仕事が忙しくなったときの解決策は、「さらに仕事を受けること」

仕事が忙しくなったときの解決策は、「さらに仕事を受けること」.png

仕事が忙しくなったときの、私のルール

仕事が忙しくなったときにどうするか?
これは誰しも非常に悩み、判断に迷うところだと思いますが、私にはあるひとつのルールがあります。

それは、「仕事が忙しくなったら、さらに忙しくすることで解決する」というものです。

もともとこれをやるきっかけとなったのは、漫画家の手塚治虫先生でした。 

手塚治虫先生のことは個人的にとても敬愛しており、作品も結構読んでいるのですが、かつて手塚先生の著書の中でも、人生について書いた本を趣味のように読み漁っていた時期がありました。

 

手塚先生のように国民的な漫画家になると、次から次へと仕事の依頼が来ます。

そんな状況になったとき、普通の漫画家であれば「キャパシティに無理があるからこの仕事は断ろう」と考えると思います。

 

しかし、私が読んだ本の中には、手塚先生は忙しくなったらさらに連載を増やすことで解決しようと思っていたと書かれていました。

それを読んだ私は、もしかしたらそのやり方に学べるものがあるのではないかと思い、自分の仕事に応用してみることにしました。

限界まで詰め込んでみたら何が起こるのだろうか

外回りのローラー営業のように、一日に何十件も回るようなタイプの仕事は別として、お客様とお約束して会うタイプの仕事であれば、一日のアポイントやミーティングの件数が3件から5件くらい入っていると、「今日は結構多いな」というのが標準的なビジネスパーソンの感覚かと思います。

 

そのように結構仕事がパンパンで、毎日毎日やることが多くて大変だなと思っていたときに、とにかく限界まで仕事を詰め込んでみたら何が起こるのだろうかと思い、アポイントを増やしてみることにしました。

すると、アポイントの数が一日に10件や15件といった件数になっていくなか、いろいろな発見があったのです。

 

例えば、一日に入っているアポイントの件数がそこまで多くなかったときには、打ち合わせに臨むにしても、あまり考えずに臨んでいたなと気付きました。

一日に3件から5件だったら、なんとなく考えて、なんとなく準備していっても普通に回っていたのですが、これが一日に10件から15件となると、そうはいきません。

それぞれの打ち合わせについて「本当に大事なことは何なのか」を考えて、事前のコミュニケーションや段取りをしておかないと、全く仕事が回らなくなるという状態が自動的にできるわけです。

大事なことに集中せざるを得ない環境を作った

それまではなんとなく準備をしていたことが、とにかく一日中「大事なことは何か」「本質的なこと、核心的なことは何だろう」と考えるモードにスイッチすることで、自動的にそこまで大事ではないことがなくなっていき、本当に大事なことだけが残っていきます。

そうすると、「打ち合わせの時間って実はこんなにいらないんじゃないか」「資料ってこんなにたくさん作らなくてもいいんじゃないか」と考えるようになり、それまでたくさん作っていたパワーポイントの資料を作る時間も大幅に減りました。

 

そしてさらに、「実は資料がなくても●●の内容が確認できれば、この打ち合わせの目的は果たせるのではないか」「逆にここは資料を作って持っていくのではなく、お客様と話すことに意味があるのではないか」などなど、とにかく何に意味があるのか、何が本当に大事なことなのか、を考えるようになり、自分の仕事がどんどんシェイプアップされていきました。

 

つまり、忙しくなったときの解決策として、仕事量のバランスを考えてコントロールしようとしたのではなく、逆にもっとたくさん詰め込むことによって、大事なことに集中せざるを得ない環境を作ったのです。

究極まで追い込まれて、やらざるを得ない状況

さらにこれには思わぬ副産物もありました。

 

本当に大事なことに集中し、作る資料も大幅に減ったとは言っても、やらなければいけないことは多く出てきます。

しかし一日に10件も15件も打ち合わせをしていると、とてもデスクワークをする時間は取れません。そこで、人の力を積極的に借りようという考えになってきたのです。

 

元々は全部を一人で抱え込んで、何でもかんでも自分でやりたがるタイプだったのですが、ここまで来ると、人にお願いして力を借りないと仕事が回らなくなってしまいました。

 

その状況になったことで、それまでは抵抗があった「いろいろな人に仕事をお願いする」ということが、結構自然とできるようになりました。

人にお願いせざるを得ない環境になったとき、そこで初めて「どうしたら自分以外がこの仕事をできるようになるか」ということをかなり真剣に考えるようになったのです。

 

もちろんそれまでも、組織で仕事をしているとき、マネジメントや権限委譲、仕組み化について考えることはありました。

しかし、とにかく究極まで追い込まれて、やらざるを得ない状況で考えるマネジメントや仕組み化というのは、相当に工夫に工夫を凝らさないと仕事が回らなくなってしまうため、このときにいろいろ考えたことが、今も活きているなと思っています。

「環境を作る」ということ

もちろん、これは万人におすすめできるような方法ではないのかもしれませんが、忙しいときのひとつの解決策ではあると思います。

バランスを取るという考え方もありますが、あえて、バランスを取らない方向に突っ走ってみると、そこから見えてくるもの、気付きがたくさんありました。

もしこれを試そうとされる方は、まずは期間限定でやってみることをおすすめします。

 

一番お伝えしたいポイントは、「忙しくなることは良いことだ」ということではなく、「環境を作る」ということなのです。

 

「大事なことに集中せざるを得ない環境」

「人に頼んで力を借らざるを得ない環境」

 

このような環境を作っていくための一つのきっかけが、私の場合は、仕事を増やす、打ち合わせを増やす、ということにあったのです。

 

いたずらに仕事を増やしましょう、と言いたいわけではありません。

仕事を意図的に増やすことで、環境を作り、自分の仕事の仕方を変えていく、ということを期間限定で試してみるのもいいのではないでしょうか。

本当に大事なこと、本当はそれほど大事ではないこと、が見えてくるかもしれません。

コラム高橋浩一