高橋が8年間無敗の秘訣:提案書の表紙をなくした

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提案書の表紙は必要なのか?

私は法人営業のコンペにおいて8年間無敗を続けており、一度も負けたことがありません。
コンペで勝ち続けるために私が工夫していることはいろいろとあるのですが、今回はその中でも「提案書の表紙をなくした」ということについてお話をしたいと思います。


今回の内容は、提案書を書くということが多く発生する法人営業の世界においては、かなり汎用性があるお話かと思います。

お客様は提案書の内容を、あまり理解しないまま判断している

そもそも私がこの方法に至ったのは、受注したお客様に対して、発注を決めた背景などを質問してみて気づいたことがきっかけです。

 

私がもともと扱っていた商材は、教育や研修、コンサルティングといったものでしたが、商談のためにお客様へ向けて、パワーポイントの提案書を多く書いていました。

ページ数としては2枚3枚といった量ではなく、ある程度の枚数の提案書になることも多かったため、このたくさんの内容をお客様に伝えるために、どのように書こうか、どのように作ろうか、何を盛り込もうか…、とても悩みました。

しかし実際にお客様に提案をして受注することができたとき、その後お客様からいろいろな裏話や背景を聞いてみると、多くのお客様が実はその提案書の内容について、資料を作った側の意図する内容をそのまま理解しているケースはほとんどない、ということに気づきました。

資料を作る側からすると衝撃的なのですが、やはり他人の書いたパワーポイントというのはとてもわかりづらいのです。

しかしまさか購買しているお客様側としては「よくわかりません」と言うわけにいかないので、多くのお客様は最後まで結局わかりづらいままで判断をしています。


この「よくわかりづらいまま判断をしている」という事実が非常に重要なポイントだなと思いました。

お客様がもっと考えやすくするためには?

つまりいろいろな会社のコンペになった場合、お客様のもとには参加している会社の数の分だけ、よくわからない提案書が来ることになります。
これはお客様としては、とても考えづらい状況です。

 
ではお客様にとって、もっと考えやすい状況にするためにはどうしたらいいのでしょうか?

そこで私がとった戦略はまず、最終提案としてのパワーポイント資料があった時に、その資料を最終提案までのプロセスで小分けにして、1枚~3枚ぐらいの小さい単位で、少しずつ議論をしたり合意を得たりすることを繰り返していくというものでした。

表紙のついた多くの提案書の逆をいってみる

世の中の多くの提案書というのは、不思議なことに資料の最初に表紙がついています。

例えば「一次提案」「二次提案」「ディスカッション資料」といったように、それなりの大層な表紙がついていて、そのひとつひとつがちゃんとした提案であり、その資料には大層な内容が盛り込まれていなければならない、という気持ちになるものです。

こうなるとほとんどの営業の方は、断片的に1枚や2枚だけ資料を送るということはしません。「きちんと内容が盛り込まれた資料を送らなくてはいけない」と思っているからです。

 

そこで私はその逆をいって、とにかく資料を小分けにして、1枚、2枚という単位でお客様へ送ります。

しかも最近ではiPad Proの、手書きで書いたものをそのままメールで送れる機能を使い、パワーポイントの資料すら作らずに手書きのものを送ったりしています。

 スピードが大事ですので、お客様とディスカッションやヒアリングをしたら、すぐにその結果を1枚に書いて、「こういうことで認識としては合っているでしょうか?」「こういう風に思うのですが、いかがでしょうか?」と小分けに送っていきます。

 

お客様からまとまった提案書のレビューをいただくのは難しいのですが、1枚の紙について何かフィードバックをいただいたり、2、3枚の資料について議論したり、というのはあまりハードルが高くありません。

そのため、それくらいの小さな単位でお客様とディスカッションをしながら段々と詰めていくことができるのです。
そしてその合意が得られた小さな単位のものを全部つなぎ合わせて組み立てて、一つの大きな提案書の形に仕立てます。


つまり、途中途中でお客様とバラバラの資料のやり取りをし、最後に組み立てているわけです。

小分けにすることで、フィードバックを受ける回数を増やす

「ストーリーを考えるのが大事」ということも確かによく耳にします。私も、ストーリーを考えていないわけではありません。

ただ、提案書というものについて、ある程度「形式」「体裁」「ストーリー」が整ったものでなければいけない、と考えてしまうと、そもそも提案書をお客様の前に出して、フィードバックを受ける回数が少なくなってしまいます。

 

私がコンペでずっと無敗を続けている理由は、お客様へ提案内容をお出しして、フィードバックをいただく回数を増やしているからです。

その回数は競合他社に比べると、少なく見積もっても3~4倍、場合によってはもっと多くの回数になっているはずです。

フィードバックを受けるタイミング

もう少し具体的に、タイミングについてお話したいと思います。

案件をいただいた初回訪問の翌日の午前中にまず一枚、表紙のついていないものを「ただのまとめですよ」といった感じで送り、その後に電話をします。
まず1回目、初回訪問の翌日の昼には電話をして議論をしているわけです。

そこでお客様から何かフィードバックをいただいたら、すぐにそれを修正して送ります。
つまり、初回訪問の翌日には、お客様からのフィードバックが2回転回っていることになります。

 

翌日にその動きができると、当然お客様から「動きの速い会社」「打てば響く会社」という感触を持ってもらえますし、次からは競合他社に比べて優先的に時間を取ってもらいやすくなります。 

これは、初回訪問の翌日には「当社は回転が速いですよ」「打てば響く対応ができますよ」「スピードがありますよ」ということをあらかじめ伝えられているからです。

競合他社に比べて、お客様の理解が進んだ状態で提案できる

これをやることで、何回も提案を練り直すということをせずに、お客様と議論をしたいところや合意を取りたいポイントについて着実に少しずつ埋めていくことができます。

何よりもこの方法の副産物となるのは、お客様が最後にでき上がった提案書を見たときには、かなり理解ができている状態であることです。ここがとても重要なポイントです。

やはり何十ページにも渡る提案書について、お客様が全体を理解するのは大変です。

しかし1ページ、2ページ、3ページ、といった小さな単位に分けて、何回も議論や合意を重ねていれば、最後の段階になる頃には、お客様自身が半分ほど自分の言葉で語れるような状態になったパーツが合わさったパッケージを見ているということになります。

これはつまり、競合他社に比べて一社だけお客様の理解が進んだ状態で提案できているという状態なので、このやり方を工夫していくと非常に勝率が上がっていきます。

ポイントとなるのはただ「表紙を外す」という表面的な部分が大事なのではなく、お客様と議論をするサイクル(回転数)を可能な限り上げられる方法を取るということです。

そうすることで、コンペの勝率は着実に上がっていくはずです。

 

今までとは提案書の位置づけは変わりますが、提案書を多く書くような業界の方はかなり使える方法だと思いますので、ぜひ試してみてください。