~“安易な値引き”と“無駄な失注”をなくす3つの質問シリーズ~ 注力すべき「接戦」案件でお客様に起こる”認知的不協和”

ebook注力すべき「接戦」案件でお客様に起こる”認知的不協和”.png

営業部門を統括されている幹部や営業マネジャーにとって、「本来であれば防げたはずの失注報告」や、「安易な値引き申請」はできるだけ減らしたいはずです。

また、弊社がこれまでお付き合いしてきた3万人ほどの営業の方は、研修やコンサルティングの現場で営業上の課題や悩みを尋ねると、「お客様からの値引き要請が厳しい」「安くしないと売れない」ということを口々におっしゃいます。

「御社の提案はよかったのですが、価格が安い他社に決まりました」と断られる営業の方は、実際のところ多くいらっしゃいます。

本シリーズでは、数回に分けて「価格」の部分に踏み込んで考えてみたいと思います。

第1回:「提案はよかったけど価格で負けました」が起こる理由と回避方法
第2回:お客様の言葉の裏にある本音を見抜く「本音と建前の構造」


建前と本音を使いわけて、なかなか本当のことを教えてくださらない手強いお客様。
どうやったら、核心をつかんで受注に結びつけられるのでしょうか。

前提としては「全ての案件で受注を狙うのではなく、注力すべき案件を絞る」ことが必要です。


案件を3つのタイプに分けてみる

営業幹部や営業マネジャーのもとには、日々、たくさんの案件が相談されたり報告されたりしますが、これらを、3つのタイプに分けます。

①楽勝:
誰が営業に行っても受注できるような難易度。自社にとって長年の付き合いがあるお客様で、競合に発注するといったことは到底考えられないようなリピート案件の商談

②接戦:
やり方次第では、受注にも失注にもなるような難易度。どちらに転ぶかわからないコンペ、相見積もり提案。あるいは、競合がいなくとも、稟議が通るかどうかぎりぎりわからないような案件の商談

③苦戦:
誰が営業に行っても受注が難しいことはほぼ見えているような難易度。競合にとって長年の付き合いがあるお客様で、自社に対しては強固にガードされ何の情報も入ってこないような案件の商談

04.JPG

これら3つの中で、営業幹部やマネジャーがリソースを集中投入すべきは、もちろん「接戦」案件です。
楽勝は新人が行っても受注できますし、苦戦はエースが提案しても受注が難しいので、自ずと接戦案件がキーになります。

では、この「接戦」において、お客様の心理状態を考えてみましょう。

判断を迷うお客様の心理

心理学について詳しい方はご存知かもしれませんが、図に示しているように「認知的不協和」という言葉があります。これは、複数の矛盾する認知に対して、モヤモヤする心の動きを指しています。

05.JPG

例えばダイエットで言うと、「体に悪いから我慢しよう」「でも目の前のケーキを食べたい」という2つの思いが頭に浮かぶとモヤモヤしますね。

人間はこの、モヤモヤ状態が続くことに耐えられないという性質があるので、大概の方は「ダイエットは明日から」という結論になります。

今度は、提案を受けているお客様の立場になってみると、「この提案いいかも」「でも決めるのは不安」ということで迷うのが、接戦ゾーンにある案件です。

ただ、この認知的不協和については、情報が加わると結論が変わるという性質があります。

「ダイエットは明日から」と言って目の前の誘惑に負け続けてきた方が、かなり悪い健康診断の結果を受け取ったりすると、あるとき急に、節制を始めたりします。

では、「この提案いいかも」「でも決めるのは不安」ということで迷うお客様はどうなるか。

営業の側は、迷うお客様を目にすると不安になりますし、「どうしても決めてもらいたい」ですね。
なので、ほとんどの場合、「特別に御社はお安くしますよ」というオファーをします。


「お客様は、結局価格で判断する」という思い込み

想像していただきたいのですが、これを体で覚えてしまった営業担当者というのは、「迷ったお客様には、値引きを申し出ると決めていただける」と考えるようになります。

「お客様は、結局価格で判断する」という思い込みが強化されるのです。

私も会社を経営していると、色々な会社から営業を受けます。

提案の見積もりを拝見して、「うーん」と黙って30秒くらい経つと、ほとんどの営業担当者は「社長、お安くしておきますので」とおっしゃいます。

しかし、「お客様は価格で決める」と思い込んでいる営業担当しかいない組織では、接戦を戦える力は強くなりません。

そこで、値引きだけで戦う状況に陥らないために役立つ3つの質問について次回からお伝えしていきます。


<本日のポイント>

注力すべき「接戦」案件。
「お客様は価格で決める」と思い込まず、お客様の心理を理解する。