質問と価値訴求のキャッチボール

 自著「無敗営業チーム戦略」をコロナ禍に執筆したとき、オンライン商談では相手の反応を見るのが難しいという声が多く上がりました。

 本の中では“ぶつ切り”という表現を使い、一方的にこっちが喋るのではなく、適当に相手に突っ込んで来ていただくことが大事であること、この往復の回数が多いと、活発なコミュニケーションに繋がるということを書きました。

 このことをきっかけに、どうやって会話の双方向性を増やしていくかを考えるようになりました。
そこで、そもそもそれにどういう意味があるのか、質問や価値訴求の観点から捉え直してみました。

心理的リアクタンス

 
 

 心理学用語で、心理的リアクタンスという言葉があります。
大まかに言うと「自由を奪われると、人は動きたくなくなる」という意味合いです。
自由を奪われるとは、自分の発言権がなく、相手から一方的に説得されるような状態を指します。
この時にコミュニケーションしようという気持ちは起こりにくいものです。

 特に競合と相見積もりの提案ではなく、一社提案でも今やるかどうするか考える場面において、お客様としては「営業の言っていることはわかるけど、今じゃない」「そこまでの必要性がまだ感じられない」「時期尚早である」と思う場合があります。
多くの方は、そこに対して今やるべき理由をロジカルに伝えたり、何とか切迫感を上げたりしていきます。

 ただ、多くの営業は、動きたくないお客様の主張を聞き続けると、動いてもらうためのプレゼンテーションがしづらくなるのではないかと考えがちです。

 相手の発言を押さえつけてあまり喋らせないで説得すると、相手が動こうとする意欲を高めづらいので、話していただいた方がいいのです。
その上で、こちらからも価値訴求をあわせて行います。
お客様に話してもらうのは質問で、こちらから何かを魅力的に伝えるのは価値訴求です。
それによってちょうどいいラインに向けてお客様に動いていただくようになります。

 つまり質問と価値訴求とは、単純にその話を双方向にするだけではなく、相手に喋っていただくという行為と、こちらが提示するものの魅力度を上げる行為の両方を良い塩梅で着地させることがポイントです。

お客様に気持ち良く合意してもらうには

 
 

 心理的リアクタンスの話から、この営業都合には説得や提案の効果を発揮しづらいことを感じると思います。
特にオンライン商談では顕著であり、勢いで押し切ることを極めてやりづらくなりました。

 お客様は簡単に離脱してしまいますので、少しでも意に沿わない進め方をすると、進めなくなってしまいます。
また、今は対面の商談でもマスクをしている分、マスクをしていない時と比べて心の距離ができています。
そうすると、いかに気持ちの良い状態で合意いただくかについての心配りが求められてきていると感じます。

 質問によって相手を理解し、そしてわかってくれているなと感じたところで価値訴求をしていきます。

最初はあえて「ちょい出し」

 
 

 一見すると目立たないですが、人を動かすコミュニケーションの比較として並べている質問や会話のキャッチボールのところに、「たたき台の情報を軽く提示」という項目があります。

 詳しくは本に書きますが、ビジネスコミュニケーションや結論ファースト、言いたいことをしっかり伝えるべきというのもあると思います。
一方で、相手の反応や感触がわからないうちに全部言い切ってしまうと、考えますねと言って持ち帰られてしまうことが結構あります。

 あえて最初は情報をちょい出しに留めておき、相手にたくさん喋っていただき、そういうことかとわかったところに追加の情報を加え、相手の意識に働きかけるという二段構えをしてするのです。

情報を伝えるタイミングに気を配る

 
 

 ハフポストが調査したデータによると、「あなたはこの職業の人の言うことをどのくらい信用しますか」という質問に対して、49%の人がお医者さんの言うことを信じると回答しました。
政治家の言うことを信じる人は1%に満たず、セールスパーソンの言うことを信じると回答したのは3%でした。
このことからわかるように、お客様は営業の発するメッセージをかなり割引いて聞いているのです。

 良い商材サービスを提案しているのであればなるべくちゃんと受け取っていただきたいので、私はその情報の内容や伝え方の表現にかなり気を配っています。
また、タイミングも重要です。
わかってくれているなとお客様に感じていただいた反応の直後に勝負どころとなる情報を出します。

 タイミングについて着目をされてるケースはあまりないので、質問とか長期のキャッチボールで一番大きなポイントは、このタイミングをしっかり合わせに行けるかどうかにあるのではないかと考えています。

 

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高橋浩一