20代・30代の過ごし方<後編>

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「20代・30代の過ごし方」というテーマで、2回に分けて私自身のケースについて振り返っていきたいと思います。
今回はその後編です。

前編はこちら→20代・30代の過ごし方<前編>

圧倒的にエネルギーを注ぎ込んだ20代の副産物

20代の頃を振り返ってみると「何かに圧倒的にエネルギーを注ぎ込む、集中」というのが私の人生の根幹だったなと思います。

このことは20代の頃の私にとって、「エネルギーを注いだ何かにおいて一定のレベルに達する」という意味では大きなものをもたらしてくれました。
ただ同時に、これには副産物もあったと感じています。

 何かに圧倒的にエネルギーを注いで成功体験を得たことで、私は「自分の努力の価値」というものを大きく感じていました。
つまり、「自分自身が頑張ってなんとかすることが、成功につながる」という価値観や考え方が、自然と自分の中にできていたのです。

 

私は典型的な「人に任せられない病」だったのですが、これがひどい重症であったことにも表れています。
例えば、部下となるメンバーが増えてきて商談に同行したときなどには、こんなことを思ってしまうのです。

 「私は、商談での提案内容や話し方をこんなに真剣に考えて、命をかける思いでひとつの提案をやってきたというのに、それに比べてなんだその軽い話し方は!!」

 

新卒で入ったばかりの営業メンバーに対してもついついそんな風に思ってしまい、結局途中から自分が介入して引き取って、なんとかしてしまうのです。
部下の作った提案書も、「重みが足りない」といった私の謎の感覚で、途中から自分の力でなんとかしてしまっていました。

メンバーの人数が少ないうちはそれでもある程度はなんとかなるのですが、メンバーが何十人という規模になってくると、「なんともならない」という状態に陥っていきました。

「自分が頑張るとマイナスに働くことがある」という葛藤

それまでの私の人生では、「自分の投入できる努力量」を増やすことこそがうまくいくための手段だと信じていました。

しかし、マネジメントにおいては逆に、自分が頑張ることがマイナスに働いてしまうことがあります。

この現実を正直長い期間、なかなか受け入れることができませんでした。
いくら誰かに任せようと思ってもやはり最後は他人を信用できず、「自分でなんとかするしかない」という考えが根っこにあるうちは、本当にうまくいきません。

 

それは仕事だけでなくプライベートでも、「人と一緒に生きていく」ということについて、とてもいろいろな葛藤がありました。

「自分でコントロールできない要因が出てくる」というのは、本当は人生において大きなプラスとなることなのですが、30代前半の私にとって「自分以外の誰かがいる」ということに、正直なかなか馴染めずにいたのです。

 

現在は家族のサポートもあり、仕事も家族も非常に毎日楽しく、幸せにやらせていただいていますが、30代になった頃の私は、人と一緒に何かを成し遂げていく、何かを追いかけていくということが、今までの「圧倒的な努力量を投入する」というやり方だけではなかなかうまくいかないという事実に、悩んでいました。

「転換」するためには自分が変わらなくてはいけない

妥協をするとか諦めるというマイナスの方向ではなく、プラスの方向で「自分以外の人の力を借りる、人と一緒にやっていく」というやり方に転換していくためには、自分が変わらなくてはいけません。

これはつまり、それまで私が大事にしていた「圧倒的な努力量を投入することが大事なんだ」という考え方すらも、変えなければならないということです。

自分を変えていくというのは本当に難しいと、今でもやはり思います。
しかし、何かショッキングな出来事、たとえばマネジメントで派手に失敗した1年など「衝撃的な失敗体験」があると、人間、考え方が変わったりするものです。

 その失敗をした時期を思い返してみると、やはりその時のやり方がまずかったから、これを変えないといけないのだな、という感触があります。

自分の考え方を変えるための方法

とはいえ、毎日のように衝撃的な失敗体験をするわけにもいきませんので、自分の考え方や行動に対して、なにか新しいものを取り入れて変えていくチャレンジをする必要があります。

 私はそういうチャレンジをするとき、「今は●●のキャンペーン期間なんだ」と考えるようにしています。
キャンペーンというと軽い響きに感じるかもしれませんが、その軽さが良くもあるのです。

 

例えば、今自分が大事にしているものを手放さなければいけないという時。

仕事で例を挙げれば、「自分がなんとか頑張ることで仕事が回る」という考え方から、「人に任せてうまく回るようにしよう」という考え方へいきなり転換するのは、なかなか難しいことです。

 

なのでそんなときは、自分のなかでキャンペーン期間を定め、例えば1週間限定で「自分では●●をしない」というように決めてしまいます。
人と一緒にやっていくなかで自分に変えないといけない部分がある場合、「今週1週間だけ●●を試してみよう」と決めるのです。


この「1週間限定」という、始めと終わりが決まっていることがポイントで、自分の考え方を変える時もリスクが限定的になり、実行しやすくなります。

そしてこの限定期間に、自分の考え方や習慣をメンテナンスしたり、チューンナップしていきます。

手放していいのか?本当に大事なものなのか?

例えば私の場合、スケジュールがぎっしり詰まっていないと不安に感じる時期がありました。
これは半分強迫観念のようなもので、忙しい時期はスケジュールを朝から夜の12時まで埋めていないと気が済みませんでした。

 お客様とのミーティングは朝6時半から(こんなミーティングに付き合ってくださる方がいることがありがたいですが)、夜は最後のミーティングが23時半から始まる、というように、一切休みがない毎日を過ごしていて、そのことに何の疑問も持たずむしろそれが心地よい、という時期もありました。

 

しかしある時、忙しくスケジュールを詰め込んでいくだけではできないこともあり、この状態は決定的にまずいんじゃないか、と気づきました。
とはいっても、やはりスケジュールを空けるのは怖い。

そこで私は、今まで大事にしていた何かを一気に手放すのは非常に怖いので、1週間限定で、予定を新しく入れないことにしてみました。
本当に大事なものは入れるけれど、それ以外は極力予定を入れない1週間にしよう、と決めたのです。

 

このように1週間限定でやってみるということが、今まで大事にしていたものについて、「それは、本当は手放しても大丈夫なものなのか、それとも本当に大事なものなのか」を見定める、非常に有意義な試みになりました。


この「キャンペーン期間」という考え方は、激しく衝撃的な失敗体験によって目覚めるというルート以外に、なりたい自分になるために自分を変えていく手段になります。

もともと私は飽きっぽい性格がコンプレックスだったのですが、逆にこの性格を利用して「1週間限定で●●を変えてみる、しかも極端な方向に」ということをやってみました。

30代、更なる進化を

このキャンペーン期間という考えを持ち、実行するようになってから、「自分を変えていかなくては」というタイミングで、迷いや葛藤が少なく取り組めるようになりました。これが大きなポイントだと思います。

私はこれからも、もっともっと大きなチャレンジをしていきたいのですが、それは自分1人の力だけでやっていくのではなく、人と一緒に成し遂げていくようにしたいと思っています。

そのためにも、私はこの「キャンペーン期間」という方法論を使いながら、自分が変わるべきところはどんどん変えていき、そして更に進化を続けていきたいなと考えています。

コラム高橋浩一