法人営業において同業他社との「比較」に巻き込まれない方法

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法人営業における比較の意識の把握について

法人営業をされている方々は、日々さまざまな課題に出会うかと思いますが、その中でも大きなものが「同業他社との比較」ではないでしょうか。

今回は「比較対象を意識することでお客様からの値下げ要請を防ぐ(あるいは値上げする)」というテーマでお話します。

ここで言う「比較対象」とは「お客様が何と何とを比べているか」ということです。これを意識すると、値下げを防ぐことに繋げることができますし、場合によっては値上げも可能です。

「何と比べて頂くか」を明確に意識し、コントロールする

私が担当する日経のオープン講座で、多くの営業の方から悩みをお伺いすると、結構な割合で「価格競争」「値下げ要請」ということが挙がってきます。

 

「(お客様の社内での)コストダウンという会社方針」が、営業の方にとっては重くのしかかってくるのです。

これに関しては、お客様に対して「何と比べて頂くか」を明確に意識して、そこに焦点を当てることをおすすめします。

ハイパフォーマー営業がやっているのは「欠かせない存在になる」こと

先日、コンサルティングの現場で、飲食店のオーナーに対して自社商品の営業をされているハイパフォーマー営業の方 (ここでは「Aさん」としておきます)にお会いしました。

飲食店のオーナー向けに提案する商品は決まっており、社内の他の営業の方からは「価格競争が厳しい」「値下げ要請が厳しい」という声があがる状況でもAさんは値下げ要請を受けずに受注することができるのだそうです。



なぜ、Aさんだけは値下げ要請を受けずに受注できるのでしょう?

Aさんの営業活動についてよく聞いてみると、彼は飲食店のオーナーに対しては商品の提案をあまりされていませんでした。

商品の提案をする代わりに、オーナーからの悩みを聞きながら、毎週、店長をまじえた定例のミーティングを行って一緒に議論されていたとのこと。
そのお店では、店長がまだ就任直後で経験が浅く、経営者であるオーナーの意向や課題意識を店長が受け止めきれていませんでした。
要するに、店長がしっかりと育っていくためのサポートをAさんが行っていたのです。

オーナーにとって、Aさんは「頼れる右腕」という存在としてどうかという視点で比べられていたのです。
しかし、これだけであれば、店長が育ってくればAさんは不要の存在になります。
そして何よりAさんが存在することによって、店長が自分の頭で考えなくなったりしては本末転倒です。

Aさんは決して自分から答えを言わず、オーナーの悩みや課題意識を店長が受け取りやすい問いの形に直して、店長に投げかけていました。
オーナーにとっては店長が成長してくれることが一番ありがたいからです。

さらに、Aさんは、店長とスタッフ間でのコミュニケーションが取れていない状況が様々な問題を引き起こしているという状況を捉え、忙しい店長とスタッフのコミュニケーションの結節点として立ち回ることで、オーナーだけでなく店長にとっても必要とされる存在になっていきました。

Aさんは、例えば「●●さんがこういう事を思っている」「●●さんがこういうことを考えている」といった情報を色々な方から聞いて、皆が忙しくてコミュニケーションが足りない店内において「間に立つ」役割を担っていたわけです。

 

お店の中にいる誰もができないことを実現することによって、Aさんは「お店にとって欠かせない存在」になっていました

ここまで来ると、売っているものが何であろうと関係なく、Aさんはお店にとって必要とされるわけですから、その結果として、Aさんの提案は他社と比較されることなく、値引きを要請されることもなく、スムーズに売れていくのです。

「同じものを売っている同業他社」と比較されると、価格は必ず下がる

同じものを売っている同業他社と比べられていると、価格は絶対に下がります。

同じモノ、商品、サービスを売っている同業と比べると、お客様としては「同じようなものだったら安く買いたい」となるわけですから、下がる方向に力が働くのです。

もちろん、コンペや相見積もりが完全になくなることは難しいでしょうが、同業他社とそのまま同列に比較されないよう、価値訴求力を発揮して、お客様に対して「貸し超」の状態を作りましょう。

 

また、別の観点として「より価格帯が高い存在と比べられる存在となる」「同じ価格帯の別の選択肢と比較してメリットを訴求する」といったことも、値下げを防ぐ(あるいは値上げをしていく)上では有効です。

 

例えば、コンサルティングの世界では、戦略系のコンサルティング会社に依頼すると数千万円〜数億円、個人のコンサルタントに依頼すると数十万円〜数百万円、というような価格相場があります。

ここで、あるフリーランスのコンサルタントが企業に対して1,000万円の提案をすると、「戦略系のコンサルティング会社に依頼することを考えれば安い」となりますが、一方で「個人のコンサルタントに頼むにしては高い」と思われる可能性もあります。

あるいは、「1,000万円」という金額は、仕事ができる中途の人材を1年間雇ったときの人件費(+諸経費)と同じくらいの水準という視点で考えられるかもしれません。

こうした「比較による相場観」というのは、お客様が明確な比較対象を持っていないことが多いため、提案の際に自分の方から意図的に「この価格は、何と比較して考えるべきか」を出していくことが重要です。

「この見積価格1,000万円は、〜のようなレベルの方を採用して1年間フル稼働してもらったときの人件費と同じぐらいの水準ですが、今回ご提案するプロジェクトの成果物は、1人がフル稼働してできることよりも大きなインパクトを出せると考えます。また、この類のプロジェクトを戦略系のコンサルティング会社に依頼するとXXX円ぐらいかかるのが相場です」

「今回の見積価格は、1,000万円です。もし高いようでしたら値引きもしますので・・・」

というような伝え方をすることで、同じ見積価格でもだいぶ印象が変わってきます。

「何と比べて頂くか」を営業時に意識・実践できると、価格に関して強い交渉力を持つことができます。

 

同じ業界の他の会社と比べられるのではなく、まずは、ちょっと違った高い価格帯の別のサービス、もしくは、社内にいる代え難い人材と比べてもらうこと、そして、そこで大きな価値を発揮していくためにはどうしていくかを意識しましょう。

この比較対象を意識するということを、ぜひ皆さんの営業活動に活かしていただけたらと思います。