質問力にこだわるきっかけは、大失敗にあり。

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質問力に出会う前夜:ワクワクした最初の研修

営業の現場における質問力の重要性について、過去記事などでも日々お伝えしていますが、私がなぜ「質問力」にこだわるようになったのか、その原体験は社会人最初の研修での苦い経験にあります。

大学を卒業後、新卒で戦略系コンサルティング会社に就職しました。

入社直後の新卒研修では、2週間程かけて行うリサーチの課題がありました。
あるテーマが与えられ、それについて自分なりに調べ、資料を作って先輩方の前でプレゼンをするという研修です。

そのときのお題は「インターネット業界の●●について自分なりにリサーチをして、そのフレームワークを定義してプレゼンせよ」というものでした。

 

他の会社に就職した友達とやり取りをしていると、入社後は座りっぱなしで講義を聞く研修が続き、早く実際の仕事がしたい、現場に行きたい、と思っている人が多いようでした。

一方で私は、研修とはいえど実際の仕事のような感じでお題が与えられたことがものすごく嬉しくて「なんか仕事っぽいな」とワクワクして取り組んだことを覚えています。

時間やエネルギーを全て注いだ

入社後、最初の週から「リサーチ課題のためにいくらでも時間を使っていいよ」と言われてワクワクしていた私は、さっそく会社に泊まり込み、週末にも出勤し始めました。

入社後の研修の時期といえばお花見シーズンでもあります。大学時代の友達がお花見に誘ってくれても、「ごめん、ちょっと仕事だわ」と、言ってみたかったセリフを言って断わったりして、かなりイタい人になっていました。。。


こうして、最初の2週間は自分の持てる時間やエネルギーの全てを、リサーチの課題に注ぎ込んでいました。

友達にも、「ごめん、いま●●のこと調べててさ、ちょっと協力してくれない?」とモニターアンケートを取ったりして、当時の自分としてはものすごくワクワクしながら一生懸命やっていました。

最後の三日間くらいはほとんど寝ずに資料を作り、プレゼンの準備をしていよいよ迎えたプレゼン本番。
私ともう一人の同期が、それぞれ15分間の持ち時間で先輩コンサルタントの方々にプレゼンをするという形式でした。

こんなに時間をかけて、たくさんのことを調べて、アンケートを取ってウラも取ったし、根拠もある、と当時の自分は自信満々。
トップバッターだった私は先輩方を目の前に渾身のプレゼンを行いました。

いま考えてみると、全然おぼつかないような根拠なのですが、八重洲ブックセンターに行ってたくさん本を買って読みましたし、ネットでもいろいろと調べ、自身もありましたので、かなり意気込んだプレゼンだったと思います。

プレゼン後の不思議な雰囲気

しかし、15分間のプレゼンが終わって、先輩方を見渡してみると、シーンとしています。


「あれ、なにかおかしいな・・・情報がたりないのかな。プレゼンで話した内容以外のリサーチ結果も伝えたほうがいいんだ!」と考え、「まだまだ資料がありますので…」と追加の説明をしようとすると、当時の教育係のマネージャーだった方が、「高橋さん、もういいですから。大丈夫大丈夫」と私を制し、「では、みなさん質問ありませんかね」と先輩方に投げかけました。

マネージャーや先輩コンサルタントの方々はお互いに顔を見合わせています。
皆さん頭の中では同じことを考えつつ、でも「これはさすがに言っちゃいけないんじゃないか」と思っているような、そんな雰囲気だったのです。

ある一人のマネージャーの方がぼそっと、「うーん。なんかこれさ。そもそも、お題にまったく答えてないよね」と発言しました。
すると、まわりの人たちが「ああ、この人、本当のこと言っちゃったよ・・・」という感じになり、全員が一斉に哀れみの視線をこちらに向けてきたのです。

大失敗からの新入社員歓迎会

当時の自分は、「プレゼンは頑張ったけどコメントすらもらえない可哀想な新人・・・」という全員からの視線を感じ、パニックになってしまいました。

何が悪かったのか?必死に考えているうちに、自分はたしかに「プレゼンの目的」「お題に答えているか」ということを全然考えておらず、すべて自分の目線でリサーチを進めていたことに気づきました。

実は、教育係のマネージャーから「なんでも質問していいよ」「なにか困ったことがあったら相談しなさい」「ディスカッションに呼んでくれてもいいよ」と最初に言われていたのですが、当時の私は「自分の考えが正しい」と思っていて、一度も相談しませんでした。

社会人一年目の思い込みだけで仕事を完遂し、思いっきり外したプレゼンをしてしまったのです。
もう一人の同期はというと、いいプレゼンをして質疑応答でも活発に意見が出ていました。

 

プレゼンの直後は新入社員歓迎会。
二人しかいない新卒同期の最初の研修で、自分は大外しをし、もう一人は活発な議論になったあとです。
とてもじゃないですが、先輩の中に入っていけませんでした。

本当にいたたまれなくなってしまい、私はパーティー会場の隅っこで六本木の夜景を見ながら、「あー、きれいだな」なんて思いながら一人でビールを飲んでいると、背中をポンポンと叩かれて、「高橋くん、高橋くん」と先輩が声をかけてくれました。

「・・・こういうときはね。六本木だよ」と言われ、そこで私は「夜の六本木はこのようなときのためにあるのか」と妙に納得し、先輩にいろいろなところに連れて行ってもらったのを覚えています。

絶対に抜かしてはいけない視点と「質問力」

入社直後のこの経験はかなりイタい思い出ですが、今思うと、仕事を受けたときに「相手がある」「目的がある」この視点が抜けると全くうまくいかないということを、社会人最初の研修で学べたわけで、これは本当に感謝すべき体験でした。

そして、ほとんどの仕事において、「依頼者が何を望んでいるか」「この目的は何なのか」「この仕事にはどういう背景があるのか」という情報は、詳しく事前に知らされません。

自分から質問をして情報を取りに行かないといけないのです。


私は、研修やコンサルティングの現場で、社会人になりたての若い方には必ずこの話をします。
やはり「相手がある」「目的がある」という観点を抜かすと、どんな仕事も上手くいきません。

特に、営業という仕事をされている方にとっては、自分の会社の商品がどんなにいい商品で、どんなに実績があったとしても、「お客様はどんな人なのか」「どんな悩みを持っているのか」「何を必要としているのか」この観点をすっとばしてしまうと絶対上手くいきません。

私の社会人最初の研修は、相手や目的について考えることはがすごく大事であり、それを知るために「質問力」は極めて重要、ということを学ばせていただいた大切な機会であり、今でもよい思い出です。

コラム高橋浩一