悩みを尋ねると、「お客様からの値引き要請が厳しい」「安くしないと売れない」ということを口々におっしゃいます。

「御社の提案はよかったのですが、価格が安い他社に決まりました」と断られる営業の方は、実際のところ多くいらっしゃいます。

本シリーズでは、数回に分けて「価格」の部分に踏み込んで考えてみたいと思います。

第1回:「提案はよかったけど価格で負けました」が起こる理由と回避方法
第2回:お客様の言葉の裏にある本音を見抜く「本音と建前の構造」
第3回:注力すべき「接戦」案件でお客様に起こる”認知的不協和”
第4回:値引きだけで戦う状況に陥らないための3つの質問 ①接戦状況を問う質問
第5回:値引きだけで戦う状況に陥らないための3つの質問 ②決定場面を問う質問


値引きだけで戦う状況に陥らないための3つの質問について、「接戦状況を問う質問」「決定場面を問う質問」をお伝えしてきました。

最後に「背景を深掘りする質問」です。


接戦状況を特定し、接戦における決定場面を「事実」で捉えるようになっていくと、「お客様は結局、何が決め手で選ぶのか」に対する理解が進んできます。

そうすると、お客様との会話の中で、「どこを深掘りすると核心があるのか」ということへのアンテナが磨かれてきます。

逆に新人の営業の方はこのアンテナが磨かれていないために、決定的な情報をヒアリングせずに帰ってきてしまうのです。



「裏にある背景を深掘りする質問」とは

例えば他社の商品・サービスを利用しているお客様が目の前で「いま、他の会社さんのサービスを利用しているのですが、色々と思うところがありまして・・・」とこぼしても、それを丁寧に掘り下げる営業の方は多くありません。

すぐにカウンターで提案し、自社のセールストークにつなげようとする営業の方が圧倒的多数です。

しかしハイパフォーマーの営業の方は、お客様の発言に対して、いいタイミングで、いい間で問いを投げるということができます。

これが、「裏にある背景を深掘りする質問」です。

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お客様が困っていらっしゃることについて、すぐ提案するのではなく、

「それはどういうことなんですか」
「なぜなのでしょうか」
「今まではどのように対応されてきたのですか」

など、踏み込んで聞いていきます。

お客様には本音と建前というところがあるので、なかなか正直なことを聞くのが難しいです。

それゆえに、実際どうなのか、裏にはどのような事情や認識があるのかを、どれくらい正確につかんでいるかということが、成果に大きく影響してきます。

お客様の「他社のサービスを使っているんだけど、思うところがいろいろあるんですよね」という台詞には、

「思うところが・・・、というのは、具体的にどういうことなのでしょうか」
「すみません。今のところ、もう少し詳しく伺えますか」

といった深掘りの質問を、ハイパフォーマーの方は例外なく繰り出しているのです。



深いヒアリングでお客様の本当の悩みや組織的な事情を把握する

しかし、この深掘りということが意外と難しいのです。

なぜなら、スキルや経験値が充分でない方は、「こんな質問をしたら、お客様が怒ってしまうのではないか」と考え、どうしても及び腰になってしまうからです。

確かに礼を逸した自分本位の質問を繰り返すと、気を悪くされるお客様もいらっしゃるでしょう。

しかし一方で、お客様の本当の悩みや組織的な事情を深く知らないまま提案している営業がお客様にとって役に立てる存在かというと、そうではありません。

ただ一つ言えることは、「ほとんどの営業担当者は、これ以上聞いたらいけないのではという『線』を、相当手前に引いてしまっており、それゆえに深いヒアリングができていない」ということです。

一方で、ハイパフォーマーの営業の方は、しっかりと深掘りをした状態で提案しています。

また、営業に強い会社では、皆が深掘りの質問をできるようにするためのトレーニングや仕組みが存在しているのです。


<本日のポイント>

深掘りをする質問によってお客様の本当の悩みや組織的な事情を知った上で提案をする。
「これ以上聞いたらいけないのでは」という『線』を手前に引きすぎると深いヒアリングはできない。