法人営業における「認知的不協和」理論の重要性

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法人営業において選ばれる理由を作る上で重要な、認知的不協和理論

一般消費者向けの営業 (Business to Consumer)であるBtoCと比べて、法人向けである法人営業 (Business to Business)すなわちBtoB(法人営業 )では特に「選ばれる理由」が大事であるということを他の記事でご説明しました。

では、その「選ばれる理由」をどう作っていくか。 そこを具体的に考えるにあたり、重要な理論があります。それが、「認知的不協和」です。 認知的不協和をWikipediaで調べると、「人が自身の中で矛盾する認知を同時に抱えた状態、またそのときに覚える不快感を表す社会心理学用語」と説明されています。

そもそも、お客様が何らかの「決定」をする際には、その直前に「迷い」が生じています。迷っている状態というのは、複数の選択肢があり、どちらをとるか決めきるのが難しい、ということです。

人間は自分の持っている複数の情報の間に矛盾が生じている場合、その矛盾を自分を正当化する形で低減、もしくは解消しようとする性質があります。これを「認知的不協和」と言います。矛盾している状態自体は「不協和」というのですね。

法人営業における「認知的不協和」とは?

法人営業 における「認知的不協和」とはどういうことなのか。具体的に考えていきましょう。

たとえば、ある会社に発注しているお客様が、他の会社からも提案を受けていて、その新しい提案もまんざらではない状況を考えてみます。こういうときは、「新しい会社の提案は魅力的だが怖い」と「既存先は改善の余地ありだがリスク低い」とで迷っているわけですね。

しかし、お客様はそのままの状態ではいられません。両方の選択肢を同時にとることはできませんから、矛盾、すなわち不協和が生じているのです。しかし、お客様はこの不協和な状態に耐えることができません。「新しくきた会社の提案内容を既存先にそれとなく漏らして、安心できる既存先に発注するか。まだ人間関係のない新規先の方が断りやすいし、理由をつけて断っとこう」となるわけです。そうすると、「新しい会社の提案は魅力的だが怖い」と「既存先は改善の余地ありだがリスク低い」とで迷っていたお客様の不協和状態が解消されます。

法人営業に限らず人の心は、不協和が解消される方向に働く

この「不協和状態が解消される」というのは、言い換えると、「言い訳が見つかって楽になる」という状態とも言えます。楽になるというのは、自分の選択・判断は間違っていないぞと、正当化するわけです。「迷ったお客様は、”作りやすい理由”や”言いやすい理由”を正当化し、言い訳しやすい人に言い訳する」というのはとりわけ重要です。要は、「断りやすい人に対して断る」のである、ということです。

もし、他の会社とのコンペ提案で自分がお客様から断られたら、それは「複数の選択肢で迷ったとき、自分に対して断る方がラクだったから」と考えるわけです。 敢えて乱暴な表現をすると、「複数の選択肢の間で悩む」お客様は、言い訳を大量生産しているのです。