「裏から見る視点」でお客様に近づく営業になる

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正直引いてしまう営業

このブログを読んで下さっている方は、営業職や営業に関わる仕事をされている方が非常に多いと思います。 一方で、営業をされている方でも、ある場面においてはお客様であるという事が多々あるはずですよね。

先日私がデパートへ行った時もそうでしたが、紳士服売り場で例えばネクタイを見ていると、「試着できますよ」という接客をする方は非常に多いですよね。 ちょっと手を触れかけようものなら、スタッフの方は勢い良く近寄ってきて「試着できますよ」と、ワイシャツを持ってきて合わせてくれる。結構熱烈に営業されます。

でもそこでちょっと不思議に思ったのは、ネクタイは仕事に関係する服に使うことが多いものなので、ネクタイを売る方であれば、相手の職業が気にならないのかな?とか、ワイシャツを組み合わせてくれているけれども、相手がどんなワイシャツをどのくらい持っているか、どんなスーツを持っているか、などあまり突っ込んで聞かれない場合が多いな、ということでした。

これは本当に不思議だなと思って、それからは売り場をそういう目線でまわってみたのですが、やはり服を売っている場所に行って買いそうな素振りを見せると「試着できますよ」と熱烈なプッシュがあり、これはお客様の立場からするとどうか?と思いました。

本当に買いたいものならいいのですが、まだそこまで気持ちが高まってない状態で、熱烈に「試着できます」と言われても、正直引いちゃうじゃないですか。

でもちょっと待てよ、こう熱烈にプッシュされたらちょっと引いてしまうことって、少し考えたらすぐ分かりそうなのに、なぜ営業の接客のスタッフの方は機械的に、ちょっと近づいただけで「試着できます」と言ってくるのかな、と考えました。

営業側、お客様側のギャップ

この事象に気付かないことの恐ろしさは凄いな、と思うわけです。 本当にお客様に買っていただこう、満足していただこうと思ったら、やはり相手のことを聞くでしょう。 仕事で使うものなら仕事のことを聞くだろうし、あまり機械的に「試着、試着」と言えば逃げていくだろうな、というのはちょっと考えたら分かりそうな事なのですが、世の中の接客の現場を見渡してみるとほとんどが逆なんですね。

ということは、やはり営業の側から見えている世界と、お客様側から見えている世界には物凄いギャップがある。 これをもう少し考えていくと、自分が営業の立場に立った時に同じようなことをしていないかな、と思うわけです。

実際に、私はよくお客様に会った時に、 「●●さんは結構たくさん営業受けますよね」 「大体1ヶ月間どのくらいの人が新しく営業に来るんですか?」 と聞いています。

この間お話した方は「大体1ヶ月に10人新しく営業の方が来る」とおっしゃったので、 「結構会われてますね。そうすると正直、この営業の人はすごいなとか、この営業の人はしょぼいなとか、感じるでしょう。どういうところがその違いなんですか?」と聞いていきました。

そうすると、やはりお客様の観点から「すごく役立ってくれる、信頼できる営業」というのと、「正直すぐ帰ってもらいたい営業」というのは、こういう違いがあるんだな、と分かるのです。

自分が感じる「お客様としての感情」に気づき、活かす

でもそれは、普段営業をしている立場からするとあまり聞かない情報なんですね。 営業をやっていると、いかにして商品やサービスをお客様に提案して受注をいただくか、ということについ一生懸命になってしまうんですが、裏側から見ると、お客様は毎日来る日も来る日も沢山の方から営業を受けていて、そこで全ての場面で良い感情を持っているわけではなくて、ポジティブに感じることもあれば、ネガティブに感じることもある。

でもその感じた感情をすべて営業に正直に話しているわけではなくて、むしろ逆にあまりわからないように、表面的な対応をして機嫌よく帰っていただこうとしているお客様が多いと思うんです。

そこで改めて、自分がお客様の立場になって、何かものを買う、サービスを受ける、接客を受ける、といった時に自分が正直に感じる、「お客様としての感情」というのがあると思うんですよ。

「なんでこういう事を聞いてくれずに一方的に提案されるんだろうなぁ」 「この人機械的に喋っているなぁ」 「この人とにかく買ってもらうことに一生懸命で、こっち側の満足度とかあまり考えてないんだろうなぁ」 などです。

そしてそれを深く深く考えることによって、自分の営業としての行動に活かしていくのです。

裏側から見る発想を強烈に意識する

こういう風に考えていくと、自分の日常生活における、ものを買う時の行動、感じる感情というのは、そのまま自分の営業に参考になります。 ただその時に大事な点は、裏側から見る発想をどれくらい強烈に意識するか、ということなんです。

というのは、先ほどのネクタイの営業、接客の例でお話しましたが、ちょっと考えれば「その接客、嫌でしょ」ということは誰もが感じそうなことなのに、接客をされている方の大半は気づかない。 ということは自分も同じように、一営業という立場に立ってしまうと、お客様側から見る感情の何かを見落としているのではないか、ちょっと自分は営業としての視点が強くなりすぎているのではないか、ということを考えてみるのです。

比較して選ぶ立場担った時の感情が役に立つ

ですので、私は買い物をするときに、例えば何か比較して買えるものであれば、必ず複数の営業や接客を受けるようにしています。 そうすると何か良いかというと、比べる立場がわかるんです。

比べる立場に立ってみると、「最初の営業の人はこういうトークしてきたけど、ここが良くてここがもうちょっとだったな」とか「2番めに来た営業の人はこうだったな」とかいうのが、選ぶ立場としての感情が物凄く自分の中で湧き上がってくるわけです。 そうするとやはり、「比較して選ぶ」という立場で感じる感情というのが、自分が営業するのに物凄く役立ちます。

ですので、皆さんにお伝えしたいのは、普段営業としていかに成果を上げるかという観点に偏って考えてしまうと危険なことがあって、その裏側でお客様から見るとどういう感情が起こって、どう認識されているのか、そして特に比較して選ぶという事をしている人はどんな気持ちなのか、ということをぜひ営業活動に活かしていっていただきたい、ということです。 そしてその中でお客様の立場から感じた体験というのを応用させていっていただきたいと思います。

コラム高橋浩一