中長期的な大手アカウント開拓と直近の売上づくりの両立

 中長期的な大手アカウント開拓の動きと直近の売上を作る活動というのは、現場の方々からするとやや矛盾するものに感じられたり、忙しいなか両方やるのはしんどいと思ったりするものです。
しかしいずれも必要、となったときはどのように両立すればいいのでしょうか。

ポイント1:全体に対するメッセージ出し

 まず大前提として、方針出しやメッセージの問題があります。
「営業組織のステージ」という図をご覧ください。
ざっくり言うと、営業組織は4つのステージをぐるぐる回りながら進むのですが、前のステージの成功体験が次のステージの足かせになるということが起こります。

 
 

 「探る」ステージから見ていくと、2020年前半は「コロナになった。どう立て直そうか?」と、まさに多くの営業組織がこの状態でした。
こういうときは、計算された試行錯誤で成功パターンを発見するというのが鍵になり、当然その中でいろんな手を打ちます。

 そうすると、やるべきことを絞っていく「回す」ステージでは、いろいろやってみようというのが足かせになることがあります。
さらに次の「手放す」ステージでどんどん権限委譲する段階に入ると、決まったことをきっちりやるというカルチャーで営業組織が形成されているがゆえに「言われたことしかやりません」の状態が生まれ、つまずきやすくなります。

 営業組織というのは、このようにだいたい一定期間ごとに、現場の人たちにとって180度違うようなメッセージが出されるようになるのです。
しかし、これはもう組織の宿命のようなものです。

 したがって、まず「今我々はどのステージにいるのか?」そして「だいたいこのぐらいの時期に来ると、こういうふうに舵を切るよ」と、ビジネスのサイクルに合わせてあらかじめ全体にメッセージを出しておく必要があります。
それをしないと「一見すると矛盾するような活動を、なぜやっておかなくてはいけないのか」ということに関して、メンバーが腹落ちできないことがあるということです。 これがポイントの1つ目です。

ポイント2:勝ちパターンの違い

 2つ目のポイントは、営業はルート型/アカウント型で「勝ちパターン」が異なるということです。
『無敗営業』の中でも、ルート型/アカウント型それぞれのハイパーフォームな戦い方について解説しています。
ここからは本に書いていない話です。

 
 

 ルート型は、どんどん開拓して売上を増やしていこうという数を求めるモードです。
一方アカウント型は、攻略の難しいお客様にじっくり時間をかけてアプローチするモードです。

 スモールビジネス(SMB)をルート型、エンタープライズをアカウント型、と単純に分けるケースもあれば、「とにかく読み、案件を増やしていこう」というときはルート型的な戦い方をし、クロージングが求められるようなタイミングでアカウント型の方針になるという組織もあります。

業績が厳しくなると反対側の戦略を持ち出される

 このルート型/アカウント型をどうやって組織で扱っていくのかが難しいポイントです。
例えば、業績が厳しくなると反対側の戦略を持ち出されるという問題があります。

 
 

 ルート型というのは「まず行動量、行動の質はその次だ」というような量を促すようなメッセージが出されます。
しかし、行動量が増えても受注が増えなかった場合には「お客様の課題や組織を捉えて受注率を上げよう」と言われるわけです。
つまりルート型の方針が出されたのに、ある時からアカウント型のメッセージが出されるようになるということです。

 一方でアカウント型では「お客様をより深掘りしよう」とか「しっかりアカウントプラン作ろう」ということが言われます。
それで、このままだと売り上げ目標に達しないということが見えてくると「開拓やろうよ」とか「行動量を増やせ」と言われてしまうのです。

 これは先ほどの「営業組織のステージ」と同様に、一定期間ごとにサイクルで回り続けるものであるということなのですが、その全体が見えていないとどうしても「何か方針がまた変わったね」という感覚になりやすいということですね。

同じ組織の中で両方の型が存在する

 また、ルート型/アカウント型で組織が分かれているケースもありますが、そこまで厳密に組織立っておらず、同じ営業チームの中で、若手は新規開拓を担当、ベテランは金額の大きい重点顧客を担当……のような区分けをしている場合もあります。

 
 

 そうすると新人・若手はルート型的な世界観、ベテランはアカウント型的な世界観になり、両立しにくくなってきます。

個人に委ねず、セミナーや研修と絡める

 結論として、私がおすすめするのは「営業一人ひとりの自由意思に基づいて、うまくバランスをとることを求めない」というやり方です。
人は当然自分のやりやすい方に行きますし、「目の前の数字を作りなさい、でも長期のアカウントプランも仕込みなさい」というオーダーをそんなに器用にこなせないものです。
では、人々の自由意思によらない方法とは何があるでしょうか。

 ひとつは、会社主催のセミナーを企画することです。
会社として仕込みたい、開拓対象となるお客様を狙ったセミナーを実施します。
そのセミナーに来たお客様に対して「アカウントプランを作ってフォローしよう」というように、行事やイベントと結びつける方法があります。

 またこれと紐付けて、会社の中で「アカウントプランニング」とか「エンタープライズ攻略」に関する勉強会や研修などを実施するのもいいでしょう。
アカウントプランを作る時間をその中に組み込んでしまって、その勉強会のフォローアップということで「このアカウントをフォローしましょう」と結びつけます。

 当社では、コンサルティング会社や監査法人、また大手SI会社など「デリバリーや納品がメインの組織構造だけれども、開拓をやらなくてはいけない」という企業について、このやり方で数字を増やすお手伝いをしています。
研修に参加して、その中間課題でアカウントプランを育てていくという仕組みにするということですね。
自由意思に基づいてやっていくと難易度がかなり高いので、こういった方法をおすすめします。

 以上、中長期的な大手アカウント開拓と、直近の売上をつくる活動の両立に関する2つのポイントを解説し、営業一人ひとりの自由意思に基づかないやり方としてセミナーや研修を結びつける方法をご紹介しました。

 

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高橋浩一