~“安易な値引き”と“無駄な失注”をなくす3つの質問シリーズ~ お客様の言葉の裏にある本音を見抜く「本音と建前の構造」

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営業部門を統括されている幹部や営業マネジャーにとって、「本来であれば防げたはずの失注報告」や、「安易な値引き申請」はできるだけ減らしたいはずです。

また、弊社がこれまでお付き合いしてきた3万人ほどの営業の方は、研修やコンサルティングの現場で営業上の課題や悩みを尋ねると、「お客様からの値引き要請が厳しい」「安くしないと売れない」ということを口々におっしゃいます。

「御社の提案はよかったのですが、価格が安い他社に決まりました」と断られる営業の方は、実際のところ多くいらっしゃいます。

本シリーズでは、数回に分けて「価格」の部分に踏み込んで考えてみたいと思います。

第1回:「提案はよかったけど価格で負けました」が起こる理由と回避方法


多くの営業の方は、商談へ行っても重要なポイントを確認せずに帰ってきてしまいます。

ここでいう重要なポイントというのは、「お客様が高いとおっしゃる台詞の背景に何があるのか」だけではありません。


もう少し俯瞰して捉えると、

・お客様が何を望んでいらっしゃるのか?何にお困りなのか?
・そのために、何をどう検討されていて、それはどこまで進んでいるのか?
・当社はお客様の課題解決にとって一番のパートナーになれているか?

といったことです。


しかし、これらを確認せずに商談から帰ってきてしまう営業の方は、

「他社さんがすごく安くて・・・」
「他社さんからも良いご提案を頂いており・・・」
「上司がこういうことを言っていまして・・・」

など、商談中にお客様が発する表面的な台詞に振り回されたままになっています。


では、この台詞の裏側にはどのような構造があるのでしょうか。



見えにくい「構造」に気が付くことが重要

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例えば、「ある会社と付き合いのあるお客様が、新しくきた営業を断るケース」について考えてみましょう。

新規に営業をしようとしても、「ごめんなさい、お付き合いしている会社がありますので」と言われてしまう開拓担当の方は多いと思います。定番の断り文句ですね。

しかし、本当に「お付き合いしている会社があるから新しい会社からの提案を受けない」というお客様が100%だったら、世の中に新規受注というのは発生しないはずです。

では、この台詞の裏側でお客様がどういった事情になっているかを考えてみましょう。

購買担当者の方は、同じベンダーに対して毎年同じコストで発注し続けていたら、「購買担当として、しっかり仕事をしているのか」と社内で責められてしまいますね。

購買担当者の方は、なるべく継続的に品質を上げ、納期を短縮し、コスト削減努力をしていかないといけません。

そこで、購買担当者の方は、既に発注している会社にプレッシャーをかけます。

「御社には昨年お世話になりましたが、実は最近、他の会社から提案がきまして・・・もう少し何とかなりませんか?」といった感じです。

このプレッシャーによって、既存発注先がコストダウンし品質向上の努力をしてくれれば、購買担当者の方は社内に対して、「しっかり仕事していますよ」という報告ができます。

ということは、新規に営業して受注するためには、購買担当者の方が安心して社内に報告できるところまで考えておかないといけないわけです。

お客様は、当然のことながら、「自社にくる営業に対しては交渉し、どこかを選び、どこかを断る」という「構造」があります。この構造を理解しないと、キリのない価格競争に巻き込まれてしまうのです。


お客様の建前と本音を理解する

お客様には裏側の「構造」があるから、表面的な台詞に振り回されないようにしよう。

営業担当者がそう構えて商談に臨んだとしても、難しいのは、営業に対してお客様が正直に話してくださるとは限らないことです。

たとえば、「営業に不満がある」「営業に物足りなさを感じる」こんなことを正直におっしゃるお客様はどれくらいいらっしゃるのでしょうか?

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こちらのグラフは、「提案を受けたが発注に至らなかった会社について、顧客はその営業担当の方にどう説明したか/断った本当の理由は何だったか」というのを聞いたものです。

「どう説明したか(建前)」「本当の理由は何だったか(本音)」について、同じ項目に対して2つの質問をかぶせています。

白抜きのグラフが建前で赤のグラフが本音を現したもので、建前のスコアから本音のスコアを差し引き、建前のほうが大きいというギャップの順番に並べています。

下の方にくると、本音の方が建前よりスコアが高い、すなわち、「言わなかったけれども実際はこう思っていた」という度合いが大きくなるように並べています。

上の方にくるのは、「他社が安かった」「提案の内容が要件に合わなかった」というものですね。

「御社の提案内容自体は非常に良かったのですが、残念ながら当社が求めている要件とは少しズレがあり、かわりに、他の安い会社から提案を頂いたので・・・」といった断り文句でしょうか。

しかしこれは、「実際にそう思っていなくとも、とりあえず営業担当に対してその台詞で断った」人が多いということでもあります。

こういった台詞で断られた営業担当は、「提案はよかったと言われたのですが、価格で負けました」と社内へ報告することでしょう。

一方、グラフの下の方には、やはりなかなか言えない本音があります。

担当者に対する不満などは、お客様が心の中で思ってもなかなか言わないですよね。

こういった建前と本音に対して、実際のところを確かめたいと思っても、お客様側には、断り文句の定番サイクルがあります。

日々、色々な営業を受けているお客様は、「かわす」「はぐらかす」「それっぽいことを言う」ことにかけては、相当な経験を積んでいるわけです。

建前と本音に振り回されずに、お客様のお悩みや望んでいることをどうやって捉えていくのか。成果が出ない営業担当者は、この壁をなかなか超えられずに悩んでいます。

まずは、「建前と本音の構造」を理解しておくことが重要です。


<本日のポイント>

お客様に「高い」と言われた際、表面的な台詞を鵜呑みにするのではなく、その裏にある真意を確かめることが重要。
お客さまには「建前」と「本音」がある。